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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第一章 魔法石の盗難
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「さて、追っ手も巻いた事だし。俺らはこの辺で——」

「おや、どちらに行かれるんです?」

 クレメントは、わざとらしく首を傾げる。

「って、別に何処でもいいだろ? あんたには関係ない」

 少し苛立って、ジェイスは口調を荒げた。

「神殿での騒ぎがまだ続いてるんなら、俺らとあんたが一緒にいるのは目立つし不味いだろ? だからここらでさよならしよう」

「そうですか……。まあ、そういう考えもあるでしょう。でも、このままでは僕もあなた達も、魔法石泥棒の嫌疑を掛けられたままですよ? ジェイスさんはそれで宜しいんですか?」

「それは……」

 大変宜しくない。

 これからまだまだ旅を続けなければならない身の上として、常にロンダヌスの追っ手を気にしていなければならないのは、甚だうっとうしい。

 考え込んでしまったジェイスに代わり、シェイラが口を開いた。

「じゃあ、あなたには何か方法があるっていうの?」

「簡単です」

 クレメントはにっこりと笑った。

「犯人を捕まえればいいんです」

「そりゃ、簡単なこった」

 ジェイスは呆れた。

「あのなあ。あの神殿の状況で魔法石を盗んだ挙げ句に逃げ遂せた盗人だぞ? そんなんどうやって探すんだよっ」

「心当たりなら、あります」

「は?」

「僕と、一緒に来て頂けますか?」

 クレメントがジェイスの顔を覗き込んだ。銀の瞳が謎めいた光を帯びている。

 ジェイスは一瞬、返答に詰まる。

 と、クレメントの右手がくるり、と大きく輪を描いた。

 その刹那。

 ジェイスの足が、いきなり地を離れた。

「うっわっ!」

 世界が、ぐるりと回転した。そのまま、もの凄い早さで景色が後ろへ流れる。

 と同時に強い風が全身に当たり、息も出来ない程の圧迫感が襲う。

 身体は完全に回転している。気分が悪く、吐きそうだ。

 あとどれくらいこんな状況が続くのか。

「ぐわあぁぁぁ!」

 我慢出来ずにジェイスが大声を上げた時、唐突にそれは止んだ。

 どすん、という鈍い音を響かせ、彼は地面に落ちた。

「いってーっ!」

「きゃあっ!」

 思い切り尻餅をついたジェイスの隣に、シェイラが落ちて来た。

「ったく、どーなってんだよっ……」

 全く理解不能な出来事に、ぼやきながら周囲を見回すと、そこは先刻までいた娼館街とは全く違った景色が広がっていた。

クレメント、結構ハチャメチャです・・・

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