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中央の部屋まで来ると、ニーナミーナが大きく溜め息をついた。
「一難去ってまた一難って感じ。——ねえ、ちょっと休憩にしない?」
「……そうですね、丁度午後一時を回った所ですし」
クレメントが、外套の内ポケットから懐中時計を取り出す。
「おっなかすいたー」
「そうね、ちょっと疲れたわね」
シェイラも同意する。
「朝から動きっ放しだったしな」
「お昼にしますか?」
パッドは、言いながらさっさと自分の荷物を背から下ろす。
「……アーカイエスさま?」
ララが、長身の連れを困ったように見上げた。
アーカイエスは彼女を見、そしてクレメントに、抑揚の無い声で言った。
「そうだな。まだ先は長そうだ、ここで一度休んだ方がいい」
「では休憩という事で」
「わあいっ。お茶お茶」
ニーナミーナは嬉しそうに台座の近くに腰を下ろすと、先程も出した茶器を再び引っ張り出してお湯を沸かす。
ほっとしたせいか、ジェイスは自分がもの凄く空腹なのに、気が付いた。
茶が沸くのを待っていられなくなり、ニーナミーナの近くにどっかと腰を下ろすと、さっさと背嚢から携帯食料を取り出して、水筒の水を飲みつつかじり始める。
「あーっ、ジェイスったらもう食べてるっ」
「腹が減ってんだ、待ってられっかっ」
子供のようなやり取りをする二人に、シェイラが苦笑する。
「ジェイスとニーナミーナって、レベルがおんなじよね」
「ええっ? それってあたしが子供っぽいって事?」
「おいこらっ、ってことは、俺がガキだってのかっ?」
異口同音の二人に、シェイラは取り澄ました顔を作ると、
「それ以外何者でも無いでしょーが?」と切り返す。
「んだとおっ?」
唸る大男に、クレメントが笑い出した。
「んもうっ、どーして私がジェイスと一緒のお子ちゃまなのよっ?!」
「止しなよ、ニーナミーナ」
そう言いながら、パッドも苦笑した。
和やかなジェイス達とは少し離れていたアーカイエスが、ララが差し出した乾菓子をひと欠け口に入れ、上を見上げる。
「……妖魔が、集まって来ているな」
彼の指摘に、ジェイス達も真顔に戻って上を見る。黒い魔導師の言う通り、ワイバーンやガーゴイルなど、夥しい数がクリスタル・パレスの上空を旋回している。
「何故……?」
女剣士は眉を顰める。黒い魔導師が低い声で言った。
「恐らく、先程ボガードの群れと我々が戦ったせいだろう。妖魔は血の臭いに敏感だ。例えそれが地下の死闘であっても、必ず嗅ぎ分けてやって来る」
「ここは強固な結界がありますから、おいそれと妖魔が入り込む事は、まず無いでしょう。けれど、あんまり集まっていると出る時が厄介ですね」
クレメントが、ニーナミーナから茶器を受け取りながら、真顔で呟いた。