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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十章 地下迷宮
119/153

7

 中央の部屋まで来ると、ニーナミーナが大きく溜め息をついた。

「一難去ってまた一難って感じ。——ねえ、ちょっと休憩にしない?」

「……そうですね、丁度午後一時を回った所ですし」

 クレメントが、外套の内ポケットから懐中時計を取り出す。

「おっなかすいたー」

「そうね、ちょっと疲れたわね」

 シェイラも同意する。

「朝から動きっ放しだったしな」

「お昼にしますか?」

 パッドは、言いながらさっさと自分の荷物を背から下ろす。

「……アーカイエスさま?」

 ララが、長身の連れを困ったように見上げた。

 アーカイエスは彼女を見、そしてクレメントに、抑揚の無い声で言った。

「そうだな。まだ先は長そうだ、ここで一度休んだ方がいい」

「では休憩という事で」

「わあいっ。お茶お茶」

 ニーナミーナは嬉しそうに台座の近くに腰を下ろすと、先程も出した茶器を再び引っ張り出してお湯を沸かす。

 ほっとしたせいか、ジェイスは自分がもの凄く空腹なのに、気が付いた。

 茶が沸くのを待っていられなくなり、ニーナミーナの近くにどっかと腰を下ろすと、さっさと背嚢から携帯食料を取り出して、水筒の水を飲みつつかじり始める。

「あーっ、ジェイスったらもう食べてるっ」

「腹が減ってんだ、待ってられっかっ」

 子供のようなやり取りをする二人に、シェイラが苦笑する。

「ジェイスとニーナミーナって、レベルがおんなじよね」

「ええっ? それってあたしが子供っぽいって事?」

「おいこらっ、ってことは、俺がガキだってのかっ?」

 異口同音の二人に、シェイラは取り澄ました顔を作ると、

「それ以外何者でも無いでしょーが?」と切り返す。

「んだとおっ?」

 唸る大男に、クレメントが笑い出した。

「んもうっ、どーして私がジェイスと一緒のお子ちゃまなのよっ?!」

「止しなよ、ニーナミーナ」

 そう言いながら、パッドも苦笑した。

 和やかなジェイス達とは少し離れていたアーカイエスが、ララが差し出した乾菓子をひと欠け口に入れ、上を見上げる。

「……妖魔が、集まって来ているな」

 彼の指摘に、ジェイス達も真顔に戻って上を見る。黒い魔導師の言う通り、ワイバーンやガーゴイルなど、夥しい数がクリスタル・パレスの上空を旋回している。

「何故……?」

 女剣士は眉を顰める。黒い魔導師が低い声で言った。

「恐らく、先程ボガードの群れと我々が戦ったせいだろう。妖魔は血の臭いに敏感だ。例えそれが地下の死闘であっても、必ず嗅ぎ分けてやって来る」

「ここは強固な結界がありますから、おいそれと妖魔が入り込む事は、まず無いでしょう。けれど、あんまり集まっていると出る時が厄介ですね」

 クレメントが、ニーナミーナから茶器を受け取りながら、真顔で呟いた。

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