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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十章 地下迷宮
118/153

6

 ジェイスが叫んだのと重なって、崩れた壁と反対側にある別な通路への出口の扉が、音を立てて壊れた。

 そこから、ボガードの群れが部屋へなだれ込んで来た。

 大の男が両手を広げ三人は通れると思える戸口一杯に溢れるボガードは、どう低く見ても五十匹はいる。

「早くあっちへ戻れっ!」

 ランダスの英雄伯爵は、背の大剣を引き抜くと、従者であり親友である女剣士に言った。

 だが、シェイラは逃げるどころか剣を抜くと、小剣を手に牙を剥き威嚇して来る群れに向かって行こうと身構えた。

「何言ってんのよっ! 一人でどーすんのよこんな数っ!」

「ばかっ! こんなん二人や三人じゃ押さえ切んねえだろーがっ! 早く向こうへ逃げて、あの穴塞げっ!」

 鋭い咆哮が上がり、ボガードが一斉に襲って来た。

 右、左と斬り掛かって来る妖魔を、ジェイスは片手で大剣を巧みに操り、悉く薙ぎ倒す。たちまち、彼の周囲にボガードの死体の山が出来る。

「ジェイスっ、シェイラっ!」

 壁の向こう側からクレメントが叫んだ。

「早くこちらへ戻ってっ! 壁を塞ぎますっ!」

「俺らに構わずやってくれっ!」

 ジェイスは、素早く二匹の首を切り飛ばして、答えた。

「ここは出来るだけ食い止めるっ。だから——」

「そんなこと出来ませんっ!」

 ジェイスの指示を即座に拒絶した王太子の眼前に、壁の穴から飛び出して来たボガードが迫る。

 咄嗟に、彼は小さな火球を妖魔に浴びせた。

 顔面を焼かれた妖魔が、悲鳴を上げてその場に転がる。

 負傷した仲間を踏み付け、別のボガードが襲って来た。

 ジェイス達の刃を交い潜った妖魔が、次々と向こう側の部屋へと入り込む。

 クレメントは剣を抜き、妖魔を迎え撃つ。

 ニーナミーナと、最後に部屋へ入ったパッドも前へ出て迎撃する。

 アーカイエスが怒鳴った。

「これ以上こちらに妖魔が入って来ると手に負えん。とっとと戻れっ!」

「だーからっ! もう無理だって——」

裂光弾(ライトニング・ボム)っ!」

 最後列に居たララが、神聖魔法の中でも数少ない攻撃系の上級魔法を、ボガードの群れに向けて放った。

 一瞬、空間が真昼のように明るくなる。光の弾が直撃したボガード数匹が、引き裂かれて倒れる。

 眩しさに目を閉じかけたシェイラは、妖魔が光に怯え動かないのを見てすぐに炎系の中級魔法を唱えた。

炎烈弾(ファイヤー・ボム)!」

 更に数匹を焼き殺した炎の球は、怯えていた群れに追い打ちを掛けた。

 ボガード達が一斉に入り口近くまで後退する。

 シェイラは光に目が眩んで立ち竦んでいるジェイスを引っ張って、壁の向こう側に身を翻した。

砕破雷(クラッシュ・サンダー)!」

 彼等がこちら側に入ったのを見届けて、クレメントは雷系の強力な上級魔法を隣室に向かって唱えた。

 何十本もの稲妻が至極限られた場所に、同時に発生する。耳をつんざく雷鳴と共に縦に走った雷撃は、隣室を木っ端微塵に破壊した。

 先のララとシェイラの魔法で打撃を受けていた壁と天井が轟音と共に剥がれ落ち、妖魔達を巻き込んで完全に塞いだ。

 こちら側に出て来ていたボガードは、ニーナミーナとパッド、それにアーカイエスの魔法で片付けた。

 もうもうと瓦礫から上がる煙と、ボガードの死体が放つ、妖魔独特の異臭が室内に充満し、一同は堪らなくなって一度部屋を出た。

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