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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十章 地下迷宮
115/153

3

 細い通路を抜け、広い部屋へと入る。

「……ここは、中央の塔の真下のようですね」

 クレメントは、明かり玉の弱い光にぼんやりと浮かぶ全景を頼りに推測する。

 周囲の形は中央の塔とは異なり、完全な円形になっている。

 上の階の床面だった金属部分が、高い天井となって彼等の頭上にあった。

 ジェイスは、周囲の壁に沿うように歩いた。

「殺風景な場所だな。さっきみたいな文字も書かれてねえみたいだし」

「台座があるわ」

 シェイラが、部屋の中央に置かれた背の高い、黒っぽい石造りの台座に寄る。剣友の言葉に、ジェイスは台座へ近付く。

「何も乗ってねえな」

 クレメントも、台座の側にやって来る。

「何のための台でしょうね?」

「さあてな。……っていうか、ほんとに暗いな、ここ」

 ジェイスは、明かり玉の薄明かりのみの空間を、目を凝らして見回した。

「もう少し……、魔力を強めましょうか?」

 おずおずと申し出たララに、ジェイスは「いや、いい」と手を振る。

「この先、何が起こるか分からねえし。魔力は温存しといた方がいいって。——それに、ここは、この台座以外には、何も無さそうだしな」

「南と西の方角の壁に、もっと暗い部分があります」

 パッドが、出て来た通路を背に指差す。

「多分、別の部屋か通路かと」

「やはり、このままでは暗過ぎるな」

 アーカイエスは、すっと右手を頭上へと上げた。

「——天を塞ぎし大いなる意志よ。我が血に潜みし同じ気の意志に従いてその楔を解き放て。天蓋解放」

 すると、金属の天井が亀裂に沿って八方へと割れて行く。

 きしみながら金属が割れる隙間から薄い光が差し込み、部屋の中をゆっくりと照らし出す。

 やがて、すっかり天井が開いた。

 薄明かりでははっきりしなかった台座の下の全体が、くっきりと浮かび上がった。

「そんなことが出来るなら、さっさと天井開ければいいでしょっ。ララの魔力を使わせてっ」

 ニーナミーナが、ぽっかり開いた頭の上を睨みながら文句を言う。

「忘れていただけだ」と、アーカイエスはあからさまに恍けた。

 相変わらずな二人のやり取りを聞きつつ、ジェイスとシェイラ、クレメントは台座に近寄る。

「……穴、開いてるぜこれ」

 ジェイスは台座の上を覗いた。

「何か入ってたのかな? 水晶とか」

「水晶を入れるにしては穴が小さいわよ。違うわ」

 シェイラの言に、クレメントが目を見開く。

「……これは、もしかしたら……」

 ロンダヌスの王太子は、スピルランドの元宮廷魔導師を振り返る。

「ここに、元々は魔法石が乗せられていたのではないですか?」

「恐らく」

 黒い魔導師は静かに言った。

「だが、そこに魔法石を乗せただけでは何も起こらないだろう」

「他の部屋に、何か仕掛けがあるかも知れないわね?」

 ニーナミーナは、東側の通路を覗き込むと、光の呪文を唱え、ララのものより小さな明かり玉をこしらえた。

「この先に、何かあるわ」

「クレメント」

 シェイラが王太子を見る。

「調べてみたら?」

「さっき、そこの旦那が言ってたように、この迷宮が何処まで壊れてないのか、確認する用もあるしな」

 ジェイスも促す。

「そう、ですね」

 クレメントは頷く。

「そういう事なら、私は西側を見て来る」

 アーカイエスは、靴音を響かせて反対側へと消えた。

 ララが、その後を追う。

 ニーナミーナは、少女の背に何か言いたそうな表情を見せたが、そのまま黙ってシェイラの側へ来た。

「北側、入ってみる?」

 掌の上に明かり玉を乗せたニーナミーナに、シェイラは「そうね」と頷いた。

「俺も行きますっ」

 パッドが、置いていかれてはならじとばかりに、勢い込んで北へ向かって歩き出した。

 小さく失笑しつつ、シェイラとニーナミーナも、彼の後についた。

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