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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第九章 クリスタル・パレスへ
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6

 クリスタル・パレスは、居城(パレス)というより、城壁の様相を呈していた。

 中央の巨大な尖塔を中心に、ぐるりと低い塔が八方に立っている。造りはどれも同じで、八枚の花びらを持つ半開きの一重の花が二つ重なったような、奇妙な形をしていた。

 花びらの尖った縁は網状の透かしになっており、所々、遠目でもはっきりわかる程厚く金で縁取られていた。

 クリスタルの名の通り、上から下まで全て無色透明な水晶で出来上がっている尖塔の集まりは、光の屈折の加減で、所々に雲の流れを映し鈍色に染まっていた。

 魔導師二人を除いた全員が、一斉に短く感嘆の声を上げた。

「……なんで、《パレス》なんだ?」ジェイスは、見たままの疑問を口にした。

 クレメントが「そうですねぇ」と、のんびり答える。

「カスタ王が建てた城は、大方が居城でした。ので、その流れでこれ(クリスタル・パレス)も《パレス》となったようです」

「いいかげ〜〜んっ」口を尖らせたニーナミーナに、クレメントが、

「それは、そうですよね」と苦笑した。

「窓がないわね」

 鈍色の空や、黄や赤の稲妻を映して見えにくいが、確かにシェイラの指摘通り窓らしき造りはない。

「それに、入り口も無い」頷きながら、ジェイスは付け足した。

「必要が無いからな」

 アーカイエスが答えた。

 クレメントがまた補足する。

「あの城は、迷宮への入り口に過ぎません。あそこへ入るには、やはりライズワースと同じノルン・アルフルの血筋と魔力が必要です」

「それのための、魔法陣だ」

 アーカイエスは振り向くと、ジェイス達がミナイからの移動に使った魔法陣を指した。

「これの本来の使い方は、クリスタル・パレスへの出入りだ。——このように」

 黒い魔導師は、魔法陣の中心に己の右掌を触れる。

 途端。

 水晶の城の中央の尖塔中程に入り口と、その前にテラスが現れた。テラスの真ん中から虹色に輝く光の束がゆっくりと魔法陣へと伸びて来た。

 人間三人分程の幅がある光は、あたかも橋のように塔と魔法陣を繋ぐ。

「これは……?」クレメントは、形良い眉をやや顰める。

 クリスタル・パレスの記述はロレーヌの古文書にあったが、入り方までは記されていなかった。

 それが書かれていれば、先の魔法陣の使い方も、とっくにクレメントが分かっていた筈だったが。

 驚くクレメントに、アーカイエスは抑揚の無い声音で答えた。

「『悪魔の橋』と、我々の間の伝承では呼ばれていた。私は、カスタを調べてこの橋の存在が事実であった事で、ライズワースの迷宮を信じる事が出来た」

 黒い魔導師の赤い瞳が、クレメントの銀の瞳をゆっくりと見返す。

 トール・アルフルの血を濃く受け継ぐ王太子は、あからさまに何をするか宣言した相手を、一瞬、睨上げた。

「……で、この橋の渡り方は?」

「文字通り、橋だ。このまま渡ればいい。ただし、これには門のような結界は無い。空飛ぶ魔物は容赦無く襲って来る」

「えーっ! じゃあ、この、あんまり幅の無い橋の上で、飛行系の魔物と戦闘ってなるわけっ?!」

 冗談じゃないわよっ、と、ニーナミーナが息巻く。

「他に、もっと安全で簡単な入り方ってないの?」

「無理でしょうねえ」クレメントが苦笑いを浮かべた。

 思い切り唸ったニーナミーナに、アーカイエスが呆れたように言う。

「カスタの中心部まで来て、安全がどうこう言うとは。イリヤの神官は余程の温室育ちらしいな」

「むっかつく〜〜!!」

 ニーナミーナはアーカイエスの長身を思い切り睨み上げると、ずかずかと橋の方へと歩き出した。

「渡ればいいんでしょ! 渡ればっ!!」

 何よっ、こんな橋の一本や二本っ、と怒鳴りながら、真っ先に突っ込もうとする女性神官を、パッドが慌てて制した。

「俺が先に行くよっ」

 若い神殿警護騎士は、ニーナミーナの前へ出ると、腰の長剣をすらりと抜いて橋へ上がった。

アーカイエスとニーナミーナの小競り合い(?)

当分続きそうです・・・

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