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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第九章 クリスタル・パレスへ
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4

 咄嗟に、ジェイスは隣にいたシェイラとララを庇って身を低くした。

 鍵爪が、彼等の頭があった辺りの空を切る、筈だった。が、ガーゴイルの爪は門の手前で、まるで見えない壁に阻まれたかのように止まる。

「なにっ?」

 素早く体勢を直し背の大剣を抜こうとしたジェイスは、音も無く自分達を守った『壁』に驚く。

 己の攻撃が阻止されたのに怒って、妖魔が、狼が威嚇するような声で吠えた。

「大丈夫ですよ。この門には結界が敷かれています。妖魔は僕達に攻撃は出来ません」

 クレメントんが朗らかに理由を述べた。

「んだよっ。だったら先に言えってっ! ったく、焦っちまったじゃねえかっ」

「あはは、すいません。……でも、今のはシェイラとララのお二人が羨ましかったですねえ」

「……え、あ? 何で?」

「だって、ジェイスは騎士として、お二人を庇われたでしょ。僕もして欲しかったです」

 最後の言葉を、本当に残念と言う表情で言ったクレメントに、ジェイスは真っ赤になって脱力した。

 真顔でコクられても、現時点の自分達の状況では、どうしても本気に取れない。

 そのくせ、クレメントの美貌は破壊力抜群、なのだ。

「あー……、だから、本当にどっちなんだよ……」

 ジェイスを好きだ、というのは、ジェスチャーなのか、真剣なのか?

 男心を弄ぶな、と心中で叫びつつその場に突っ伏したジェイスに、クレメントは、けろっとした声で訊いた。

「え? 僕、何かいけませんでしたか? ただ単に思った事を申し上げただけですが?」

「ええっ? なになにっ、どーいう事それ?」

 二人の会話が妙な方向に行くのに、ニーナミーナが目を輝かせた。

「二人って、そーゆー仲なの?」

「いや……。まだそんなことには——」

 否定しようとしたジェイスを、クレメントの爆弾発言が遮る。

「ええ。僕はジェイスと結婚する積もりです」

「えーっ!! マジで?!」ニーナミーナの大絶叫が、北門の上に響く。

「……そーいえば、旅の間も随分仲が良かったような……」

 パッドは、顔を引き攣らせながら呟いた。

 訳知りのシェイラは、呆れながら首を振った。

 アーカイエスは鼻白んで腕を組む。

 ニーナミーナが、ますます嬉々として突っ込んだ。

「えーっ、私、気が付かなかったぁ。クレメントって、ジェイスが好きだったの? ジェイスも? そー言えば、ロンダヌスって、王族や貴族は男性同士の結婚もアリなのよねっ。結婚するなら相思相愛よねっ? っていうかっ、二人共そーいう趣味?」

 下町の井戸端のおばちゃんもかくや。ゴシップ・モンスターと言っても過言ではなく捲し立てる。

「別に趣味というか。たまたま好きになったのがジェイスだっただけです」

 美貌の王太子が、しらっと答えた。

 ニーナミーナは両手で頬を押さえ、さも楽しそうに「うっそぉっ!」と叫んだ。

 我慢ならずに、ジェイスは怒鳴った。

「だから信じるなってのっ! 何処まで本気だか分かんないだよっ、こいつはっ!」

「きゃー、こいつだってっ!」

「ニーナミーナっ!」

 ジェイスとパッドが同時に嗜める。

 あはは、と脳天気に笑う元凶の王太子の隣で、アーカイエスが唸った。

「いつまでやっている積もりだ……」

「ああ、申し訳ありません。ジェイス、ほら本題に戻りますよ」

「……ったくよお」

 誰のせいで話が脱線したと思っているんだ。

 こんなにどきまぎさせられて、割に合わないのは自分の方だ。

「俺のせいに、すんなっ……」

 赤い顔でぶつぶつ文句を言いながら、ジェイスは先程アーカイエスが指した方向に向き直る。

 ニーナミーナも、まだ含み笑いをしたまま、そちらを向いた。

ジェイス、すっかりクレメントの掌の上、です(苦笑)

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