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桃太郎  作者: オリオン
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兆太郎

桃から生まれた桃太郎の臍の緒を切ると人の形に変化し始めました、桃太郎はスクスクと育ちましたが臍の緒の発育状況はよろしくありませんでした、おじいさんとおばあさんは千代に八千代に末長く生きて欲しいと言う願いから臍の緒にチヨと名付けることにして桃太郎と共に育てることにしました。

桃太郎はそのまま竹のようにスクスクと育ち鬼退治に成功しましたが、チヨは一般人よりも早く成長はするものの兄貴と比べられて性格が歪んでしまいました、体が大きくなってくると老夫婦から金をせびるようになりました、お金をせびる位に大きく育ったチヨをみておじいさんとおばあさんはチヨのことを兆太郎と呼ぶことにしました。

弟の兆太郎はおじいさんとおばあさんから金をせびり酒に溺れて肥溜めに突っ込む毎日でした、ある日金をせびりに行った所でついに堪忍袋の尾が切れたおじいさんとおばあさんに叱られた兆太郎は逆上して老夫婦に怒鳴り声をあげました

「どうせお前らだって出涸らしだって思ってるんだろ!」

「頭だってよくない俺なんか優秀で清廉潔白な兄貴のおこぼれなんだろ!」

その通りなのです、優秀で清廉潔白な竹を割ったような性格の兄貴は誰からも愛されて、みじめでいやしいいじけもののクズは虫すら愛想をつかしますが、おじいさんとおばあさんは兆太郎に幸せに暮らして欲しいと思っています。それはさておき、うまく言葉を伝えられないでいるおじいさんとおばあさんに対して兆太郎は言葉を続けます。

「お前らだって兄貴のことしか愛してないんだろ!」

「こんな出来損ないなんて早く厄介払いすればよかったって思ってるんだろ!」

と言いながらおじいさんの胸ぐらを掴みました

その言葉を聞いて先ほどまでオロオロしていたおじいさんとおばあさんの態度は一変しました、柔道家と桃太郎一家の胸ぐらだけは掴んではいけません、兆太郎はおじいさんに襲いかかりましたが桃太郎の桃を食べて毎日農作業をしている気合の入った父親には勝てず返り討ちにあい、おじいさんとおばあさんの実家を蹴り出されてしまいました。

老人にすら勝てないアル中の兆太郎は酒の匂いもせず仰向けに地面に倒れて星空を眺めていると少し悲しくなってきました。

「桃兄ぃ・・・」兄貴だけはどんなことがあっても自分の味方でした、寂しくなって会いに行きたくなりましたが会うとお小遣いを沢山くれて、みじめな気分になるので一山当ててから会いに行こうと思いました。

兄貴の顔を思い出した兆太郎は兄貴の仲間を使えば自分も一山当てられそうだと考えます。兆太郎は桃太郎一家に伝わる秘伝のレシピを盗み鍋でキビ団子を作り、おじいさんとおばあさんの物置を漁りUFOに乗り込みました、今の姿を姿見で見て兄貴の友人に会うにはキチンとした格好をしなければならないと思いUFOの中にあるエモン掛けからグレイのスーツを横に押しやり金ピカの全身タイツを身につけ、UFOを操縦して成層圏まで浮かび上がり星空を背に、桃太郎のかつての仲間のサル、キジ、イヌに会いに行きました。


館に着くと門番が兆太郎を確認した瞬間に急いで館の中に入って行きました、まもなくサル、キジ、イヌが出てきました。

「俺、弟の兆太郎ってぇんだへへへ」と慣れない愛想笑いをしました。サル、キジ、イヌは兄貴の面影のある兆太郎を大層もてなしてくれました、桃太郎と会った時のことや一緒に戦った思い出をまるでそこにいたかのように感じさせてくれる歓迎の席はいつまでも居てもいい、居心地の良い空間でした、宴もたけなわと言ったところでサル、キジ、イヌの料理にキビ団子を混ぜました。

サル、キジ、イヌはキビ団子入りの料理に舌鼓を打ちました、次々と消えていくキビ団子入りの料理に笑いが止まらない兆太郎は久しぶりの酒の席もあって多いにお酒を飲んだのでした。

次の日兆太郎は肥溜めの中で目覚めました。

「南無三宝!」

急いで館に駆けつけたところ館の前で追い返されました、臭くて館に入れてくれません、門番に話を聞くとサル、キジ、イヌは今日も朝早くから仕事に精を出しているそうです、もし兆太郎がきたら伝えてくれと言われていたので門番は兆太郎にサル、キジ、イヌの伝言を伝えました、昨日のキビ団子入りの料理は1週間ぶりに食べれて良かった、また予定が空いた時に一緒に飲もうとのことでした。

そこら辺にある木桶に八つ当たりをしておがくずに粉砕しました、こうなりゃヤケだと鬼ヶ島に行って鬼退治をしようと思い、鬼ヶ島に向かいましたがUFOの燃料が途中で切れてしまったので鍋の蓋と竹槍をオールにして鬼ヶ島へ向かいました。

鬼ヶ島の鬼は退治され観光地になっていました、至る所で鬼や桃太郎のグッズが売っていました、桃太郎のグッズを眺めていると桃太郎の話を大声でする奇抜な格好の人がいました、琵琶法師です、兄貴の桃太郎の有る事無い事尾鰭のついた話をしており、その前に大きな箱を置き金銭を得ていました、兆太郎の心に義憤の炎が点りました、今まで碌なことをしていなかった兆太郎、おじいさんとおばあさんに逆上した時以上の声で叫びます。

「桃兄の悪口言うんじゃねぇ!!」

お鍋のふたを顔面に投げつけ怯んだところを竹槍の石付きで追い打ち、尻餅をついたところで馬乗りになり相手の顔の形が変わるまで殴り続けました。

「二度と来んじゃねぇゾ!!」

這々の体で立ち去る相手に唾を吐きかけ見送った兆太郎は空を見上げました、桃太郎の守った空を見上げると兄貴の笑顔が浮かんでくるようでした、琵琶法師のドロップ品である大きな箱の前でこう言いました。

「昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました」

兆太郎の語る言葉はささくれだった人々の心を桃のように包み込みます

「サル、キジ、イヌに出会い力を合わせて戦いました」

まるでその目で見てきたような兆太郎の言葉に視聴者の鼻の穴は膨らみます

「めでたしめでたし。」

兄貴の健康を祈り千代に八千代にめでたく続きますようにと神に祈りながら

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