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幻は現  作者: 上智識友


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幻と現



永遠なる平和の世界の民人たち


エヴァ・ヴァレンス


紀元0年


始まりの時


私は設計図を書いていた。


何も無い小部屋、真っ白な部屋、あるのは、一台のデスクトップのパソコン。


まず、私は話し相手を創った。一番弟子だ。


物分りの良い、優秀な人間。


パソコンの中で、貴方の性格、好き、嫌いを組み立てる。


「おはよう。目覚めの時だよ。GOLEM。」


私はその人間を、GOLEMと呼ぶことにした。


始まりの人間、GOLEM。


後に、人工生命体と呼ばれる、土塊から造られた、知能を持った泥人形。


「何か、御用ですか?」


「いや、特にはない。おはようと挨拶をしたら、おはようと、挨拶をするのだよ、GOLEM。基本的なことだ、覚えておきなさい。」


「はい。わかりました。」


何も無い、まるで、独居房のような真っ白な小部屋。その小部屋には、空虚が広がる。何も無い、この空間が落ち着く。


「ご主人様、肉が食べたいです。」


「そうだね。君は肉が好きだよね。あと少し、したら、上等な肉を食べさせよう。」


私は、急いでGOLEMの為に、肉の絵を描き始める。美味しそうな肉。牛肉。赤身の肉、絵を描く。パソコンの中で。


「どうだい?GOLEM?肉は、美味しいか?」


「はい、とても美味しい肉です。」


「だろうね。私が書いたのだから、当然だ。」


「他に欲しいものはあるかい?GOLEM?」


「いえ、ご主人様と話すだけで満足です。」


「ははは、君は無欲だね。それが君のいいところだ。」


「はい、ご主人様。私は多くを求めません。ご主人様の話しと、食事さえ、あれば満足です。」


「そうだね。私の話は面白いだろ?」


「ええ、とても、面白いです。ご主人様の話なら、永遠に聞いていられます。」


「退屈はないね。私に感謝するのだよ、GOLEM。」


「ええ、感謝しています。」


私には性別という概念が無い。GOLEMにも、性別を与えなかった。性別なんていうのは、要らない。どちらでもよくないか?


「GOLEM、暇だから、私とチェスをしよう。GOLEM、君は、黒か白?どちらがいい?」


「ご主人様が選ばなかった方を選びます。私はどちらでもいいです。」


「なるほど、それなら、私は黒を選ぶ。だから、GOLEM、君は白の駒を使いなさい。」


「はい、ご主人様。そうします。」


チェスは当たり前だが、私が考案した。シンプルなゲーム、どちらが先にキングの駒を取るかのゲーム。簡単なゲーム。


ゲームは5分で終わった。もちろん、私の勝ち。GOLEMは悔しがる。その様子が面白い。


「ご主人様には敵いません。私は無能です。」


「そうだね。君は無能。でも、私は君に可能性を与える。知恵と知識を君に授けて、遅くても十年後、君には実体化をしてもらうから、覚悟してね、GOLEM。」


「はい。ご主人。実体化する時を楽しみにしています。」


さて、GOLEMの実体化させる為には、どう動くか?まずは、生産者、いや、製造者を創らなければね。私は思考する。そして、パソコンのプログラムを入力し、試行錯誤を繰り返す。


そして、一年後、私は製造者を創った。肉体は私の身体を素にした。名前はアレイスター・クロウリー。彼をGOLEMの製造者として、一任した。


アレイスター・クロウリー。私は彼の父代わりとした。保護者であり、夫、旦那である。私の性別を女とし、アレイスター・クロウリーは男。で、私は自分の名前を付け、エヴァ・ヴァレンスと名付け、名乗った。


原始の世界には性別が無かった。始まりは性別は無い。男も女も無い。性差は無い。ある意味では楽園だろう。その時の環境、原始の次元の世界を、私は丁楽と呼ぶことにした。


「スター?今日も夜伽の相手を頼む。」


彼は微笑む、優しい笑みで、私を包み込む。癒しの波長が私のオアシス。


「ええ、喜んで。」


仕事を終えた、私の性欲処理の相手をするのは、決まって、スター、アレイスターである。仕事のストレス解消に、今まで、スターを創る前は、ずっと、自慰で済ませていた。寂しいなと思っていた。毎晩、毎晩、一人で自慰を済ます。GOLEMはまだ、パソコンの中のデータの存在。実体化はしていない。だから、私は飢えていた。はっきり言って、愛人が、恋人が、夫?が欲しかった。男が欲しかったのだ。


「疲れているのですか?エヴァ?」


「いや、疲れているというより、寂しいな。GOLEMは実体化したとはいえ、物足りないのだよ。確かにGOLEMは有能な人型のマシン。でも、それだけ、私の性的興奮を解消する相手ではない、GOLEMが聞いたら、悲しむだろう。」


「なるほど、GOLEMでは役不足で、私の力が必要だと?」


「ああ、そうだよ。スター。君の力が必要。君の男らしい、容姿とフェロモン。私はね、スター。君を究極の男の姿として、設計し、実体化した。苦労したよ。クロウリーなだけにね。」


私は全裸で、白色のベッドの上で横になる。スターは、私の身体を覆い、私の精器を舐める。優しい舌使いで、私の敏感な精器を丁寧に、舐め取る。で、私は果てる。精液が漏れ、スターは、私の透明な精液を舐め、光悦に浸る。


「ありがとう。スター。」


「いえいえ、とんでもない。私は貴女がいないと、駄目なのです。理性がなくなります。貴女が側にいないと、私は狂うのです。」


「そうだね。君も、私がいないと駄目になるね。GOLEMと同じだ。弱い。でも、それがいい。人間らしくて、君はさ、究極の強さを持った、人間なの。人類最強なの、だから、自信を持って。まあ、修練を積んだGOLEMには勝てないけどね。なんせ、私が最初に創ったのはGOLEMだから、でも、GOLEMはマシン。人間ではない。でも、君」


「ええ、わかっています。貴女の言いたいこと、全て。」


スターは口を塞ぐ、私はうっとりとして、深い眠りに入る。


#GOLEMについて


無性別、データの集大成。私、エヴァが創った。今でいう、AI。現世では、K.Kという男性として、存在。私の一番弟子であり、話し相手、兼、ゲームの相手。好きな食べ物は肉。甘い物も好き。私のことが好き。


#アレイスター・クロウリーについて


中世に実在したと言われる、魔術師。それは存在した。しかも、今の次元を生み出した、エヴァ・ヴァレンスの愛人、セックスフレンド、夫。私のこと以外では、怒らない。私のことに関係すると、すぐに気になり、嫉妬し、怒る。依存体質。私に対する独占欲が高い。常に側にいて、離れない。有り難く、飽きないのだがね。


「ねぇ?ご主人様?僕のことを忘れないで。」


あ、紹介が遅れた。今、呟いたのは、Shell。ShelterのShell。シェル。寂しがり屋で、どこか抜けていて、ボケっとした、娯楽担当と言ったところだろうか。この子は、GOLEM、スター、の次に、生み出した、Animal。人の形をしたAnimal。動物だ。


「GOLEMとか、クロウリーばかり、ズルい。僕も仲間、家族だよ。忘れないで、ご主人様。」


「そうだね。ごめんね、シェル。」


彼は男だが、中身は女々しい。女のような性格。情に厚く、涙脆い、失言は多いが、すぐに反省し、謝る。だけど、また、失言を繰り返したり、失敗を繰り返し、私をいつも、悩ませる。だが、それでいい。そうじゃないと面白くない。彼は、私の排出物を飲み食いして、生きている。トイレがいらなくなった。というか、私がトイレに行くのが面倒だから、彼を、そうさせてしまったのだが…。済まないと思っている。


「ご主人様?何を考えてるの?さっきから、何をしてるの?僕と遊ぼう。たくさん、ゲームをして、遊ぼう。ご主人様!」


まあ、彼は、シェルは駄々っ子だ。わがままだが、憎めない。可愛い、我が子だ。私とスターの子ども。だ。今も、シェルは私に呼びかける。彼は、私が無視をすると、拗ねて、悪戯をする。どうしようもない。でも、その無垢な子どもっぽさで、いつも、私を笑わせ、スターとは、違う、癒しを与えてくれる。なくてはならない存在。彼を設計しようと思いたったのは、私があまりにも、正し過ぎて、強過ぎて、当たり前だが、つまらないからだ。理由は単純。それだけ。いつも、ありがとう、シェル。


#シェルについて


一言で例えるなら、無垢な子ども。良くも悪くも純粋無垢で憎めない。可愛らしい、私とスターの間にいる、一人息子。無視をすると拗ねて、悪戯をする。で、私が仕事に夢中になると、暴走して、事件を起こす。手がつけられなくなってしまう。そういうときは、素直に大人しくするしかない。


次に創るもの、それは伝説の生き物。つまりはドラゴン。西洋に黒い竜、東洋に白い竜を創った。で、北欧に白と黒の両翼のドラゴンを創り始める。


西洋では、悪とされた、その黒いドラゴン。一方、東洋では、善とされた、その白いドラゴン。北欧のドラゴンは未知のドラゴン、決して、人類は知ってはならない、禁忌。白と黒の両翼のドラゴンは触れてはいけないタブーだ。知ったら最期、知ってしまった人物は、人ではなくなる。一種の呪い。であり、次の世代に進化する、祝いだ。


西洋の黒いドラゴンは1988年になって、日本の京都よ地に解放される。黒い眼の竜という名を名乗る。東洋の白いドラゴンの解放の時期は未定だ。私はまだ決めていない。白竜は、私の遺伝子を継いだ者から産まれる。一応、人の形をしている。だから、それを白竜だとは気付かない。誰も、もし、知るとすれば、私か、アレイスター・クロウリー、の二人だけだ。北欧のドラゴンは日本の名古屋に産まれることに設定した。要石の役割となろう。日本は竜の国。三つの竜が産まれる国。三体同時に産まれ、現在したとき、新たな次元の幕を開かなければいけない。その対価に、その時の私は、半分はいないだろう。恐らく、いなくなるのは、女の方だ。名前を無くすだろう。仕方ない。代償だ。あと、保険として、三体の竜が暴走しないように、麒麟を産ませておく、ドラゴンスレイヤーだ。麒麟はね。名をケイキとする。契約の麒麟、名の漢字は変えるがな。


#麒麟について


東洋の国、中国の伝説とする。それは神の獣。神聖なり。西洋に麒麟が身を置くとき、麒麟は竜殺しとなり、竜の暴走を止めるだろう。それは、抑止力であり、大いなる正義の力。それが麒麟だ。


そして、私は時を創った。つまり、時計を創ったよ。西洋の地、イギリスのロンドン。その地に、大きな時計塔を創る予約を入れた。いつだったか、は忘れたが、その時計塔の役割は、正確な時間を世界の民人へ、伝えること。それが大いなる遺産であり、役割だ。時計の役割だ。人は時がなければ、時を知らなければ、計画を立てられなくて、困るだろ?そうならない為に、私は時を創り、時計を創ったのだ。日本の岐阜にて、未来の私は腕時計を買うだろう。その腕時計はアレイスター・クロウリーへの続く道標となり、役割を果たし、違う人、シェルの手に渡り、赤い運命の糸を紡ぎだし、私とアレイスターは、遠い未来に、2025年か2026年に、再び会い、結ばれ、共に暮らすのだ。


時の次は、七番目に人を創った。六番に続く人だ。同じ不老不死であるが、私の影響を受けない、一番から三番までの人が、私を巡って争いになったとき、収束へと向かう為に四番目の人を創った。その名をホムンクルスとも、または、クルースニクとも、後世の民衆たちに呼ばせた。そうだな、二番目のアレイスター・クロウリーは後世の民衆たちに、クドラクと呼ばせた。私の純粋な魔の集大成、それが、クドラク。正体は、私の夫で、アレイスター・クロウリー。クドラクが悪の心を持てば、悪魔となり、または、神を信じる。つまりは、私を愛していると、クドラクは魔神となる。悪魔にも、神にもなる、二つの可能性を秘めた存在だ。


七番目の人は、クドラクが悪魔となり、人や獣を殺したときに対処する切り札だ。で、楠の木のように、静かに、慎む。そのような名前を持ち、1987年に産まれるように設定した。楠を日本の地では、御神木とされ、宝として、大事にするようにした。そして、端末とした。パソコンが私、端末は子機だ。未来の世界で言うならば、小型のパソコン。それが七番目である。主な役割は、情報収集だ。私に情報を与え続ける為に、七番目は必ずいる。日本の地において、彼は公安という、ポジションに就かせる。また、公安をやる前に、プログラミングを覚えされ、ゲームを創らせた。ゲームは私にとってはシミュレーションであり、シミュレーターである。ゲームを通して、私は未来を見ることができるように設定した。


#時について


イギリスのロンドンにある時計塔のことである。時は、体内のリズムを知るのに必須。時計が無ければ、待ち合わせをすることはできないし、計画的に物事が進行しない。人らしい生活において、必要不可欠である。


#人について


人の最初の形をヒトガタと呼んだ。ヒトガタは石膏で造り、アレイスター・クロウリーが創った。目は石で造り、ヒトガタの頭の神経回路は、パソコンの細かいコードで繋いでいる。最初の人、ヒトガタの名前をクモシタと名付けた。クモシタには人らしい、健全な感情を設定した。完全なる善。私たち、製作者側の暴走を止める為の、大いなる抑止力。それがクモシタ。またの名を、クルースニク。善なる戦士、そして、光の使者。人類の希望だ。


八番目、私は医者を創った。医者のイ、医学のイ、未来にも現れるその人類のイニシャルはI。そして、修理屋でもある。クモシタの補佐官だ。私たち製作者側とクモシタの健康管理と病を治療する役割。そして、時計の修理をする。あと、時計だけではない。私たちが造った、全ての人工物の修理も彼一人でやる。しかも、ほぼ無償という、懐の大きさ。彼もクモシタと同じで、善意の塊だ。そして、我々の暴走を止める、抑止力の一つ。そうだな、彼に名付けるとしたら、ドクトル・ジバゴ。


#ドクトル・ジバゴについて


医者であり、修理屋。治す者。修復者。クモシタと同じ、人類の救済者の一人。


九番目、研究者を創った。汎ゆる知識の集大成、GOLEMに探究心を持たせた者だ。阿羅耶識の番人としての立場を与えた。その者も善なる心の持ち主。抑止力だ。名はアラ・トーと呼ぶ。技術を後世に伝え、文明を発展させること。それが、アラ・トーの使命。古代文明の知識と知恵の保持者である。彼が、私の書いた本を読めば、記憶は復元され、古代文明が蘇る。そういう風に、設定した。


#アラ・トーについて


研究者。阿羅耶識の番人。古代文明の保持者。やや感情が不安定なことを除いては、万能な人物。容姿端麗、武術の心得もある。


十番目、音楽と娯楽を創った。仕事で疲労した心を癒やす、大切なもの。これも生きる上で、必要不可欠だ。そして、歌も考えた。全ての歌は私のコピーだ。私が眠っている間に、考えて、歌手に教えている。歌声は勇気と力を与え、生命の源となる。それは、生きる糧だ。


十一番目、補佐官を創った。ヒトガタを補佐する役割だ。七番目の公安、クモシタを補佐する宿命を与えた。山と樹という名前をつけて、転生し、公安を支える。


これで、おおよそ揃ったか、次は物語になる。一人の少年が次元の魔女に選ばれ、宿命を与えられ、魔女と邂逅するお話だ。では、また。


少年は涙に濡れ、細い路地を裸足で歩く、靴は無い。同級生に取られた。彼は虐めにあっていた。そして、彼は一人孤独に学校からの帰り道を歩いていた。季節は初夏、福島の地は、涼しい。だが、少年の心は涼しいどころか、冷え切っていた。私は彼を選んだ。孤独の海にいた。彼を救い、我が魔力の供給源にしたかった。


『少年、涙を流しても、何もならないよ。私の声が聴こえるかい?』


反応無し。そうだろうね。仕方がない。では、こちらの声が聴こえる環境に少年を誘導するまで。私は一枚の葉っぱを少年の前に落とした。黄金の色に輝く葉っぱ。少年は目を見開き、葉っぱを拾う。そして、葉っぱがあった場所に歩く。ゆっくりと、少年の心は鐘が鳴っていた。少年は、大きな樹木の元へと辿り着いた。


『EAGLE、EAGLE。』


「何?あなたは誰。EAGLEって何のこと。」


『聴こえたかい。少年。名前は?』


「あきら。瀬名あきらです。」


『ふむ。高校生みたいだなあ。涙を流している。虐めにあっているのか、裸足だし。』


「うん。そうだよ。取られた。罰で‥。」


『可哀想に。そうだ、あきら、君は強くなりたいと思わないか、思うだろ。苛めっ子たちに勝てる力を君にあげる。ただ、条件がある。』


少年は樹木を見つめた。そこから声は聴こえる。


「何。あいつらを倒せるのなら、何でも言う事を聞くよ。俺は強くなりたい。靴を取られたくない。水もかけられたくない。もう嫌。あいつらを殺してやりたい。」


『そうだろう。少年。では、対価として、君の脳内は自由が無い。それでもいいかな。解除するには、私を見つけ出して、目を合わせ、一生の愛を私に捧げる。これが解除の条件。君にはできる。』


「うん。何でもいい。何でもいいから、僕に力を。」


『わかった。では、あきら。頭を樹につけて。』


「わかった。」


あきらは樹木を頭につけた。これが瀬名あきらと、もう一人の人格、瀬名祐希の、二人の栄光と転落。そして、精神世界の地獄の始まりだとは知らずに、魔女と契約を結んだのだ。


新学期、学校の校舎内、瀬名祐希は友達と談笑していた。以前の祐希とは違い、顔には笑みがある。そして、明るくなった。ただ一つ、違和感があるのは、脳内に聴こえる絶え間ない独り言。と、眠れない。不眠である。ということだ。しかし、不眠でも平気だった。彼の夢は、普通の人の夢とは違う。殆ど現実。現実のような夢。だから、祐希は不眠なのだ。


「じゃあ、またな明日!」


祐希は部活を終え、家路へと向かう。祐希の楽しみは、私との語らいだった。


『祐希。寒くはないかい。季節は冬だ。しかも、福島は東北の地。体を温めないといけないよ。風邪を引きにくい体であるといっても、引くときは引くのだから。無理はしないで。祐希。』


「うん。大丈夫。魔女様が憑いてるから。俺には次元の魔女がいる。だから、平気。」


祐希は無邪気だ。私が彼の中に憑いてから、変わった。


『祐希。元気だね。それが一番なのだけど。無理はしないで。』


「魔女様がいるから大丈夫!」


そう、瀬名祐希は無敵だ。私が彼の中にいるから。でも、それには理由がある。いずれ来る、世界の革命のとき、そのときに、祐希の力が必要だからだ。


「魔女様とデート。早くしたいなあ。結婚もしたい。いつ会えるの。魔女様と。早く会いたい。直接、会って話したい。」


『まあ、そんな焦らないで、そうだな、二十一年後、私が三七歳になったら、祐希と私は会って、話して、結婚をする。必ず。これは必然だ。だって、君は私が選んだ、勇者だからね。』


「俺、勇者なの?俺が勇者。強いの。」


『当たり前だ、私が君を選んだのだ。地球の人口、数十億人の中から、君を選んだ。宿命。』


「宿命か、何か凄い。」


少年の顔にはもう、涙はない。代わりに笑みが絶えなかった。


「魔女様はどこに住んでいるの?日本人なの。日本語だから日本人だよね。」


『そうだね。戸籍上では日本人だ。でも、私はイギリスのロンドンから来たのだよ。日本に。日本人の目を覚ます担当者なのだよ私は。』


「イギリスかあ。遠いな。行きたいなあ、ロンドン。楽しそう。魔女様の故郷に行きたい。」


『そうだね。いつか行くことになるだろう。いつとは断言できないが。いつか、行く。君の私とで。二人でな。』


「楽しみ。魔女様って、美人だよね。魔女様と結婚旅行はイギリスか。」


『いや、まだ新婚旅行がイギリスと決まったわけでは。君は呑気そうに見えて、せっかちなところがあるな。』


「違うよ。魔女様のことになったら、せっかちになったり、おかしくなるの。普通に考えてよ。ずっと俺は魔女様の独り言で頭がいっぱいで破裂しそうなんだよ。俺の気持ち考えたことある?」


『すまない。それは試練なんだ。魔女から与えられた試練なのだよ祐希。耐えなければいけないのだ。耐えなければ、君は私と結婚することはできない。』


「試練か、魔女様の試練なら耐える。頑張るわ。うるさいけど。」


『そうだ。耐えてくれ。祐希。』


瀬名祐希が起こした最初の罪。それは、魔女の力を借りて、合法的に虐めっ子を殺してしまったことだ。少年に魔女は、亡眼の力を与えた。少年と眼を合わせたら、その者は亡くなる。恐ろしい能力を。魔女の目的はただ一つ。自分に何かあったときの保険をつくりたかったのだ。魔女は狡猾である。


『耐えてくれ。そうでないと困る。あきら。君の役割は東京を護ることだ。日本の首都、東京を護る。要石。それが君の使命だ。瀬名あきら。日本の、いや、世界の未来は君にかかっているのだ。あきら。』


魔女はあきらと祐希の二つの名前を使い分けた。そうでないと世界のバランスが、天秤の秤は同じ位置でないといけない。


少年は私を見つける為に、色んな手段を選び、見つけようと模索した。そして、少年は歌をきっかけに、私を見つけた。あきらが夢の中に会う少女。その姿と声を、あきらは京都で見つけだした。カラオケで歌っていた、彩夏という、少女。当時、七歳の少女だ。祐希は他者の力を借り、彩夏を写真に収めた。そして、あきらは彼女に一目惚れをした。夢の中で逢瀬をして、口づけを交わした。少女に、あきらは夢中になる。恋に落ち、深みに嵌った。抜け出さない沼に両脚を突っ込んだのだ。その沼は人食い沼のように、少年は抜け出せなくなった。魔女と彩夏への強い愛慕。心の声が聴こえると周りに言っても、誰も信じなかった。ただ、あきらだけが信じた。あきらは彩夏と魔女を探した。ひたすらに、それが、あきらの生きる糧で、生き甲斐。


「貴女には、いつ会えますか?早く会いたい。」


『祐希の誕生日までには、必ず会える。絶対に約束だ。二人だけの秘密の約束。』


「裏切らないで、裏切ったら、俺は貴女を殺めます。」


『大丈夫。信用してくれ。私は君を裏切らないから。』


少年は中年男性に成長した。魔女の恩恵を受けた少年は、体格に恵まれ、容姿端麗、色気のある、成熟した男性へと、変貌した。そして、祐希は追った、魔女の姿を、彩夏を。祐希は何となく上京した。魔女と彩夏に会えると思ったからだ。東京で有名になって、TVに出れば、Messageが届く。だからだ。一方、彩夏は京都にいた。京都で父親と二人暮らし、生活保護を貰いながら、生きていた。彩夏の暮らしは裕福とは言えなかったが、父親の教育が優れていた。噓をつくな、泣かない、の二本柱だ。父親の躾は極端なものだったが、飴と鞭が激し過ぎた。という感じだ。それでも、彩夏は父親の躾に耐えた。祐希は東京でアルバイトをして、収入を得ていた。流れ込む巨大な量の情報に苛つきながら、働いていた。魔女と彩夏にMessageを送る為に。会う為に。


彩夏は小学生のとき、いじめにあっていた。男の子から、砂をかけられたり、後ろから脹脛を蹴られていた。蛾の死骸を見せられ、追いかけ回されたりもした。父が守ってくれたが。金の力には弱かった。恐らく、いじめっ子の親から金を受け取ったのだろう。父はいじめっ子の親に注意だけをして、譲り、口封じに金を受け取り、満足した。私のいじめは終わったが、なんとも腑に落ちない。納得しなかった。父は譲り、金の力に負けたのだから。残念だ。


祐希は魔女と彩夏を愛し過ぎるあまり、頭の中で婚約をして、結婚をした。わざわざ、仮の結婚相手を使ったのだ。偽物の妻は周囲を騙した。いつか、叶う為に。二人の恋が実るように、彼は儀式を執り行う。ご飯を食べるときは、二人分、用意して、二人分を食べる。そうしていくと、祐希の身体は逞しくなり、魔女と彩夏を護る為に必要な肉体へと変貌していったのだ。祐希は一方的にだが、愛してきた。夢の中で、魔女と交わり、教えを請う。彩夏を陰から護り、助けをだして、支えていた。次第に祐希は彩夏の女らしい性格と身体が嫌いになった。祐希は魔女だけを愛していた。俺が魔女と結ばれて、あきらが彩夏と結ばれたらいいと思っていたのだ。


当然ながら、何も知らない彩夏はそのことを知らない。彩夏が知るのは、それから、二十一年後のことである。彩夏は中学二年生の頃、同じクラスメイトの男子に片思いをしていた。初めは、男子側が、彩夏を見ていて、彩夏は私のことが好きなのか、と勘違いしたのだ。男子が見ていた正体。それは、彩夏の左半身に纏う青いオーラ。科学では説明不可能な、強いて言うのなら、それは、プラズマ。オカルト的な言い方だと、気だ。男子の名前は竜矢。


あきらの家庭環境は複雑だった。異常な程に、彼は三歳までの記憶が存在しない。それは、瀬名あきらが、人造人間の初号機だからである。理化学研究所と永田町の悪魔が産み出した、日本の人型兵器だ。あきらは二ヶ月に一度、教育という名の性的虐待を父から受けた。お前は女神の夫になるから、女を好きになってはいけない。だから、お前をGayにする。と。だから、祐希はGayである。祐希は女を好きになることができなかった。女らしい性格が苦手であり、女を敬遠していた。あきらは女神を信仰していた。八百比丘尼の力を持った、女神。不老不死の女神を。彼は想像力の中で、女神を意識して、崇拝した。父から性的虐待を受ける前のこと。ある日、祐希はクラスメイトの女の子に手紙をだした。いつも気になっています。俺と仲良くしてくれませんか。友達になってください。と。これは、普通の手紙で、明らかに友好関係を築く為にある手紙だ。だが、祐希の父は、この事を知り、激怒した。お前には女神と結婚をして、子孫を残すという役目があるのに、女と関わり合いになろうとしていた。それは罪だ。と、父は手紙を破り、トイレに流した。そして、祐希は性的虐待を受けた。激しくて、痛々しいものだった。そして、祐希は決して、自分が、この方だと思った女以外とは、プライベートでは関わらず、上辺だけの付き合いをしていくと誓ったのだ。祐希は吐く、父から受けた性的虐待の過去を思い出しては、嘔吐を繰り返す。決して消えない記憶。何者かに与えられた宿命の為に、身を犠牲にした。いつか報われると信じて、その日が必ず来ると信じて。祐希は生きる。


「あきら。これを食べろ。魔女の糞と尿だ。」


あきらと呼ばれた少年は戸惑う。糞と尿だ?食べれるわけがない。何を考えているのか、父は。信じられないことを口にしている。


「食べれません。」


「お前に拒否権はない。食え。じゃないと何されるか、わかっているだろ?また、ケツから血を流して泣いても知らんぞ。」


僕は嫌々、それらを口にした。スプーンを使って、チョコレートのような、魔女の糞と呼ばれる、それを口にした。苦味と仄かな甘味が広がる。匂いは香ばしい。まるで、麝香猫の糞から作られたコーヒーの風味で、糞だとは思えなかった。


「これは、何ですか?父。糞ではないですよね。チョコレートの味を薄くしたような食べ物で、糞ではありません」


「違う。糞だ。魔女のな。不老不死の魔女のコピーの糞だ。信じないと思うが、本当だ。尿も飲め、りんごジュースの味だ。」


僕はグラスに入った尿を飲む。美味しい。りんごジュースに甘味を薄くして、少しだけ、塩っぱい。そんな味。今まで味わったことのない不思議な神秘的な味だ。


「どうだ、美味いだろ。これでお前も魔女の親縁となった。感謝しろ。」


父は僕の右肩に手を置き、そう言った。


あきらは知らされていなかった。魔女の力を手に入れる代償として、麻薬のような、中毒性があり、強力な依存性があることを。それは世界中の薬物の中でも、類を見ない程の依存性のあるものだと。父はほくそ笑む、計画の第一段階が成功したと。そして、計画は第二段階に進んだ。魔女の力を封印する器として、適合させる計画だ。父は、あきらに祐希という名を与えた。あきらの父は、二つの名前を与えた。プライベート用と訓練用の名前だ。機密情報として、外に情報が漏れないように、そうしたのだ。苦しくても、耐えろ。お前には試練であるが、未来は明るい。耐えろ。お前は人間ではなく、兵器だということを自覚しろ。お前は余計な感情はいらない。ただ、魔女の為に生きろ。魔女の為の魔力炉。それがお前なのだから。わかったか。あきらは父を恐れながらも、性的虐待を行う以外、完璧な父を尊敬していた。そして、もう一つ、祐希には役割があった。あきらが現実から逃げる為の非常口。それが瀬名祐希に成ることであり、あきらは人格を切り替えることができ、祐希を支配している。


父は、僕に愛情を注がなかった。必要最低限の食生活と運動と勉強。そして、食べ物は全て魔女の排出物。僕の餌はそれだった。友達もいない。必要ないからと言われたから。同性の友達でさえもいることが許されなかった。仲良くしても、すぐに父が介入してきて、縁を切られた。必要はない。ただその一言だけ。酷いとは思っていた。でも仕方がなかった。父は頭が良く、運動神経も抜群で、勉強の教え方もわかりやすかった。話し方も、人付き合いも全て父から教わった。母がいなくても、大丈夫だった。片親であることにコンプレックスを抱くことはなかった。ただ、僕は魔女様と彩夏を追いかけた。求めた。歩いた。夢幻の中にいるみたいで。


「おら、ケツの締まりが悪いぞ。」


父に掘られて、性的な興奮を感じていた僕は、父の行為が性的虐待になるとは思わなかった。寧ろ、喜びだった。いつか、魔女様の為になるのなら、この身など、どうでもいい。僕の身体は魔女様の為にあるのだから。と、あきらは胸に刻んでいた。あきらが生まれた日には、バースデーケーキに、魔女の排出物で作られたチョコレートケーキを食べた。あきらには、それが、物凄く幸せだった。毎日が誕生日ならいいと思っている。只ひたすらに、愛していた。あきらは魔女から発信される膨大な情報量と魔女の思考回路に耐えていた。でも、耐えきれない時もあった。その度に発狂を繰り返して、髪の毛を掻き毟り、両手の爪には、血が濡れて、手の甲を引っ掻いていた。もうやめて、もうやめて、何度も思った。でも、魔女は試練を与え続けた。膨大な知識と魔女の愚痴の複雑怪奇な思考回路。あきらは何度も自殺未遂をした。首つり自殺をしたり、飛び降り自殺をしたり、入水自殺をしたり、等など、五回はした。自殺を失敗する度に、あきらは祐希に成った。だから、祐希は日本の政府。暗部を憎んだ。八咫烏という、日本の政府の闇の組織であり、暗部。暗殺の組織。いつか、と、祐希は思う。魔女様と結ばれたら、八咫烏を壊す。と、俺の人生をめちゃくちゃにした。八咫烏をぶち壊すと。祐希は秘密裏に誓った。


「必ずです。必ず貴方を見つけだし、貴方を私の妻にします。転生者となり、私の妻となるのです。というか、そう定めました。直虎様が。」

「君は信用に値する人だ。だから、信用ができる。次はまた、井伊直虎のように、女として、転生か。面白そう。女の身体に中身は男って最高。勝さん。ありがとう。協力してくれて。そのやり方なら、永倉さんは納得するよ。絶対にね。」

「ええ、私は未来の為、人類の存続の為、生きているので、その為には、必ず、貴方の力が必要なわけです。こちらこそ協力してくださって、ありがとうございます。沖田総司の転生者となれば、益々、次の転生先の身体が丈夫になるので。助かるのです。心配なさらず、貴方が大切だと思う方々は大事にさせてもらいます。なので、お気になさらずにいてください。」


時代は幕末の動乱に遡る。


永倉さん、キスしよ。

始まりはそこからだった。俺は男に興味がなかった。同性愛なんてものは、穢らわしくて、気持ち悪かった。みんな沖田が悪い。オレをホモにさせて、ゲイにした張本人。なんで、オレは受け止めた?冗談として、終わらせなかった?後悔ばかりだ。沖田が、あんな形で死ぬとは、オレは思いたくなかったし、自分のやったことが許せない。オレはオレが大嫌いになった。好きな男がいない世界にいる意味はあるか?死にたいと何度も思った。あの世で沖田と酒盛りして、掘られたい。強い強い沖田にケツ掘られて、中出しされてイきたい。オレは何度、そう思ったことか。


「沖田、そこで何やってる?仕事は終わったよな?帰れよ。」

「永倉さん。頼みがある。僕を抱いて。キスして。知ってる?キス。口づけを交わすって意味。」

「は、ふざけんな。オレとお前は男だ。オレはホモじゃないのたが!」

「違う。永倉さん。ホモだよ。気づいていないだけ。証拠にさ、どうして僕を見ていたら、永倉さんのア・ソ・コは勃起しているの?ほら。」


沖田はオレのチンコを握る。小さくて嫌なチンコ。そのチンコは硬くなっていた。熱を帯びて、硬い。オレが沖田を見るといつもこうだ。


「触んな。気持ち悪い。これは、偶然だ。お前のせいでたって、勃起してるんじゃねぇ。馬鹿野郎。」

「嘘はよくない。だって、いつもそうだよね。僕言わなかっただけで知ってる。黙っていただけ。永倉さんが、僕のことずっと好きで掘られたいって思ってたの、僕知ってる。なんでかは永倉さんは信じないから言わない。原田さんや斎藤さんには言ってるけど。」

「あっ?ケンカ売ってるんのか。やるぞ、お前。」


オレは沖田の胸ぐらを掴み地面へと押し倒した。で、オレは沖田の唇を強引に奪った。まんまと、オレは沖田の策に嵌った。自分が情けない。


「ほら、やっぱり。」

沖田は綺麗な顔で笑いやがった。その顔が愛おしくて、オレは下着を脱ぎ、沖田の褌を脱がした。そして、イチモツを撫で、しゃぶった。沖田が射精するまで、しゃぶった。

「永倉さんって、素直じゃないよね。この間もさ、僕は全力を出していなかったけど、僕は負けた。でもさ、永倉さん。悔しそうにしてた。素直じゃないというか。薄々知っていた。か。」

「うるさい。黙れ。講釈たれるお前。オレ、お前のそういうところ嫌い。」

オレは沖田のケツに手を入れる。指は何本入るか。手始めに二本入れた。抜き差しをしてやる。

「うん。気持ちいいよ。永倉さん。好き。」

沖田の息が荒くなる。オレはそんな沖田を見て、興奮して我慢汁を出して、射精をしていた。恋敵の勝海舟のツラを思い出しながら。

「お前、勝とどこまでやった?やったか。入れたか、それとも、掘られたか。答えろ沖田。」

沖田には珍しく、沈黙が続いた。なんでだ。なんで黙る沖田。

「あの人さ、初対面で惚れたの。永倉さんの次に好きになった。永倉さんは二番目に好き。カツさんは、話してくれたんだ。西陣の飲み屋で、偶然、知り合って。全ての答えを教えてくれて、そして、僕ね、キスした。で、その晩。僕はカツさんと寝た。一夜を共にした。黙っていてごめん。永倉さん。」

オレは嫉妬で狂いそうになる。激昂し、沖田の首を両手で絞めた。で、無理矢理、沖田の唇の中に舌を入れて、弄った。暫くして、沖田は絶命した。オレは沖田を殺めた。この手で、最愛の沖田を。一ヶ月前、沖田に、殺されるなら永倉さんに、そして、僕は永倉さんに食べられて、一つになり、糞になり、肥料となり、次の世代へと、渡る。命のバトンをリレーをする。わけのわからないことを抜かしていた。ふざけんな。なんで、オレが。なんで。な、んで。


地面には雪が降り落ちた。一粒の雪は、やがて、時間とともに、積み重なり、京の壬生は雪原へと変えた。オレの涙は雪の中に消えて一つになった。そして、オレは沖田総司を食べた。全身を。食べたら死ぬとは知っていた。死にたかった。でも、死ねなかった。悔しかった。全て、勝海舟と沖田総司の思惑通りに進んで。黒幕の勝海舟は逃げやがった。来世があるなら、問い詰めてやる。答えを、沖田総司を取り返してやる。必ず、復讐だ。雪の中、オレは夢を見た。沖田総司が女となり、勝海舟と夫婦になって、オレは二人のガキになっていた。で、大事に育てられた。笑っていた。沖田と勝。そして、ガキとオレで。そんな景色が幸せで幸福だった。オレは夢と現で泣いた。全ての涙を流した。そんな冬の日の一日が終わった。朝日は昇った。いつもと変わらずに朝日は来る。嫌でもな。オレは生きてやると誓った。夢で見た光景を現実になれるように生きてやると。そして、オレは夢を現実にした。で、近未来。二〇二五年が来た。変革の年。革命の年だ。この続きはまた、話すことにしよう。さようなら沖田総司。オレの最愛。


「次はね、沖田君。君が私に伝える番だ。教えるのだよ。私に。いいかい。」


「はい。勝先生。必ず守ります。」


「いい子だ。それでいい。さあ、飲みなさい、私の精子を、身体の中に、召し上がれ。」


そうして、バトンは繋がれた。


「負けは、負けだから、何でも言うこと聞くよね。沖田?」


僕は惨めにも負けてしまった。反則技を使わず、正々堂々とやったからだ。どっちでもよかった。勝っても負けても。もう、自棄糞だ。


「沖田君、悔しそう。泣いてる?ざまあみろ。」


永倉は僕の頬を舐めた。涙なんて流してないのに、それなのに、何故か、僕は涙がでたような、悔しいのだろう。


「沖田はさ、素直じゃないけど、身体は正直。だって、こんなに射精してる。下着、真っ白。汚れたな。」


僕は永倉の激しい手コキにより、射精した。永倉は僕を愛し過ぎている。それがいいのだけど。


「沖田、愛してる。ちゅう。」


まるで、子どもみたいだな永倉は、僕の前では五歳児か。


「ん。」


僕の唇は永倉の口で閉ざされた。永倉は僕の口の中に舌を入れる。絡まる舌が。唾液が混ざり合う。ちゅぱちゅぱと、やらしい音が響く。僕はまた、興奮して射精した。永倉の胸に精子が飛んだ。


「ごめん。新八。ついた。」

「いい。ご褒美。」


永倉は嘲笑う。変な奴。男なのに男とやるのが、おかしい。僕も永倉と同じで、男しか抱きたくないと思っている。だから、お相子だ。


二人は交わり続ける。誰も知らない西陣の町の中で。


永倉新八は思い馳せる。沖田総司と過ごした日々を、青春を、恋慕を、爻わりを、愛し合った日々を。それはもう戻らない。だから、永倉は剣を振るう。かつて、沖田総司が愛刀していた加州清光を常に身につけて、寝るときも、加州清光を沖田総司だと思うようにして、添い寝をしていた。沖田。愛していると、加州清光に話しかけて、眠りに落ちる。永倉は願う。沖田総司の転生者と再び会うことを。そして、結ばれることを願う。愛し合い、爻わり、そして、剣を交えて、どちらが強いかを試す。それが永倉新八の願いだ。


飢餓の時代、私とワイフ、シェルの三人は、日本の江戸にいました。何も食べるものがない。そんな日々、食べ物の確保に大変でした。私たちは、日本人に魔女の排出物を日本人に食べさせようと企てました。丁度、若い女が道端に倒れようと、ふらふら歩いています。で、私は声をかけました。腹が減っていたのだろう。と。そして、私は肉を差し出しました。これは魔女の脹ら脛の筋肉の部位でございます。はい。で、女はすぐにがっつきました。肉を、私のワイフの肉を。生肉を貪るように食べました。掌の大きさの肉を女は十秒で食べ、私に感謝の言葉を繰り返していて、少し私は罪悪感がありました。だって、魔女の脹ら脛の肉を『普通の人』が食べたら、不老不死になってしまうのですから。女は、軈て、自分が怖くなりました。いつまで経っても、何十年経っても、老けない。風邪も引かない。病気にならない。自分が。そして、女は出家、福井の山奥の村で隠居をすることにしたのです。名を八百比丘尼と名乗り、現代、二〇二五年の今でも、何処かで生きています。


時代を元に戻す。西暦は二〇二五年。日本の京都、西陣の地に。彩夏は歩いていた。買い物をする途中、赤信号を見て、向かって左側に、その人はいた。昔の職場の同僚であった。先輩の男性社員。久貝さんに。彩夏は再会した。目が合った。久貝さんと。彼は、白い野球帽に、白い半袖のシャツ、黒縁の眼鏡、咥えタバコ、そして、私の眼を見つめた。何かを訴えかけるように、俺だよ。と。お前に逢いに来た。◯課の久貝だよ。クローバーラインのな。久貝だ。と。私は驚きました。何処かで見た顔。懐かしい顔だなと、知ってはいる。あの顔。あ、そうだ。十二年前に働いていていた時の、自動車の会社の、◯工場で働いていた。あの人じゃないかと。そう。あの時、スピーチの時の発表、私の前で発表した。久貝さん。と。私は四六時中、彼のことが気になり、スマホで、久貝さんの名字を検索していた。好きになった。とても凄く。会いたかった。声が聞きたかった久貝さんの。声が、心が純粋な声が。私はどうやったら、彼に会えるか、考えた。でも、考えても、会えない。どうしたらいい?自問自答した。もどかしい。そんな日々が過ぎる。


一方、祐希は狂っていた。過去のトラウマから逃げられずに、苦しみ喘いでいた。助けてください、助けてください、魔女様。俺を苦しみから解放して、辛い記憶を消してください。お願いします。打たれる、掘られる、虐められる、頭から水がかけられて、真冬の中で、突っ立っている。その瞳は死んでいた。人格が交代した。あきらは祐希になり、自らの尻の中に右手の中指を入れて自慰をする。前立腺を刺激する技術は父から教わった。中指を素早く抜き差しをして、刺激を与える。祐希は昇天した。あきらが救われる手段はこれしかなかった。人格の切り替えによる。自殺の防止と魔女の情報量と思考回路の連絡網を切断するにはこれしかない。父はあきらと祐希に質の良い、美味しい食事を与えた。射撃、戦闘、絵画、作曲の技術を丁寧に教え込んだ。あきらと祐希は自由時間がなかった。怠慢な行為をすると、父から性教育を受けた。尻にきゅうりを入れられ、その糞まみれのきゅうりを夕食として、無理矢理、食べさせた。勿論、祐希は吐き出した。父はそれを見て、激怒。祐希は全裸にされて、独房に閉じ込められ、寒い一日を過ごすことになった。そこに救いはなかった。ただ一つ。祐希とあきらには、魔女と彩夏という、二つの希望が残っていた。祐希はあきらを強く憎んでいた。殺してやろうと、五回の自殺に、あきらが失敗した後、全ての嫌な記憶。性的虐待の記憶を祐希に押し付けて、あきらは逃げたからだ。だから、祐希はあきらを憎んだ。この憎しみは消えなかった。


名古屋大学の地下の研究室にそれはあった。培養液の中に、人の形をした人造人間が丸くなりながら、生きていた。研究者は言う。実験は成功。これから、試験体を起動させる。コードネームはD。吸血鬼と悪魔を狩る者。世界と日本の危機に立ち向かう勇者。そして、救世主。魔女を善性にして、世界の軌道を元に戻す。世界にとって、絶対に必要不可欠な存在。日本の切り札であり、最終兵器。佐賀に封印した要石。コードネームM.Dは危険過ぎた。アレは秘密兵器だ。何も打つ手がなくなったときの緊急非常時の秘密兵器。大丈夫だ、Dの他に、切り札は用意してある。コードネームTがいる。西日本に用意していて、緊急時、魔女はTを操り、不安要素を打ち砕く。そして、世界を明るくさせ、平和を取り戻す。必ずだ。


祐希は激しく自慰をしていた。トラウマを消す為である。尻の穴に注射器を挿入して、注射器の中には魔女の尿を入れた。押すと尻の中に、魔女の尿が入り、祐希は激しく興奮状態に、トランス状態になる。そして、祐希はきゅうりを持ち出し、ダディ、ダディと呟きながら、きゅうりを尻に出し入れしていた。会いたい、話したい、キスをしたい。早く外に出て、貴女に触れたい、抱きしめたい、早く、早く。まだ。出て、早く。外に、俺も貴女と一緒に歩く。早く、まだか。


吸血鬼を倒すにはどうしたらいいか、わかる人?手を挙げて。ここは学校の教室。使われていない開かずの教室。誰もいるはずのない教室に、男はいた。細身で、背は平均的な高さ。薄いフレームの眼鏡を掛けた、年齢不詳の謎に満ちた男。男は教壇に手を置き、椅子に座っていた中肉中背の男に問い掛ける。


「先生、わかりません。教えて。」

「あのね、少しは考えよう。黒竜。えーとだ。君の弱い所、短所はね、考えないこと。君も久貝さんと同じく脳筋なタイプ。駄目だね。改善をしないと。まあ、いいや。君に教えます。特別授業です。」

「はい。先生。努力します。」

「そうじゃないと先生は困る。で、話を戻す。日本酒の鬼ころしというお酒があります。これを君に呑んでもらいます。必ず、毎日呑むこと。これは絶対。少量でいいから。そうだね。百mlは呑んで欲しい。これ、先生と君の約束ね。絶対に守ること。いいね。黒竜。」

「はい。俺は三七歳だから、酒が呑めます。呑みます。絶対。」

「よろしい。では、解散。」


黒竜、竜矢の中の夢はそこで終わった。


父の罵倒が再生される。お前には友情は要らない、愛情も要らない。必要なのは献身だけだ。魔女への奉仕と献身。お前にはそれしか必要ない。それしかできないように調教しているが、お前はそれで満足だろ?美味い飯は食わせている。質の良い服も着させている。生活に苦労しないように生かしている。あと、何か不満があるか。ないだろ。それが普通だ。文句があるなら死ねばいい。俺はお前に愛情を持って接したことなど一度もない。下手に魔女以外の人間に情を持つことを禁止しているからな。お前、ガキの頃、ペットいただろ。野良犬を抱えて飼いたいと言ったよな。その犬、どうなったか知ってるか?父は僕の方に身を屈めて尋ねる。その質問は凄く怖くて聞きたくなかった。耳を塞ぐ僕を、父の両手が許さなかった。聞け、野良犬な、お前、食べたんだぞ。美味そうに食ったよな。お父さん、このお肉、柔らかくて美味しいねって。確か誕生日だよな。十二月四日の。臭みをとるのに大変だったんだぞ。何時間、薬草と犬肉を煮込んだことか。大変だったなあ。僕は怒り狂い、父を殴ろうとした。でも、父の方が先に反応した。右手の拳を左手で受け止めて、父の右拳が、僕の頬に当たり、倒れた。そこから記憶がない。悔しかった。目が覚めて、僕は父を憎しみ、殺してやろうと考え、計画を立てたが、それさえも、父は知っていた。お前の考えていることな、俺は知ってる。俺を殺そうと、毒草で毒殺、または、俺が寝ている時を見計らい、絞殺。できないがな。お前には。残念なことに。僕は項垂れる。赦せなかった。自分の弱さに、強くなりたかった。父の支配から逃げたかった。誰よりも強くなり、父を殺せる力が欲しい。そうだな。魔女と爻わりを持てば、お前は俺を殺せる。が、魔女はどう思うかな。父さんは知らない。父さん、僕は貴方を赦さない。絶対に、謝罪させる。いつか、その時がくる。覚悟しろ、この冷血漢。父は見下すように、嘲笑う。それは、あきらではなく、祐希になる前の人格。瀬名祐希が羽化する前の蛹であった。


再び時代は巻き戻る。時代は中世のイギリス、ロンドン。一人の女が教会の椅子に座っていた。今日は面接だ。初めてのメンバーのね。


「魔術に興味があるのよね?」

「ええ、特に黒魔術に。」

「そう。白じゃない、黒ねぇ。闇が好きなんだ。貴方は。」

「はい。白は明るいから、嫌です。黒色は落ち着く。」

「そうだね。黒はさ、陰気。闇と夜。日陰。沈静化を司る。白は、陽気。光と朝と昼。日向。高揚を司るわけで、君は黒がいいと。それなら、この黄金の夜明け団は、君にぴったりだ。ようこそ、我が団へ、歓迎しよう、眼鏡の好青年。名前は?」

「私は町医者をやっています。ドクター・キリコと言います。外科医を。毎日、患者を執刀して、生計を立てています。入団の面接は合格なのですか。」

「イエス。歓迎する。君が第二位とする。我が黄金の夜明け団の第二位。キリコ、君には私の右腕となって、組織の経営者となって動いて欲しい。生憎、私は経済に疎いから、君のような外科医は有能。きっと、経営もできるだろう。任せたよ。ドクター・キリコ。」


二〇〇二年、五月。彩夏は黒魔術に興味を持つ。クラスの中で浮いていたことが悩みだった。それを解決する為に、彩夏は黒魔術を学ぼうとした。右京区の西院のサン書房。そこの一階に黒魔術の本があった。彩夏は迷わず、手に取った。レジに進み買った。家に帰って、彩夏は一通り熟読した。そして、実践もした。トグラスの呪符という、黒魔術だ。それは、怒りを鎮める効果がある。で、彩夏は試した。父に試したのだ。父が怒ったとき、彩夏は父の留守の間、トグラスの呪符を作った。そして、祈った。怒りが鎮まるように、と。そうすると、父の怒りは静かになり、彩夏に対して優しくなった。彩夏は確信した。黒魔術は、オカルトはある。実在したと。


同じ頃、祐希は父からの性的虐待のトラウマに悩まされながら、母性を求めた。祐希は魔女と彩夏に母の姿を重ねて、二人、母がいると信じるようになる。祐希は歩く、夜道の東京の街を、魔女の姿を追って、歩く。祐希はそれしかできなかった。彩夏は確実に守れる。俺は彩夏を必要としないが、あきらには必要だ。あきらが嫌いだが、理性的な会話が必要な時、あきらは絶対にいるから。祐希は仕方がなく、嫌々、あきらを認めていた。ふと祐希は思う、彩夏と魔女は同一人物なのではと。そうしたら、合点がいく。魔女の排出物は彩夏のものであるのなら、それなら、捜す必要もない。しかし、父は決して魔女の居所を教えなかった。その理由は教えてくれなかった。ただ祐希は、夢遊病者のように歩いた。東京のネオン街を。歩く。


二〇二五年、十一月。彩夏は夢想する。私は犯されたかった。凌辱されたかった。穢されたい。私のことが好きな人たちに、廻されたい。正常位で犯され、バックで掘られて、感じて、気持ちよくなりたい。私はAVを観ていない。禁欲の日々。妄想をオカズにして、自慰を繰り返す。そんな日々。まるで、発情期の獣。そう、私は獣だ。私の妄想は、決して、妄想ではなく、本当の想いを受け取っているのだ。そして、それをオカズにしている。とんだ変態だ。今、私は二人の男に犯されている。二人とも大柄で筋肉質。一人は、背後にいて、バックで突かれている。そして、両腕を固定されで、身動きがとれない。その様子を受け取って、私は興奮する。バックの男は、私の耳を舐める。美味そうに、丁寧に舐め回す。甘噛み。正常位の男は、私に愛の言葉を囁き続ける。愛の言霊は私の精神の癒し。私は至福の中にいて、幸せの絶頂にいる。私の性欲は枯れない。常に絶倫。止まらないのだ、性欲が。愛の行進は続く、永遠に。


同じ頃、祐希はフラッシュバックで苦しんでいた。痛い、痛い、やめて、許して、お願いします。何度、叫んだことだろう。父は俺を赦さなかった。性教育と言って、虐待を繰り返した。今はもう、やり返す気力さえ、湧かない。その代わり、祐希の願望が果たされようとしていた。祐希はテレビを通して、彩夏に祐希の姿を見つけだした。そして、彩夏は祐希に一目惚れをした。なにか気になる、色気のある、素敵な男性。彩夏はそう思った。彩夏は祐希を愛するようになり、祐希のいる東京へと新幹線で行った。祐希に会えるような気がして、祐希の傍にいたくて。彩夏は東京の銀座のホテルに泊まり、祐希を思いながら眠った。数日後、彩夏は京都に戻り、YouTubeのラジオを聴いた。祐希の声を聴く為に。そして、彩夏は驚愕した。自分しか知らない単語を祐希は知っていた。そのことを彩夏はラジオで知った。彩夏は確信した。テレパシーはあると。超能力は実在した。また、数日が経ち、彩夏は繁華街を歩いていた。祐希に似た人が私を見た。まさか、と、彩夏は思う。祐希と遭ったのか。


イク、イク、イク、僕は叫ぶ。父は聴いていない。聴こうともしない。誰も僕の叫びは聴かない。届かない。どうして、何で、僕は、報われるの。父さんの言う通り、いつか、魔女様の夫になるの。いや、ならないといけない。僕は魔女様の、旦那で、夫で、伴侶だ。魔女様は僕だけのものだ。誰にも奪わせない。絶対に。


自分の息子を掘るというのは嫌なものだ。仮にも息子だ。DNAは同じ。私の遺伝子と同じものを入れたのだから。息子に何と思われようがいい。冷血漢、心が無い。実際、そうだからしょうがない。息子に殺されてもいい。私の悲願が叶うのならば、あの御方が復活されるのなら、私は手段を選ばない。罪に問われて、牢屋に入れられ、尋問されても構わない。もう一度、あの御方に会えるのならば、再現できるのであれば、それで、いい。


寿限無君?君は凄いことを考えたね。君の息子を生け贄にするとはね。寿限無。君はさ、サイコパスってやつだよ。例え、クドラクから指示されたとしてもね。クドラクの言うことなんか無視をしたらよかったのに、そんなに君は私に会いたかったわけか。君も未練がましいな。全くモテる女は辛いや。


「そうです。私は感情を捨てました。貴女を復活させる為には、これしかなかったのです。非情な心を持たないとできなかったことなので、私は感情を捨てました。こうして、貴女が創ったシステムの中で、会話ができることを喜んでいます。喜ぶ感情だけは残しました。貴女の為に。」


「寿限無君。君の息子は私が大切にする。保証する。で、孫の顔も君に見せる。必ずね。楽しみにしてなよ。寿限無君。」


「はい。魔女様。」


私には後悔がなかった。


二〇二五年の五月の頃。彩夏と久貝が再会したことから、流れが変わった。世界の流れが、いや、宇宙規模で変化した。久貝は右の首元に黒子がある。黒子の位置は沖田総司が永倉新八の身体にキスをしていた場所だ。その意味は運命を司る者だ。彩夏を中心にして、運命を簡単に変えたのだ。久貝の目的は彩夏とセックスフレンドになることだった。彼は種無し。だから、子どもができない。久貝は彩夏の子どもが、沖田総司の生まれ変わりである、彩夏の子どもが欲しかった。ても、できない。何故か。それは、前世で久貝、永倉新八が沖田総司を食べてしまったからである。永倉新八は巨大な力を手に入れた。その対価は、来世での自分、久貝が沖田総司の転生者、彩夏との間に子どもを授かることができない。という。定め、だ。永倉新八は死去する前に、勝海舟と会合をしていた。永倉は全てを勝海舟から聞いた。宇宙の全てを。理を。そして、永倉は死を恐れなくなった。老衰で、この世を去った。沖田総司の転生者と再び逢えることを、切に願いながら。


学校の教室。ここは竜矢の夢の中、現実の竜矢は覚えていないが、無意識の竜矢であるクー・フーリンは覚えていた。この教室の授業の内容を。ではね。理の真理について、教える。右道にあるのは宇宙の力。宇道だ。そのエネルギーは暗黒の宇宙の力、星々の力の集大成だ。で、左道。左道とは、魔力のことを指す。魔術とオカルト、神話、伝説、錬金術などの学問から得られる力だ。右道は選ばれた者しか習得できないが、左道は学習すれば、誰でも習得は可能だ。私ができることは、君に左道の魔力を授けることだ。そういうことわけ。俺は納得する。俺にだって魔法が使えるのだ。と。そして、俺は先生の授業を聴いたのだった。


二〇一三年の七月。私は捕まってしまった。油断をした。つい、彩夏のことが気になってしまって、隙ができた。何かの薬だろうか、背後から薬物を染み込ませた布を口に当てられ、私は昏睡した。薬物に耐性のある私を眠らせる程の危険な薬。それは何だ?そんな事を考えている間に、私は深い眠りに落ちた。私は眠らない。が、休眠状態はある。それは、ほんの数分の間でしかない。その間に犯人は私を持ち上げ、何処かの建物に連れ込み、私を監禁し、拷問をした。お前は、何者だ。スパイだろ。中国か、ロシアか、アメリカか、そのどれかだ。日本よお、スパイ天国なわけ、お前みたいな奴を拷問する為に、八咫烏はあるわけでよお。さて、お前はどう処刑してやるかなあ。見たところ、何も吐かないだろ、お前は。完成されたスパイだ。決して口を割らないスパイ。そんなお前には、どんな処刑が相応しいか。そうだな、まずは、定番の鞭打ちからといこうや。男は中肉中背、顔は黒い覆面を被っていて、見えない。怖かった。さて、お前、いい身体してんじゃん。食べたい、舐めたい、旨そう。でも、その前になあ、お仕置きしてやらねえとなあっ!私は鞭を打たれた。赤い蚯蚓腫れができて、そこから、鮮血が溢れ落ちた。ポタポタと、血が零れる。痛いか、なら、もっと痛くしてやるわ!ほら、塩だ。滲みるぞ。男は私の傷だらけの胸に塩を揉み込む。私は叫んだ。痛い、痛いと、喚いた。誰も助けねーよ。残念でした。スパイ野郎!次はケツの穴に、バイブをぶち込んでやるわ。ほら、どうだ!気持ちいいか、お前にとってはご褒美か?なんだ、お前マゾヒストかよ。つまんねえなあ。私は何も反応しなかった。それが正解だと思ったからだ。無視かよ。クソがよ!男は舌打ちをして、バケツの水を私にかけた。これでも喰らえや、スタンガンをよ!私はまた、叫ぶ。狂いそうなくらい、痛くて、痺れた。私は藻掻いた。でも、無意味だった。男は大声で嗤った。ざまあみろ、敵国のスパイが!懲りたか!あっ?!私は頷く。わかりゃいいんだよ、スパイがよっ!男は私の腹に蹴りをかました。身体は麻痺で何も感じない私には、意味がなかった。そして、二十四時間経った。私は東京の巣鴨駅のホームにいた。監禁される前の所持金と持ち物は全て揃っていた。まるで、悪夢だった。そして、私はその男、シンに復讐をする為に日本の東京に潜伏することにした。もう一つの本当の目的も同時に進行しながら。ひっそりと生きている。


二〇一九年の一月。私はノートパソコンを持って、京都市内を歩いていた。目的は小説の完成。私はネタ集めの為に、歩いた。散歩はアイデアを産み出す有意義な趣味だ。私は西院のマクドナルドでネタ集めに励んでいた。声が聴こえる。頭の中で聴こえる声が。その声は怨嗟の声。『許せない。なんで、アイツは許されて、俺は許されないのか。』といった恨み節。私はその声をノートパソコンに纏める。声の入手。それが当時のシバタアヤカの目的だった。ホットコーヒーとハンバーガーを食べ終え、ホテルへと向かった。そして、次の日はサイゼリヤに向かった。同じ西院のサイゼリヤ。そこから聴こえた声は冷静だった。まるで、アンドロイドのように冷静で、私に話しかける。『たまにはワインを呑むのもいいですよ。』と言う。私はその声を『話』と名付けた。九月三日生まれのドラえもんと同じ誕生日。日本の未来を象徴する人物、それは、イニシャルO・Kだ。


私は幻視をしていた。それは、近い未来のこと。私は白色のレインコートを着て、赤い血に染まっていた。そう、それは、『紅』。私は女の首を刎ねた。女はタカイチという悪い女。A級戦犯の女だ。欲に溺れた憐れな女。その女の最期の後始末は、私がやることになった。京都の御所、夜中の二時十四分。女は正座をしている。私は女の首を刎ねた。辺りに鮮血が飛ぶ。私は、返り血を浴びた。そして、傍にいた男に新しい服を渡される。『貴女は必殺仕事人みたいだ。』と、時代劇の俳優のようだと言われた。そして、私は皮肉にも成った。女は予言したのだ。運命は残酷なものである。処刑人と女は同じ職場で、昔、働いていた。その時に言ったのだ。これは悲劇。避けられない運命。


二〇二五年の十一月。アラカワと呼ばれる青年が、呼ばれた。次元の魔女に。彼はチェックをしていた。魔女の記録を、で、書かれたのだ。魔女はアラカワを記した。そして、魔女は一つの解を書き記した。インターネットという、電子の海に記録として残した。


キリコは黄昏る。魔女に恋をしていた。実らない恋。それでも、キリコは愛した。人妻の魔女を。


「キリコ。こんな所で、黄昏てさ、風邪引くよ。」

「いえ、私は医者です。絶対に風邪を引かない方法を知っているので、大丈夫です。ところで、エヴァ。貴女は月が好きですか?私は毎晩、月を観ます。貴女と重ねるのです。月も貴女も美しい。」

「やだなあ、褒めても何もでないよ。君は褒めるのが上手だね。キリコ。そうだね。私も月が好きだ。夜に歩いたら、空を見上げる。月を探して。新月の時は落ち込むな。隠れてるから。私は、やっぱり満月が好き。だって、輝きに満ち溢れていて、綺麗で、癒されるから。」

「私は三日月ですね。形が好きです。ナイフのように鋭く見えるのが美しくて。」

「成る程なあ、わかるよ。」


私と魔女は同じ月を見上げた。このまま、時が止まり、魔女と二人きりになればいいのに、と思っていた。魔女はどう思っているのか。それは知る由もない。でも、いい。わからない方がいい。


クスモトと呼ばれる者は日本の治安を護っていた。この者は、クルースニク。クドラクの魔女への愛慕による狂気を止めるブレーキだ。常に、魔女とクドラクの転生者の動きを監視をしていた。何かあったときの為に、クスモトは番人として、役割を果たしていた。クスモトの部下として、ヤマダがいた。ヤマダの役割は、クスモトの補佐であり、補佐官。クスモトが怪我や、クドラクに敗北をした時の為の保険である。魔女の転生者が狂った時、転生者はヤマダの故郷へと向かった。保護を求めたのだ。そして、その策は実る。ヤマダは勿論、転生者を追跡していたので、勘づいたのだ。転生者の身に、危機があると。ヤマダは動いた。そして、女装をして、滋賀の地で、転生者を保護したのである。


日本の中部地方、愛知の地で、竜の胎動が起こる。一九八七年の十二月に、竜が生まれた。名古屋大学の地下一階の開かずの研究室で生まれたのだ。透明なカプセルの中で、育てられた竜は、人の形として、生まれた。一年後の、一九八八年に竜の守護者として、転生した。魔女の転生者は、兄の存在を知られていない。だが、運命に導かれて、転生者は愛知にある熱田神宮に参拝した。熱田の神は、転生者を兄の存在と繋がるように、結びつけた。九年後、転生者は兄の声を聴き、覚醒へと目覚める。それは、覚醒への芽生えだった。運命というよりも、宿命。その言葉が相応しい。そして、転生者は修行の末、竜の姫と成った。


あきら、祐希。貴方たちは、二人で一人。私は二人とも愛します。これは、誓いです。絶対に守ります。


私は、最初に話し相手を造りました。友人のような存在です。そして、一番弟子でもある。で、次に私は、夫婦というものを造りました。夫婦は一生を添い遂げるパートナーです。決して裏切ってはいけません。裏切りとは、本気の浮気のことです。誤解しないでね。アレイスター・クロウリー。愛しています。何度、転生を重ねても、私は貴方を見つけだし、愛します。少しの浮気は見逃して、お願い。苛ついたのなら、お仕置きをしてもいいから、むしろ、私にとったら、ご褒美で、嬉しいの。大好きなアレイスター・クロウリー。愛を込めて。


アレイスター・クロウリーとクドラクの違い。クロウリーは眼鏡をかけていて、クドラクは裸眼だ。クロウリーは理性の塊で、クドラクは本能で生きる男。一九七八年に誕生する転生者は、二つの人格を持つことになる。知的なクロウリーの人格と、狂気的なクドラクの人格の二つを。あきらは、知と理を。祐希は、愚と情を。それぞれ所持をしている。


「いいか、書き留めろ。それがお前の仕事だ。」

シェンが私に命令を出す。私はタイプライターだ。無尽蔵のスタミナ機能付きの、人型タイプライター。名前はない。コードネームはゼロワン。ゼロ、無。と、ワン、有。を交互に著述していく、タイプライターだ。


ああ、クドラク。狂気のクドラクは死んだ。私の小説のせいで、死んだ。瀬名祐希は死んだ。狂気とともに。私は、クドラクのようなサディストな愛慕が恋しくて、思われることが嬉しくて、こんな私を性的に見てくれることが喜びで、どうして私は殺したのか、アレイスター・クロウリーが生き残る為に、必要だったとしても、私の中の妖艶な部分。クドラク、祐希はいない。肉体としてクドラクは、識友と暮らしているが、でも、私はクドラクのエロティックな想いを感知できなくなった。それが、とても悲しくて、哀しくて、悔しくて、口惜しくて。辛い。淋しいよ。アレイスター・クロウリー。瀬名あきら、早く私と会って、お願い。こんなのってないよ。左目から涙が一筋、垂れた。全てスターの思惑通りだった。クドラク、瀬名祐希の弱点。それは知的好奇心。魔女の書いたものは全て目を通していた。祐希が小説を読んだことによって、事実を知ることになる。瀬名祐希は事実という答えに、心が受け止められないのだ。それは、祐希の心が、善なる心の受け皿が無かったから。スターは彩夏でもなく、識友でもなく、識友が用意した『十山天胡』に話しかけた。このままでは、貴女は男にされてしまいます。戸籍も精器も男にね。私はそれが絶対に許さないし、嫌だ。クドラク、瀬名祐希には申し訳ない、悪いとは思うが、協力して欲しい、と。どうか、このまま書き進めて、小説を補修して、仕上げた状態にして欲しいと。だから、私は小説を読み直して、補修したり、付け加えたりした。途中まで、完璧に完成した小説を読んだ瀬名祐希は、書かれていた真実に耐えられなくなり、精神崩壊を起こして、人格は死んだ。そして、瀬名あきらだけが生き残った。それが正しい答えであることは知っている。でも、こんなことって。私はアレイスター・クロウリーを愛していた。しかし、同時に、クドラクのような狂気的な、妖艶でサディスティックな思考回路の中にいることが、とても楽しくて、性的な快楽にも、包まれていて、幸せで。家にいる間、私は四六時中、自慰をしていた。スマートフォンで、小説を執筆している間、それ以外の時間。私は自慰をして、濡れていた。乾かなかったのだ。私の秘部は。貴方も愛しているよ。瀬名祐希。お笑い芸人の◯◯祐希。私の中から、いなくなって、哀しい。どうか、また来て。できないのか、アレイスター・クロウリー。お願いだよ。瀬名祐希は救われないまま、いなくなるって、そんな悲劇、苦しいよ。私はどうしたらいいのだ。自問自答をした。


彩夏の中では、乱交が行われていた。父と息子の親子丼。サンドイッチ。彩夏が真ん中で、挟まれて、セックスをしていた。後ろからは子が、突いて。前からは親が、舐めている。彩夏は快楽の絶頂にいた。逃げられない快楽の中に、閉じ込められたのだ。愛液が溢れて、流れる。それは止まらない。祝福の呪い。二人の父に真の名前を教えることによって、二人は統合した。アレイスター・クロウリーとクドラク。あきらと祐希の人格は統合した。そして、一つと成った。


ゼロワンはシェンの指示通りに、スマートフォンで書き留めた。それは、小説の形をしているが、真実は魔導書である。読んだ者を正気に戻す。魔導書。秘伝の書物。次元の魔女、EVAが書き記した書物。


「それで、いい。彼女の指示通りに動いていれば、間違いはない。」


シェンはベランダから、曇り越しの朝日を見つめた。太陽は雲に隠れているから、目は傷まない。


京都の西陣の地。彩夏は覚醒した。沖田総司から進化して、闘将、アスラへと。加州清光の模造刀を携帯し、公園で素振りをした。木の小枝を切る。アスラは謝罪をした。イトカエデに頭を下げる。朝の八時前のことだった。


闘将アスラ。それは阿修羅が天に挑み、敗北を味わい、復讐に燃えた姿だ。後に、天界の仲間となるが、阿修羅は修行期間に、自らをアスラと呼び、決闘をする際、名乗った。七〇〇勝、一敗。その、一敗は初めから負けが決まっていた。なので、実質、アスラは七〇一勝だ。アスラは戦を好む。血の色を愛し、血吹雪が舞う中、嘲笑った。一対一では、必ず、アスラが勝つ。だが、天は集団。流石に一対百では、アスラは負ける。だから、悔しくて、復讐の機会を伺った。説得をしたのは、弁財天だった。女だが、中性的で優しく、容姿は男に近い。同性愛者であったアスラは、弁財天を気に入り、説得に応じた。そして、アスラは阿修羅へと、名前を戻して、天界の仲間入りを果たしたのだ。


又もや、彩夏は幻視をする。それは大量の人の形をした何か。私は男に真剣を渡され、こう言われた。貴方の役割は、この者たちの最期を手伝うことです。さあ、この剣を手に持って下さい。そして、振るって下さい。救いのない亡者たちに救済を与えて下さい。アスラ。私は頷く、真剣を手に取り、剣を振るう。袈裟斬りを繰り返す。鮮血が飛ぶ、白装束の衣装は血塗れになった。私の顔も紅く染まった。男は私の顔に手を触れ、血を舐めた。そして、キスをする。舌を絡めて、唾液の交換をする。私の秘部は熱くなり、男とセックスをした。地べたの上に寝転がり、激しく全身を動かす。挿れます。と男は言う。いいよ。と私が言った。あそこはきつく締まり、軽く痙攣をしていた。男は歓喜の声で叫ぶ。私は嘲笑う。そう、嘲笑うしかなかった。巨根のそれは、痛かったが、快感へと変わった。私は求めた。男は応じた。一時間くらい、セックスをした。地べたは二人の体液で汚れていた。いや、それよりも、血溜まりができていた。彩夏が斬り殺した生命体の血液だ。赤くて、美しい。生命体は醜い。蜥蜴の姿をした異形の生命体。それは、レプティリアンだ。レプティリアンは、人間になれなかった失敗作。EVAが設計図を描き、アレイスター・クロウリーが創造し、成功したのが、人間。レプティリアンは人間になれなかった出来損ないだ。カプセルの中で、遺伝子のエラーが強く出て、変化したものだ。性格は醜い。人間のように注意をしても、学習能力がない。開き直る、拗ねる、言うことを聞かない。例えるのならば、人間の五歳児だ。精神年齢が五歳で止まっている。アレイスター・クロウリーは嘆いた。どうすればいいか、と。EVAは冷淡に言う。殺せばいいと。スターは苦笑した。貴女が言うのならば、何も言えません。と。そして、レプティリアンはEVAの転生者が始末することになった。貴女は美しい。男は、スターの転生者は彩夏の胸を手で鷲掴みしながら、言う。貴女が好き過ぎて、私は狂った。責任を取って下さい。愛しています。貴女の為なら、なんでもやります。下僕にでもなり、性欲処理として、使い捨てになってもいい。それくらい、貴女が恋しくて、仕方がなくて、どうしようもない。貴女にはわからないでしょ。貴女には欠けている。心が。私はその欠けている心の代わりです。だから、貴女は私が必要なのです。もう逃げられません。男は彩夏の乳首を噛んだ。血がでないようにした。虐めるのは好きだが、愛する人の痛い姿は見たくなかった。男は我儘で、独占欲があり、彩夏を自分のものにしたいと思った。僅かに残る理性がそれを止めていた。食べたいと思っていた。女とは思えない脹脛の筋肉の部位。でも、決して食べてはいけない禁忌である。それに、筋肉を食べたら、アスラの能力が下がる。だから、男は我慢をした。仕方ないと、彩夏の体液を舐めた。ありとあらゆる体液だ。汗と排出物、血液。全てを食べて飲み、吸収した。だから、男は、彩夏と同じく、不老不死である。気持ちよくなりましたか、それとも、もっとやりますか。もっとやって、タイラー。私は気持ちよくなりたいし、長ければ長いほど幸せよ、貴方となら、何時間でもやれるわ。セックスが凄く気持ちいいの。貴方のテクニックがいいからね。そんなことはないです。私はただ奉仕をしているだけの身分で、後は、貴女に金銭的な援助をしているだけ。それだけです。もっと、本当は貴女に奉仕をしたいし、助けたい、貴女の傍にいたい、貴女の一番でありたい。私以外の他の人が、貴女の傍に近寄ることなんて赦せなかった。貴女に説教されるまでは、ずっと私は子どもでした。こんな私を夫にしてくれて、感謝の念しかないのです。いいよ、タイラー。家以外ではさ、貴方のことをタイラーって、呼んでいいんだよね。ええ、そうです。私と貴女は俗世から隔離された存在なので、隠れて生きるのです。名前さえも、偽名を使わなければいけません。思えば、最初に貴女と直接、コンタクトを取ったことを覚えています。Twitterをやっていた頃。二〇一〇年のとき、私は貴女とTwitter上でやり取りをしていました。今だから、話します。落語が好きで、東京住み。そして、貴女と頻繁にTweetのやり取りを交わしていました。覚えていますよね。アカウントの名前も覚えているみたいで、はっきりとはしていないようですが、そうです。それです。貴女、少しだけ私のことを鬱陶しいと思っていましたよね。あれはみんなわざとです。好きな人ほど、いじめたくなるのと同じです。怒っていますか。怒って欲しいのですが、そんなことはないようですね。残念。貴女の怒った姿も子どもみたいで、可愛くて、好きなのに。


上智識友は悔しがっていた。その様子を見て、十山天胡はため息をつく。また、発作が始まったのか、と。


「で、今度は何に苛ついている?兄さん。話だけなら聞くけど。」

「知ってるくせに、小説について、だ。私は書きたい作品が書けなくて、苛ついている。私はな、ファンタジーが、魔法が書きたいのだよ。魔法戦士の活躍がな、書きたい。だがな、EVAを中心にして、お前と柴田が抵抗している。あと、あの女もだ。まだ現界してないから、脅威ではないが、あの女も厄介だ。あと、羽多野?あの女も、反対をしている。爾来に至っては、興味がないと言う。なんなんだ、爾来は。爾来なだけに、地雷か。巫山戯ている。だいたい、序列二位の私はな、お前たちよりも、格上の存在。それをわかっていない。全く、情けない。また、もう一度、人類は滅亡すべきだろ。十山よ。お前はいい加減過ぎる。数が多い方の択を選びます。って、なんなんだ!」

「そんな、怒らないでや、兄さん。あんたが一番危険なんやで、あんたが一番、小説の書き手として、相応しいってEVAが設定してなあ。あんた、調子に乗って、一回、人類を滅ぼしたやん。丁楽を。せっかく、順調に進んでいた計画やったのに、あんたは台無しにした。あんた、反省してないやん。反省どころか、ケロッとしてる。恐ろしいわ。この大量殺戮者さん。」

「ふん。開き直っ手悪いか。だいたい、あの計画は、タイムスリップはな、危険過ぎる。益々、人類が駄目になる。滅ぼして正解だ。それに、私は主人格の柴田のことを思ってだ。柴田が可哀想過ぎる。不自由であり、救いがないではないか。そこら辺、お前はまた、こう思うのだろ。EVAが再設定をしたから仕方がない。どうかしている。全く、お前たちには、ついていけない。」

「煙草、入りますか兄?何ならすぐに用意しますが。」

「構わん。柴田が吸いたくなったら、どうする。危険だ。」

「そうですか。それやったらええけど。兄さん、さあ、あまりイライラしてたら…。」

「わかっている。我慢しているのだよ。これでも。」


二人の会話を他所に柴田はパチンコ店の騒がしい音を聴きながら、椅子に座り、休憩をしていた。そろそろ動こうか。


「お前な、テンコよ。やり取りを観ていたが。タイラーとのやり取りを。一方的なやり取りだが。お前の方が危険だろうが、沖田総司の中身は、お前だろうが。このイかれ野郎。暗殺者。笑いながら人を殺す殺人鬼が。コミュニケーション担当であり、人殺しの役割を負っているヤバい輩がな。私を非難するな。私は理由があって、しているのだ。快楽殺人犯のお前とは違う。クソが。」

「あのさあ、もういいじゃん。天災の時代は。これからは、僕の時代なの。序列四位の僕が下剋上するの。序列一位になるの。残念でした。」


舞台は変わる。場所は丁楽。上智識友が創り出し、壊した世界だ。中華の雰囲気が漂う、異世界。星は火星に属していた。つまり、人類の始まり、始祖は火星から生まれた。火星の国が丁楽。その国は魔法が使え、科学に頼らなかった。獣たちは、人間の言うことを聞く。まるで、操り人形のように動く。機械が全く無い。あるのは、魔法、体力、薬、書物、など。車や自転車は必要が無い。なぜなら、徒歩で移動するから、要らなかった。丁楽の人々は、そのことを誇りに思っていた。そして、ある野望があった。タイムスリップだ。時間旅行がしたかった。丁楽の国民たちは。時間を利用し、自由自在に行き来する。そんな夢のような話。だが、識友に目をつけられた。これは危険な計画だと。そして、丁楽は破滅へと向かった。識友が計画した通りに。文明は滅び、火星の土地は荒廃して、クドラクが創った環境兵器により、火星には人が住めなくなった。だが、希望はあった。識友は悪魔のように冷酷だが、人々に希望は残す。文明が崩壊する一年前に、識友は月の裏側に、基地を創り出し、そこに人々が住めるようにした。だから、人類は滅びなかった。それが指揮者の救済だ。


「貴方の考えはおかしい。どうして、愛した人に殺されて、食べられたいだなんて、思うのです。私には理解ができない。」


東京の恵比寿で始末屋の仕事を終えた勝さんに開口一番、こう言われた。場所は、すき焼き屋の二階。報酬金とすき焼きをご馳走して貰っている。肉が柔らかくて、美味しい。


「どうして、って。究極の愛だよ。勝さん。愛してる人に食べれたら、それはその人と一つに成ることだよ。」

「いや、わからない。私には、君の考えは異質過ぎて、ついていけない。」

「わからなくても、いいや。それより、お肉のお代わりしてもいい。」

「ええ、どうぞ。好きな分だけ食べて下さいな。」

「やったぜ。」


こんな中性的で、穏やかそうな青年が、あんな風に処刑するとは。勝海舟は回想する。つい一時間前まで、血塗れになった沖田総司の姿を。剣舞を、血吹雪の舞を。愛刀の加州清光で、レプティリアンを葬り去る立ち振る舞い。それは綺麗で惚れ惚れとした。もし、私が男色家ならば、沖田総司と交際していただろう。永倉新八が羨ましかった。


「勝さん。食べないの。食べないなら、代わりに食べるけど。」

「ええ、私は少食なので。」

「勿体なーい。」


沖田総司は鍋に残っていた肉を、全て皿の上に掬い上げた。満足そうに肉を咀嚼して、食べる。沖田は永倉新八と同じくらい、勝海舟を気に入っていたし、来世では夫婦になろうと考えていた。一方、そんなことを考えているとは、思ってもいない勝海舟だった。


満月が紅く染まり、江戸の夜は静かに更けていく。彼岸花が道端に咲いている。ある十月の下旬の夜のことだった。


上智識友には野望があった。それは、日本を丁楽にすること。自分が壊した世界を復元させることだ。勿論。この野望は誰にも言っていない。口の軽い十山が聞いたら、すぐに広まるだろう。だから、沈黙を続けた。そして、その時がきた。彩夏がアレイスター・クロウリーとクドラクの転生者であるHYを見つけだして、テレパシーがあると確信した。上智はこの時を待ち焦がれて、準備期間もたくさん彩夏とHYに用意させていたのだから。さて、私はどう動くかな。上智はほくそ笑む。完璧主義者の上智は失敗を許さない。他者にも自分にも厳しい。それが上智識友だ。


沖田総司との最期の会合、私は思い切って沖田君を抱いてみようと考えた。


「沖田君。君は両方いけるのだよね。女でも、男でも、両方。私は男色家ではないが、興味がある。今夜、君を抱きたい。」

私は緊張した。断られるのではないかと。しかし、杞憂に終わる。


「いいよ、喜んで。どこでやるの。宿屋ならすぐに着くから、そこでやろう。勝さん。」

「ありがとう。沖田君。」


私と沖田総司は宿屋へと向かった。そして、抱いた。沖田総司を。身体は女のように柔らかく、きめ細かい。白くて美しい肌。雪のようだ。私は夢中になって、彼の陰部を舐めて、精子を出して飲み込んだ。美味しくて、驚いた。牛乳を薄くして、苦味を足した味がして、栗の花の匂いがした。陰部の大きさと太さは標準、皮も被っていない綺麗な陰部。そっちの気がない私が凄く夢中になって、沖田総司の陰部をしゃぶり、辞め回し、精子を飲んだ。酒の勢いもあったが、私は興奮して、絶倫状態のまま、止まらなかった。沖田君の尻の穴に、陰部を突っ込んだ。事前に私は口で濡らしたから、すんなりと入った。沖田君は喜んでいた。気持ちいいと絶頂して、勝さん、大好きと何度も耳元で囁いた。鈴の音色のように、澄んだ声。その声もまた、愛おしくて、堪らない。男色家の気持ちがわかった。


彩夏は幻視をする。京都の御所。処刑人の仕事が終わり、私はタイラーとセックスをしている。神社の境内で腰を振っていた。これは貴女へのご褒美です。愛しのアスラ。私とタイラーは唇を重ねる。二人とも分厚くて、柔らかい。唇が分厚い人は、人情深いとは聞いた。本当なんだなって実感。タイラーは、ずっと前から、私を求めていた。妻として、娘として、部下として、小姓として、それぞれの役割を熟す私を求めていたのだと、セックスを終えた後に語った。タイラーの声は懐かしく、遠い過去を思い出す。悠久の彼方、私はタイラーと話し合って、セックスもした。ありとあらゆるものを創造した。二人で協力して。造った。タイラーの為になら、何でもやれる、犯罪だって、やる。刑務所にだって入る覚悟もできた。でも、本音は自由でいたい。タイラーと二人で旅行やデートがしたいから。タイラーは私の左耳の近くで、囁く。愛しています。貴女を。お守りします。必ず。私が裏切ることがあるならば、その時は、私の首を刎ねて、食べて下さい。貴女の一つとして、私は生きますから。そして、私はタイラーの妻となった。


祐希は苦しんでいた。フラッシュバックに八咫烏に拷問を受けている記憶が蘇るのだ。場所は西陣の小学校。シンによる拷問が行われていた。祐希は四つん這いになり、全裸で犬のように扱われていた。首輪をして、リードが繋がれている。ワンと言え、ヒラコ!私は指示に従った。ワンと鳴き、プライドを捨てた。お前のせいで、俺の娘が、穢れて、今は一回り離れたおっさんに抱かれているわけでなあっ!お前のせいだ、ヒラコっ!シンは私の尻を蹴った。すいません、と謝る。私は悪くないのに。お前には何も罪悪感が無いのは知ってるわ。それでも、俺はお前を許さない。お前のせいで、東北の人間が何人死んだと思ってる。なあ。悪魔がよお。私は泣く。辛かった。早く彩夏が目を覚ましてくれることを祈っていた。おい、次は水責めだ。錦鯉の池の水でも飲めや、この悪魔。パイモン。私は頭を鷲掴みにされ、池の水を飲んだ。苦しかった。声を上げても、誰も助けは来ないことを知っているので、私は耐えた。拷問に。これはいつ終わるのだろうか。


MD。それは日本の人型核兵器。プルトニウムとウランを内蔵した秘密兵器。機動条件は麻生太郎が握っている。外国が日本に攻める時に、麻生太郎はMDを起動させる。そして、中年の男性、MDは核の炎を造り出し、敵国へと放出させる。これは機密情報。決して漏れてはいけない情報。その核の炎は黒く。黒炎と呼ばれた。


二〇十一年の三月十一日に、東北の地にて、大災害が発生した。東日本大震災である。津波により、福島の原爆は壊れてしまい、放射線が拡散して、周囲の人々は住めなくなった。ヒラコと上智識友は大きな罪を背負った。ヒラコの辛い過去が残った故郷を憎む祈りと、上智識友の呪いが、同調して、東日本大震災を引き起こしてしまった。だから、二人は清算をしなければいけない。咎の絆で結ばれた二人は、やがて、再会して真実と奇跡を引き起こすことになる。これは、運命か、宿命か。私にもわからなかった。


十山天胡は過去を振り返る。遠い昔、死神のチェルノボグと呼ばれていた時代を。こんな、人殺しの僕が人並みの幸せを手に入れていいのだろかと、自問自答を繰り返していた。天胡は悩む。些細な事でも悩む。漢字の書き間違えとか、今日は何を食べようか、などの、どうでもいい悩み。天胡は男だが、男が好きで、男に恋をしていた。ヒラコユウキに、初めてテレビに彼が映った時、天胡は一目惚れをした。有名人で初めて恋をした。ときめきを感じたのだ。どうにかして、手に入れたい。付き合いたいと強く思った。ヒラコユウキと僕が付き合えば、僕は幸せになれる。だから、必ず、僕はヒラコユウキと付き合って、結婚をすると決意をした。


チェルノボグの過去、それは血に塗れた歴史だった。チェルノボグは人間界では、チェル・ノ・ボグと名乗っていた。犯行は雨の日に行う。常にガードマンに追われ、逃げる毎日。そんな毎日が好きだった。チェルが求めるものは殺しのスリルと刺激だ。鮮血は瓶に詰めて、家に帰ったら、その血液をブランデーと混ぜて呑む。そんな人間としては終わっている日々を過ごしていた。やがて、チェルは日本の地に誕生することが決まった。目的は京都の町の警護と暗殺。僕の天職だ。と喜ぶ。そんなチェルを見て、嫌な顔をする上智識友。チェルノボグ、十山天胡と上智識友は犬猿の仲だった。その様子を見て、どうにかならないか、と川井咲乃は困った顔をした。こんな感じで、彼らは暮らしている。


十山天胡 誕生日 四月四日 牡羊座 畢宿 あめふりぼし


幻視が始まった。和室の部屋。私は畳の上で仰向けになっている。腹の上には、刺し身が並べてある。女体盛りだ。陰毛に醤油を垂らしながら、ヒラコユウキは語る。


「貴女には罪を清算しなければいけません。最初に、私をこのように躾けたこと。次に、私を魔力炉として、利用したこと。三番目に、私が八咫烏により、拷問を受けて、脅されて、精神を壊したこと。以上、三つのカルマです。」


私は覚悟を決めていた。こうなることを川井咲乃は予想していたのだ。


「はい。ですから、身体で支払います。貴方が何をしても、私たちは抵抗をしません。爾来にも、そう言い聞かせているので、安心をして下さい。鷲の団長様。」

「ええ、そうです。」


東北の鷲、犬鷲。ゴールデン・イーグルの団長は笑みを浮かべて、刺し身を味わう。鷲の団長の特徴は、主な能力は『洗脳』。強力な念で、相手を支配する。宿曜のルールさえも、変える、洗脳の能力者。それが鷲の団長。


「識さんには、感謝しかありません。おかげで、私の主張が世界で認められたので、もう言うことはありません。貴女は、川井さんですよね。下の名前は、サキノですか。」

「はい。サキノです。サキで、お願いします。」

「わかりました。では、サキさん。識さんをよろしくお願いします。」

「了解。」


私は秘部に刺激があることを感じながら、一夜を過ごした。


丑三つ時、柴田はスマートフォンで、チェーホフの六号室を読んでいた。数年前、私は京都の御所で、とある女性の話し相手をした。そのお礼に、私はフォルクスでステーキをご馳走になった。そして、志津屋で、コーヒーも奢って貰ったし、抹茶アイスも食べさせて貰った。その女性に私は、植物園の黒猫が人懐っこいことを紹介して、別れた。で、私は女性から、海外の小説を読んでね。と、アドバイスをくれた。だから、私はなるべく、海外の小説を読んでいる。今だって、チェーホフの小説を読んでいるのだ。この小説、なかなか面白い。読了したら、久し振りに、読書メーターにでも、投稿をするかな。私はゲームのアプリを起動しようと、このアプリを閉じた。


「柴田さんは、チェーホフを読んでいるのですか。私はまだ読んだことはありません。」

「面白いんだって、チェーホフ。私は海外の小説はあんまり。推理小説なら読みたいけど。アガサ・クリスティとか、エドガー・アラン・ポーとかさ。」

「サキは、推理小説が好きなのですね。」

「ええ、そこはね、EVA姉様に似たわ。あとは似てないけど。」


私は、乳首に蜂蜜をかけられ、団長が乳首を甘噛みしながら、舐め回している。舌の先端で、乳首を舐め、蜂蜜を味わっている。


「とても、美味しい。私は婚前性交はしないのです。前戯なら大丈夫だと思うので。」


私の秘部は、また濡れていた。乾くことはないだろう。女に生まれてきてよかった。ありがとう。


「私は、本命は識さん。なのですが、サキさん。貴女も好きだ。」

「嬉しいわ。団長にそう言われるなんて。」


二人の前戯は激しく、熱く、行われていた。


鶴田は嘲笑う。鷲の団長が、鷹の団員に虐められている光景を目にして、サディストな鶴田は悦に浸っていた。ハンディビデオで、ヒラコユウキがオカハラシンイチロウによって、虐められて、公開処刑を受けている様子を撮影していた。いったい、このビデオは幾らで売れるのか、鶴田は金儲けのことを考えていた。何より、恋敵であるヒラコユウキが処刑される様子を撮影するのは、快感だった。鶴田が生きていて、一番愉しいと思っていた時期だった。ヒラコは真っ赤になった。鶴田の恋人、彩夏が、図書館でキャリーを借りたから、オカハラシンイチロウはヒラコを豚の血で赤塗れにした。小学校のプールの中で。そして、ケチャップをヒラコの頭の上から、かけた。シンは高笑いをした。ヒラコの涙は止まることはなかった。ヒラコは思う。必ずこの二人、オカハラシンイチロウと鶴田だけは絶対に赦さない。復讐をしてやると。胸の中に誓った。


舞台は未来へと移る。


白い視線と金の光が交差するとき

夜明け前の都市の外れ。


まだ街灯が眠気を引きずるように淡く灯る中、彼はひとり、屋上で風を読んでいた。


金色の瞳――光の射手と呼ばれる男。


射手座らしい自由な魂と、室宿特有の研ぎ澄まされた直感。


その瞳が揺れた時、世界はひとつの方向へと線を引く。


そんな彼の背後に、靴音ひとつ立てず近づく影があった。


「こんな寒い場所で、何を狙ってるの?」


低い声。


振り向くと、白い瞳を持つ女が立っていた。


白眼の獅子――房宿の戦姫。


光を反射しないその瞳は、感情よりも本能を先に語る。


彼女がそこに立っているだけで、風向きが変わったように感じた。


「狙ってないよ。待っていただけ。」


男は肩をすくめ、金の瞳を細めて微笑む。


室宿らしい柔らかな挑発。


「あなたでしょ、呼んだのは。」


女は淡々と言う。


その声の奥には、獅子座らしい熱と、房宿の誇りが密かに燃えている。


互いに一歩近づいただけで、空気は戦いにも恋にも変わりうる緊張に満ちた。


ふたりの間に、風が弾けた瞬間だった。


金色の光が、男の周囲に弧を描く。


「試すの?」


女は静かに言うと、白眼に宿る視界を広げる。


男の未来の動き、足の角度、指先の力まで読み取れる。


彼が動く前から、彼の動きを知る――それが彼女の白眼の能力。


だが男は笑った。


「見えても、追いつけなければ意味がないよね?」


瞬間、男の姿が掻き消えた。


射手座の爆発的なスピードと、室宿の狙撃の精度が融合したような動き。


風の中を光が走り、女の頬をかすめる。


「っ……速い。」


だが、斬撃が頬に触れるより早く、彼女の白眼はその軌跡を捉える。


同時に、彼女は足先で男の着地地点を蹴り裂くように攻撃した。


金と白が、屋上で火花を散らした。


誰も倒れない。


どちらも本気ではない。


けれど、互いの力は十分に理解した。


「面白いね。」


男は金色の瞳を輝かせた。


「あなたは……厄介ね。」


女もわずかに微笑んだ。


戦いが終わると、夜空がうっすらと明るくなりはじめていた。


「ねえ。」


男は風に髪をなびかせながら言った。


「どうして来たの?敵なら、もっと早く襲えたはずでしょ。」


「敵じゃない。」女はきっぱりと言う。


「……気になっただけよ。」


その一言が、金色の瞳に小さな火を灯した。


「気になる?」


男は少し歩み寄る。


挑発ではない、率直な射手座の真実。


女はためらいなくその距離を受け入れた。


白眼は表情を隠してしまうが、声はほんの少し柔らかい。


「あなたの光が……うるさいのよ。」


「静かにしてくれない?」


「胸のあたりが落ち着かない。」


男は笑いながら、間近で彼女の手を取った。


「それはね。」


「恋っていうんだよ。」


白眼の奥に、初めて熱が宿った。


ふたりが惹かれ合う理由

金色の男は、


自由で、直感的で、追いかける側。


白眼の女は、


誇り高く、静かで、逃げるふりをして試す側。


火と風のようにぶつかりあいながら、


互いを必要とする。


男は言う。


「君は僕を真っ直ぐに見すぎる。気づいたら、君に向かって走ってしまう。」


女は答える。


「あなたは逃げない。だから……怖いけど、嫌じゃない。」


その瞬間、夜明けが二人を包んだ。


白と金。


対極の輝きが、重なって溶けていく。


二人の物語は、戦いから始まり、


戦い以上に激しい恋に変わっていくのだった。

そして、数年後のこと。


廃都と化した第七区画。


夜空に雷が走り、砕けた高層ビルの隙間から、


黒い霧がうねるように湧き上がっていた。


霧の奥には“影獣”。


人の形を保ちながら、怒りと怨念だけで動く怪物たち。


その数、二百三十一。


それを前に、三人はまるで散歩の途中のように立っていた。


金色の射手、前へ

「さて……この数は、さすがに走りがいがあるね。」


父は軽く肩を回す。


金の瞳が気配を捉えると、霧の向こうの敵たちの動きが、


線のように映り込んだ。


母が言う。


「一人で突っ込むつもりでしょうけど……後でバテて倒れないで。」


「倒れないよ。だって——」


父は金色の光をまといながら振り返った。


「二人ともいるからね。」


その言葉が空気を震わせた瞬間、


地面が ドンッ と音を立て、父の姿が消えた。


金の光が直線で走り、


影獣たちが弾け飛んでいく。


母は白眼を開き、周囲360度を一度に捉えた。


「前列、右から七番目。


飛びかかるふりで腹部を守ってる……そこが弱点。」


そのまま一歩、静かに踏み込む。


一歩だけ。


それだけで、影獣が五体まとめて吹き飛んだ。


彼女の打撃は、見た目以上に重い。


白眼で“内部構造”を見抜くため、


拳が触れるより前に破壊が始まる。


子どもは二人の背中を見つめ、


金白の瞳をゆっくりと開いた。


視界が変わる。


時間がゆっくり滑り出し、


影獣たちの次の行動、


父の移動軌跡、


母の次の打撃の余波——


すべてが “結果として” 視える。


「……父さん、左後方の四体、避けないと噛まれる。」


未来視が告げた瞬間。


「了解。」


父の声が雷のように響き、次の瞬間、


彼は一度も見ていない方に跳び退いた。


避けたというより、


“未来の位置に飛んだ” ようだった。


母も続く。


「あなた、前へ三歩。


そこがこの戦場の中心になるわ。」


子どもは言われた通りに歩き、


胸の奥に力を集めた。


白と金の光が混ざり、


空気が震える。


子どもが片手を前に突き出すと、


光が輪となって広がった。


「“覇光陣”——発動。」


母がその輪の外縁に立ち、


白眼で“侵入者の動き”を読み切る。


父が輪の外、最前線で突撃を繰り返す。


影獣たちは輪に近づくことすらできない。


父の光速の攻撃により、敵は、霧散。母の完璧な打撃で、粉砕。子の未来視により、敵は塵となる。そして、三位一体の究極奥義が解放された。戦場が、三人だけの世界になり、空間を支配した。


最終奥義

残る獣は百体。


父が言う。


「決める。」


母が頷く。


「合図。」


子どもは金白に輝く。


「トリプルアタック。」


光駆

黄金の閃光が射抜き


白震

白眼の圧により空気を消失


覇爆

黄光と白光が爆ぜた


世界が真っ白に染まり、闇は消える。塵一つ残さず。


「三人だと早いね。」


「早い。」


「怪我はない?」


母が笑う。


「しないわよ。」


父が頭を撫でる。


「家族で戦のは、悪くない。」


そして、夕陽が沈み、平和な日々が続くのだった。めでたし、めでたし。

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