第11話 ドキドキが止まらない
みんなで楽しくレクリエーションをしようって話になって、広場へ移動することになった。
「行こうか、ミリア」
「うん!」
私たちが歩き始めた時に、ジュリアンさんが私の足元にハンカチを落としてしまった。でもそれに気づいて私はとっさにストップ!
……ふう、危ない危ない。
俺でなきゃ見逃しちゃうね。……なんちゃって♡
でもハンカチ踏まなくて良かった~。と思ったら――。
ドンッと背中にぶつかる感触が……。
「あら、ごめんなさい」
「わっ!」
それはエレオノーラ様の声だった。
私が急に止まったからだ。ごめんなさい、エレオノーラ様。
ていうか、思ってたよりエレオノーラ様の力強いんだけどぉ!!
クッ、なんというパワー!
押された勢いで体勢を崩れて、グラッと前のめりに倒れそうに――あ、ダメだ転ぶ……
そう思った瞬間、体がふわりと宙に浮いた。
「大丈夫か、ミリア?」
声の主はルカだった。
私が転びそうになった寸前に、ルカが助けてくれたのだ。
まるでダンスのステップの如く軽やかに、そしてカッコよく私を支えてくれていた。
周囲から「きゃー!」「絵になるわね!」という歓声が飛ぶ中、私は彼の腕の中にすっぽりと収まっていた。
「あ、ありがとう、ルカ……」
「どういたしまして。全く、目が離せないな、君は」
そう言って悪戯っぽく笑うルカが……イケメンすぎる!
もうやめて! いや、やめないで! もっとやって!!
クッ、惚れちまうだろッ! もう惚れてるんだけどね♡
もうっ、これ以上惚れさせてどうするつもりよっーー!!
ドキドキが止まらないよぉぉぉおおお!!!!
◆
ミリアがルカに華麗に抱きとめられた光景を見ていたエレオノーラとジュリアンは、明らかに悔しそうに歯ぎしりをしていた。
「完璧なタイミングで押して差し上げたというのに、あんなふうに助けられたら全部台無しだわ……」
「はぁぁ……ルカ様に抱きとめられるのがあの泥棒猫じゃなくて、わたくしだったなら……。ねえ……奥様、今からわたくしを押して頂けませんこと?」
だが、エレオノーラとジュリアンさんでは悔しがるポイントが違ったらしい。
「はぁ? 馬鹿いわないの。ルカはあの女狐が恋人だから助けたのよ。私があなたを押したところで、ただ転んでおしまいですわよ?」
「そう……ですわね――」
ジュリアンがその場でしなびたように肩を落とした。
「でもジュリアンさん、お忘れかしら? 私たちにはまだ次なる手があることを」
「そ、そうだったわ! さすがのミリアでもあれには耐えられるはずがないわね……フフ」
「そうですわ。次こそあの女狐に裁きを!」
どうやら2人には次の作戦があるらしいが――。
はたして上手くいくのだろうか。