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サンタの贈り物

作者: DAI

「ごめんね。今年はサンタさん、忙しいみたいなの。」



あたしは、いい子だから、泣かない。

サンタさんが来てくれなくたって、ママがいるから大丈夫。


「プレゼントは無いけど、ケーキは買ってくるから。」

「うん!ケーキ楽しみ!」

あたしは、いい子だから、ママを困らせたらいけないの。

あたしが泣くと、ママも悲しい顔をするから、絶対泣かない。


「メリークリスマス!」

「メリークリスマス!!」

ママと2人でクリスマスのお祝い。

かわいいケーキにロウソク立てて。

プレゼントなんか無くていいの。ママがいるから。


「さあ、今日は、もう寝なさい。」

「うん。」

あたしは、いい子だから、すぐにベッドに行く。

いい子だから、すぐに寝るの。

いい子だから・・・。



トントン。


誰だろう?玄関を叩く音がする。

ママは寝てるみたい。


あたしは勇気を出して、玄関に行く。いい子だから。

ママを守るんだから。


トントン。


また音がした。

ママが起きないように小さな声で、

「どちら様ですか?」

「サンタクロースだよ。開けてくれるかい?」

・・・サンタさんだ!

でも、おじいさんの声じゃない感じがする。


「本当に、サンタさん?」

「本当だよ。君はいい子にしてたから、特別なプレゼントをあげよう。」

本当のサンタさんだ!

あたしは、玄関を開けた。


そこには、細いサンタさんがいた。

あたしの知ってるサンタさんは大きなおなかなんだけど、

違うサンタさんが来たみたい。


「君はママの言うことをよく聞く、いい子だから、これをあげようね。」

サンタさんが差し出した手は、ママみたいな細い指。

手のひらには、キラキラした宝石があった。

あたしは、それを自分の手にしまった。


「それを君が大人になるまで、大事にするんだよ。」

「うん、サンタさん、ありがとう!」

「たまには悪い子になっても良いんだからね。」

にっこり笑うと、サンタさんはどこかに消えちゃった。


あたしは、サンタさんから貰った宝石を「大事なもの入れ」にしまった。





・・・・・・・・・・





私は大学に通う、どこにでもいる女の子。

今は一人暮らしをしている。

私を女手一人で育てた母とは、喧嘩ばかりで疎遠だ。

今は、コンビニでバイトをしながら、大学に行っている。

忙しい毎日だ。


今日はクリスマスイブ。

こんな私に彼氏などいるはずもなく、今日もバイト。

昼間からサンタクロースの恰好をして、店先に立っている。


小さな女の子がケーキを買いに来た。

「サンタさん、ケーキください。」

「はい。どうぞ。」

「ありがとう!サンタさん、そのキラキラしたの、きれい!」

私のしているネックレスの石を見て、女の子がニコニコしている。

「ありがとう。こればサンタさんの宝物なんだよ。」

丁寧にお辞儀をして女の子は行ってしまった。

私がネックレスにしているのは、ただのガラスだ。

子供のころ・・・気づいた時には「大事なもの入れ」に入っていた。


そういえば、不思議な夢を見たことがある。

子供の私は家の玄関にいて、そこでこの宝石を誰かから受け取った。

その人は、おじいさんなのかお姉さんなのか・・・わからない。



その後も、ケーキを買う人は次々とやってくる。

やっと落ち着いた時には、陽もすっかり暮れていた。


「お先に失礼します。」


ふうっと息をして、着替えに行こうとした、

その時、何か不思議な風が吹いた。



気が付くと、そこはコンビニでは無かった。

でも見覚えがある場所・・・昔、母と住んでいたアパートだ。


錆びた階段、外置きの洗濯機、子供用の自転車。

間違いない、あのアパートだ。

103号室。

私は恐る恐る、ドアをノックした。


トントン。


奥から物音がする。

もう一度、ノックする。


トントン。


「どちら様ですか?」

女の子の声がした。

私は咄嗟に、

「サンタクロースだよ。開けてくれるかい?」

私は、何を言ってるんだろう?

不審者だと思われて通報されたらどうしよう?

いろいろなことが頭を駆け巡る。


「本当に、サンタさん?」

怪しまれないように、サンタクロースになりきろう。

私は覚悟を決めた。

「本当だよ。君はいい子にしてたから、特別なプレゼントをあげよう。」

私がそういうと、玄関が開いた。


そこには、小さな女の子がいた。

これは、、、私だ。

間違いない、子供のころの私だ。

「君はママの言うことをよく聞く、いい子だから、これをあげようね。」

私はネックレスにしていたガラス玉を外して、女の子に渡した。


そうか、これをくれたのは私だったんだ。

全てが繋がった気がした。

おじいさんだけどママみたいなサンタさん。夢じゃなかったんだ。


「それを君が大人になるまで、大事にするんだよ。」

「うん、サンタさん、ありがとう!」

女の子はにっこりと微笑んだ。

「たまには悪い子になっても良いんだからね。」

最後に、私がそういうと、また、不思議な風が吹いた。



子供のころ、私は「いい子」になろうと必死だった。

母を助けようと、子供らしいことを我慢して、「いい子」であろうとしていた。

母も、きっといろいろ我慢してきただろう。

私は母に優しく出来ていただろうか?

「いい母」であろうとした母に。。。



気が付くと、コンビニの前にいた。

何事もなかったかのように着替えて、家路に向かう。

とても不思議で温かな夜だった。



・・・あした、ママに電話しようかな。



<おわり>

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