問題児たちのクラス
「うん。まーちゃんのその笑顔、いいよ。最高!」
「えへへ。ありがとう……先生」
先生に褒められ、照れる僕。僕の新たな一面を垣間見られた気がする。
教室に着くと、先生は僕に先に入るように促した。僕と一緒に来たことは内緒だそうだ。そういう事情はよくわからないが、とりあえず言う通りにしよう。
僕はノックをしてから引き戸を開けて挨拶をした。それから教室に入った。するとドッと男の子の笑い声がした。たった一人なのに何て大きな声だ。その肺活量、僕にくれ。鼓膜が破れそうだ。耳が痛い。
「……ノックする奴初めて見たぜ。どんな脳みそしてんだァ」
さっき笑ったのは、奥の席に座っているオールバックの男の子だった。頭の後ろで腕を組んで足を机に投げ出している。僕はあまり見たことがないけど、ヤンキーというやつだ。
髪の毛も染めているし、ボタンもきっちり閉めていない。大問題だ。
そうか。オールバック君はそれでここに来たのか。友達になれるだろうか、不安だ。
「フム。彼は中々のやり手と見た。名探偵碧子様が見抜いた。彼はスパイだ!」
次は少々体の大きいおかっぱの女の子が喋った。オールバック君と隣の席だった。
彼女の名前は名探偵へきこさまと言うらしい。どこからどこまでが苗字なのか、悔しいが僕にはわからない。いや、名探偵は自称か。ということは、こさまが名前だ。
演技がかった口調といい、誰かの真似をしているようだ。誰だかは全くわからないけれど、僕はスパイじゃない。僕はただの小学生です。
「あの、僕は……」
誤解を解こうと自分の席に向かった。前の席に一つ空席がある。隣に女の子。
まだ何も喋っていない金髪の女の子を見た。髪を二つ結びにしているものの、この子もオールバック君と似た雰囲気が出ている。わかってはいたけど、僕の思い描いていた友達はできそうにない。友達ができるかも怪しい。
「あぁ~ん? スパイだってぇ? 何抜かしとんじゃオラァ。どたまかち割ったるで、ボケェ! この女帝様に刃向かうなんざ百億光年早いわ、クソが! おんどりゃぁあ」
「光年は距離だよ」
間違いを正してしまうほど、僕は心に余裕がなかった。
人の揚げ足取りをしたら嫌われると知っているのに……何故我慢できなかった、僕。
だって、女帝様の顔が怖かったから。
「クックッ。恋姫馬鹿な奴!」
「うっさい、千歳空港! 口臭ェんだよ、バーカ! 歯でも磨いてこいやカス!」
「あァ? 空港は関係ねェだろが!」