プロローグ
夢を見た。
これから通う学校の先生が出てくる夢だ。
その人は人と呼ぶには異質で、化物と呼ぶには酷すぎた。
けれど、人間ではない何者か。その正体は未明だ。
その人に心惹かれた。恋心が芽生えたわけではなく、ただ心を奪われた。
見目麗しい、茶髪の女性だった。
彼女は魔女と――呼ばれていた。
目を覚ますと、辺りは真っ暗だった。
「見えるかしら。あの星空が」
目の前にその女性がいた。そうか、これは夢だ。
それなのに何故か感覚がしっかりしている。夢ではないみたいだ。
僕は空を見上げた。暗い空に満天の星々が輝いている。素直に綺麗だと思った。
女性はこちらを見て微笑んだ。
「あの星はね、亡くなった人たちの光なのよ。あの人たちが、生きている私たちに光を照らしてくれる。だから私たちは迷わずに進めるの。とても優しくて温かい光でしょう」
「……うん」
「ね。あなたもいつか星になってしまうけれど、そう考えると悪くはないわよね。死とは生きている私たちにとって恐ろしいことね。でも同時にその命が永遠でないからこそ人は輝くの。長い時を生きてきた私も、いつかは星になりたい。そう思うの」
「星になりたい……?」
「ええ。私も人間になって生を全うしたい。それが私の願い」
「……それは叶うの?」
「今のままでは叶わないわね。けれど、努力をしているの。それがこれからあなたたちにすること。それで私の願いは届くはずよ」
「それならよかった」
「優しい子ね。先生、嬉しいわよ」
にっこりと笑顔になった女性が僕の頭を撫でた。
女性の名前は、何だったのだろう……。