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7代目勇者ー勇者をクビになった俺が相棒となら、この世界を救えるのだろうか?  作者: 酒月 河須(さかづき かわす)
第1章 勇者としての始まり
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第41話 ガシスへの挨拶

本日も投稿しました。よろしくお願いいたします。

「ご迷惑をおかけしました!」

アマネと話をしてから数日後。怪我の治療を終えたリツは無事に退院して、ガシスのもとに戻っていた。

リツはガシスと会って開口一番に、今回の一件について迷惑をかけたことを謝罪した。

ガシスもリツ達と別れてから、神父のカリオスを含めた多くの人間に尋問を受けていた。

 

「俺は大したことねえ。それよりも怪我の方は大丈夫か?」


「……ええ、ほぼ治りましたし」


「そうか。いつも言っているが、自分の身体は大事にしろよ」

ガシスはぼそりと呟いてから、何も言わず、商品の武器のチェックに入る。リツはそんなブライに二言目が上手く出ない。その結果、二人の間で無言の間が構築されてしまった。


『……リツ。変わってくれ』

だんまりした雰囲気の中、ブライがいつもよりトーンをかなり落とした状態でリツに声をかけた。砕けたような雰囲気はなく、真剣そのもの。


それを感じ取ったリツはブライに身体を明け渡した。


「オッサン、今、大丈夫か?」


「……ブライか? 何だ?」

ガシスはブライに尋ねつつも、自身は武器のチェックを行っている。

ブライは太ももあたりのズボンの生地に手のひらを強く押し付けながら、頭を下げた。


「今回は本当に迷惑をかけてしまった。リツにもかなり負担をかけてしまった。本当にすまねエ!」

ブライは腹から声を振り絞り、精一杯の謝罪を行った。


ガシスは武器から視線を外して、ブライの方を振り向く。


「俺もカリオスから話は聞いている。お前さんが悩む必要はねえさ」


「だが、オッサンとの約束をオレは……」


「お前さんの姿勢も含めてああいう約束をしたんだ。今は十分に伝わっている。それに、リツ自身が選択している部分もあるんだ。リツが許可しているなら、それ以上のことは言わねえ。それくらいの責任を背負うくらいには、あいつは大人だ」

 口数の少ないブライが多くのことを説明している。それがどれほど特別な意味であるのかをブライは察した。


「オッサン……」


「それに、今日は俺に伝えたいことはそれだけじゃないだろ?」


「!? なんでそれを……」

 動揺するブライに、ガシスはすっと折りたたまれた紙を渡した。


「アマネという人から預かった。お前たち二人宛の手紙だ」


「オッサン、これ……」


「中身は見てねえが、何となくわかる。ここを出て、世界を旅するんだろ?」


『……ブライ。変わって』

真剣なリツの口調に、ブライはすんなりと身体を明け渡した。言葉数少なめであるが、リツの言いたい事は、ブライにも理解できていた。


「ガシスさん……」

入れ替わったリツはガシスの名前を呼んだ。すると、ガシスはリツの方を見る。


「リツか。俺なら何も心配いらねえぞ。元々一人でやっていた仕事だしな」


「良いんですか? また、あなたに甘えるようで……」


「構わねえさ。確認するが、旅をすることはお前の意思で良いんだな?」

ガシスはまっすぐにリツを見ながら、念を押すように尋ねた。


「はい。行商人としてガシスさんと同行し、ブライとやり取りしているうちに、俺はこの世界のことをほとんど知らないんだなって分かりました。アマネさんから聞いた話もそうですが、俺はこの世界のいろんなものを見るべきだなって思いました。きっとそれが……俺がこの世界に来た意味につながるのだと思っています」

リツは自分の中の思いを、自分の言葉でガシスの目を見て、しっかりと伝えた。

その様子を見ていたガシスは、リツと初めて出会った時の、うつむきがちな様子の姿が重なり、その対比が、胸を熱くさせた。


「そうか」

ブライは目を細めて、優しく呟いた。 


「……あとはまあ、ブライとも約束してましたし」

リツは背中の剣に視線を向けながら、頭を掻いて、補足する。


「そうか」

ブライは同じ言葉を繰り返した。二度目はまた何かを噛みしめるように、何かを思い返すように呟いた。ブライはその瞬間、出会った頃のリツの姿が思い浮ぶ。うずくまり、目が虚ろだったリツの姿が脳裏にほんの一瞬、浮かんだが、すぐに消え去り、現在のリツが視界に焼き付いた。


二人はその後、短い言葉を交わして、リツ達が出発する日を1週間後と定めた。


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

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