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7代目勇者ー勇者をクビになった俺が相棒となら、この世界を救えるのだろうか?  作者: 酒月 河須(さかづき かわす)
第1章 勇者としての始まり
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第17話 状況確認

本日も投稿しました。よろしくお願いいたします。

「討伐対象はエリュマントス。大猪か。確かに強いけれど、討伐部隊が失踪するほどとも思えないけれど……」


俺は馬に乗りながら、討伐依頼書を眺めつつ、剣の方に顔を向けた。


『俺らも戦ったことあるが、そんなに太刀の悪い奴でもねエしな』

馬が歩くたびに、剣がチャキチャキと音を鳴らす。そんな音に紛れて、ブライの声が脳内に響いてくる。


場所は首都ホワイトセブルスの街並みが視界の正面でかすかに補足できる平野、ファラードと呼ばれている土地である。近くにはウォン川が流れており、二百年前に勇者から稲作を教わったこの土地では、広大な水田が広がっている。


元いた世界の季節で表現するなら、春を迎えた頃。水が敷かれ、一部ではイネの苗が植えられている。この部分だけを切り取れば、俺が元いた世界、日本の田園風景を彷彿とさせる。


「おそらくだけれど、他のモンスターも潜んでいたとか」

俺は周囲を見渡しながら、ブライに問いかけてみる。すでに討伐対象の出現領域に足を踏み入れている。モンスターの出現で田植えは中断されている。広大な水田の他に、視界の右奥に目を移すと、この国有数の巨大な山脈で、まだ頂上には雪化粧を残している、『マラー山脈』が目に映る。反対の左手には、『カスティー森林』、さらにその先には、視界には映らないが、海が存在している。モンスター達は食べ物を求めて、山脈や森から水田へ訪れてきたのだろう。


『ありうるな。もしくはエリュマントスが想定される数より多かった、突然変異だったなんてのも考えられるな。まずは現場検証だ』


二人で状況確認しながら、現場までたどり着いた。ホワイトセブルスへと続く街道であり、水田地帯のど真ん中。


俺は馬から降りて、辺りを見渡す。


『こりゃあ、スゲエな』

戦場となった水田地帯では地面が大きくえぐられ、泥が飛散している。加えて、街道を舗装された石畳みの通路は、大きく分断しており、河川敷の氾濫でもあったかのような形跡だった。


「ブライ、エリュマントスは?」

声を発するために息を吸い込むと、焼け焦げたような臭いが鼻腔に纏わりついている。戦場には芽吹いた草木が焼け焦げた形跡も確認できた。炎もしくは雷系の術が使用されたことが伺える。


『周囲数キロを感知しているが、いねエようだ。オマケに、人の気配も感じられねえ』

俺はそこで一つの可能性が脳裏によぎり、地面をけり上げた。できるなら、見つかった欲しくない。そう思いつつ、周囲の泥を巻き上げて、地面を用心深く確認する。

30分ほど、くまなく確認した後に俺は胸をなでおろした。その間、俺の様子にブライはその意図を察したらしく、何も言わなかった。


「良かった……死体はなさそう」


『どこかに身を隠しているのかもな。それと、標的はカスティー森林の方だろうな』


激しい戦闘から飛び出した泥まみれの獣の足跡は、森林側に伸びている。


「足跡をたどる限り、そうだろうね」


『それにしても、あの足跡、俺らと戦ったやつよりでかいんじゃねえか。推定で体長10メートルはありそうだ』

近くで獣の足跡を確認する。大木の幹と同等の足跡がそこにぼつぼつと畦道にめり込んでいる。めり込むだけの体重があるのだと思い知らされる。


「討伐しきれない理由はそこだったのかな」


『たぶんな。まあ、それでも俺らの方が強いと思うけどな』


「大した自信をお持ちの剣さんですね」


『まあ、すげえ剣だからな。だが、一つ、引っかかることがある』


「偶然だね。俺も確認したいことがあったんだ」


俺は水田の畦道に目をやる。地面の一部に釘でも突き刺したような、小さい穴が何か所も点在している。


『こんな細くて小さい穴が地面の奥深くまで侵入してやがる。武器で言えば、矢の跡かと思ったが、ビミョーに違う気がする。それに、そこら中に転がっている小さな筒。コイツも何かの攻撃の形跡かと思ってるンだが……』


ブライがそう言った後で、俺は泥の中からピカピカと光る小さなものが見えた。俺は羽織っている緑の外套を後ろに払いながら、しゃがんでその光るものをつまみ上げる。それは筒状の小さな金属であった。


『そうだ。その筒だ。俺には分からねエ』


人差し指と親指でつまめるほどに小さな筒。片方は空洞、片方は塞がっているように見えているが、おそらく、そこには小さな穴が開いていると思っていい。たぶん、雷管によるものだ。おそらく……。


「薬莢……」


「ヤッキョウ? なんだ、そいつは?」


ブライは知らないようだ。無理もない。俺がこの世界に来た時、その武器が布教されていないことを知り、安堵したものだ。


仮にその武器が存在したとして、猪が扱える代物ではないと思われる。おそらく、討伐隊側の武器であるのだろう。だが、その武器がこの世界に存在しているということは、今後のことを考えると、不安が残る。


「俺のもといた世界にあった武器、銃ってやつだよ……」


『勇者になる前にいた世界のことか?』


「そうだよ。いずれにしても、彼らの元へ急ぎたい。討伐隊には聞きたいことがある」


『リョーカイ。おそらく、猪の跡をたどれば合流できる。行くぞ!』


俺達は急いで討伐隊を追う事とした。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。

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