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第16話 兄が語る真相

珍しく、父が母の肩を抱いて部屋を出て行ったあと、私は兄に詰め寄った。


「お兄様、ダシに使われた私には、本当のことを教えてくださいな」


兄は絶対に何か知っていると思う。


兄はフフフと笑った。


「サラは、わかっているじゃないか」


私は黙った。


まだ、あのワンシーンは目に焼き付いている。


少し戸惑っているようなオフィーリアお姉様と、わずかにほおを染めて一緒に歩いていくマーク殿下。


私は、うまいこと使われたのかも知れなかったけど、怒りはなかった。


「お姉様は何もご存じなかったのね」


「そう。今回のお茶会は、妹のために一肌脱いだだけだ。姉上は、とても(さと)いお方だ。お前が、事情を知っていたら、きっとバレてしまって、出てはくださらなかったろう。だからまずお前と母上を(だま)す必要があった」


「まあ。私、お母様と連合を組もうかしら」


「父上と僕が大変になるからやめてくれ」


お兄さまは笑った。


「姉上は、孤児院で女の子たちに読み書きを教え、将来の世話をしてやっていた。どんな子どももなんとか世の中で暮らしていけるようにと。やり甲斐を感じて、頑張っていた。あのままだったら多分、慈悲深い貴族の未亡人として名を残したろうね」


「それはそれで、悪くはなかったのではないかしら」


「もちろんそうだよ。だけど、殿下はそうはいかなかったのだろう。夫が亡くなってから二年も経つ。それでも、あきらめられなかったのだろう。チャンスがあればと見張っていたのだろう。そして、そのチャンスがやってきたのだ。見逃すはずがない」


私は思わず言った。


「お姉様がなんとおっしゃるか」


「さあ。でも、きっと殿下は一緒に子どもの教育事業を続けましょうとか、口の上手いことを言うんじゃないかな。王家が噛めば、もっと本格的にできますよとかなんとか」


昨日のお茶会の帰り、殿下がお姉様を誘い出す時の文句が、あなたの孤児院での教育事業に興味が湧いた、だった。


マーク殿下は賢いと評判を取るだけある。


「姉上も賢い人だよ。きっとしばらく時間はかかると思うけど、僕の勘では、きっと二人とも幸せになるよ」


私はジロリと兄を見回した。お兄様に何がわかると言うの? 幸せになるって、お兄様が王宮の御覚えがめでたくなって、出世すると言う意味なの?


色々と乗り越えなくては行けない壁はありそうだけど。



「お前はオーウェンと結婚することになったのかい?」


お兄様が不意に聞いた。


「それなのよ!」


私はお兄さまに向き直った。


「どうして誰も私にそのことを聞いてこないの? お姉様の話ばかりだわ!」


いくら殿下の姉へのご執心があらわになったとはいえ、私の縁談はどうなったの? どうして誰も何も聞かないの?


お兄さまはプッと吹き出した。


「だって、お前が知らない間に、クリントン公爵夫妻がここへ来て」


「え? いつの話?」


「えーと、あれ、いつだったっけ? 確か、お茶会がどうこう言い出した最初の頃かな」


だいぶ前じゃないの。


「マーク殿下が乗り出してきては、勝ち目がないと思ったんだろうな。ぜひ、息子の嫁にと所望して帰った」


「なんですって?」


「でも、マーク殿下の本当の目的はオフィーリアだ。関係ないクリントン公爵夫妻にしゃべるわけにはいかないから、一応お帰りいただくしかなかった。もし、殿下のお話がなくなったら、必ずクリントン家へと約束して」


「ええ……?」


またもや、勝手に決められる婚約……


「実は昨日のうちに、使いを立てている。お気持ちが変わらなければ、お話を進めさせていただきたいと」


なんですってええ?


「お兄さま! 私の気持ちは?」


「おや。オーウェンが嫌いなのかい?」


私は、ちょっぴり赤くなったかなと思う。


憎たらしいお兄さまが、腹を抱えて笑い出したからだ。


「オーウェンの気持ちも聞いてみないといけないな。もしかすると、サラを嫌いなのかもしれないし」


「え……」


それはない……と思う。


お兄さまは続けた。


「クリントン公爵への返事には、条件がついている。お前の意志だ。お前が嫌なら嫁がなくていいことになっている」


そ、そう言われると……


「だけど、なんでも、オーウェンと一緒にカフェに行くそうじゃないか。もう、決まっているんじゃないのか?」


お兄様が憎たらしくなってきたわ!

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