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第15話 家族会議

お茶会の翌朝、私は罪人のように母の前に立っていた。


「どういうことなの、サラ。ちゃんと話しなさい」


出た。


母は猛烈に怒っていた。


でも、このお茶会の顛末は、どう話そうと、話術の問題ではない。


これはどうしようもない。



「マリリン嬢とかいう不逞(ふてい)の輩が当家を襲撃したそうですね」


母は、直立不動の姿勢で並んで立っているセバスと門番のアーチーをギロリと眺めた。


「まあ、あれを襲撃というかどうか……」


襲撃だけど。


所詮は女子一名。下男が何人もかかって取り押さえるような話じゃない。

ちょっと頭おかしいのが、不気味ポイントだけど。


「なぜ、そんな者を邸内に入れたのかと聞いているんです」


それは弁解の余地がない。


下手にお値段高めのドレス姿だったのがよくなかったみたいだ。


「ネルソン嬢のところへ行って確認すればいい話じゃないの。伝言するか」


確かに。


「今後、改善に努めます。まあ、問題の若い女性の件は、おぼっちゃまが後を引き取ってくださいまして……」


「まあ、ルイが。仕方ないわね」


母は兄のファンだ。兄は大抵のことならなんとかしてくれる。便利。


「通常の扱いではダメだからと、筋骨隆々のお局女性騎士を呼んできて、連行させていました」


さすが、お兄様。お局型女騎士様なんて、響きからしてマリリン嬢の天敵っぽいわ。




「でも、その話よりもっと大きな話は……」


これは避けようがない。仕方ないので私は説明した。


「まず、マーク殿下の狙いは、最初からお姉様でした」


母はグッと黙った。


第三王子殿下は、また従姉弟くらいに当たるわけだが、いい評判しか聞かない。まだ学生だけど、もうすぐ卒業だ。


マーク殿下のあの様子じゃ、愛人なんかとんでもなさそう。

冒涜(ぼうとく)とか切れられそう。


だけど、ポーツマス家はよくても、王家が難色を示しそうだ。年上で再婚になるからだ。離婚でなくて死別なのはまだマシだけど。


ただ、万一、王家から結局無かったことにしてくださいと言われても、オフィーリア姉様は別に困らないのでは? これまで通りバラを育て、孤児の教師をするだけだ。得はあっても損の可能性はない。


マーク殿下を熟女の魅力で、たらしこんだ悪女とか言われたら困るけど。



ただ、あのマーク殿下の性格を考えると、両親、すなわち国王陛下夫妻にも、ある程度話は通している気がする。一番、難関なのが、姉自身ではないかと思う。

まるで再婚なんて考えていなさそうだったもの。


だから、母が怒る要素がないと思う。出番もないけど。


「それならそうと……」


「だって、私にはお茶会を開いて呼んで欲しいとおっしゃっただけなんですもの。なんの用事かなんてわかりませんし、殿下にお茶会に呼んで欲しいと言われたら、ダメですとは言えません」


母は、自分が知らなかったことを怒っているんだろうけど、私自身全然知らなかったのだもの。教えようがない。


「アントニア、そこは仕方ないことだよ」


いきなり父が口を挟んだ。


「あなた……」


「私も知らなかったのだけれどね。でも、ルイは知っていた」


忙しいはずの兄が、まだ夕方だというのに家にいた。


「母上、マーク殿下の気質はご存知でしょう」


母は、知らないということが嫌いなのである。うまいところを突いてきたな。さすがはお兄様。


「も、もちろん知っているわ」


「あの方は極めて怜悧で、慎重です。ハーバートのようなことはしません。ずっと前から姉のことはお好きだったようです」


「それならそうと……」


兄は首を振った。


「姉上がうんと言わないでしょう」


「だからダメだと、いつもオフィーリアには言っているのです。良縁を逃すなと」


父が母に歩み寄った。


「アントニア、今回ばかりは、オフィーリアの好きにさせておやり」


「そんな。こんな千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスを見逃すことなんかできませんわ!」


「母上。相手は王家です。静かに見守りましょう。下手な小細工は通じません」


「でも、オフィーリアは私の子どもなんだから!」


大抵のことは母を自由にさせている父が、静かだが一歩も引かないと言った様子で言った。


「もう二十歳を超えている。私たちに出来ることは、静かに見守る事だけだ」

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