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転生悪役令嬢のあわただしい生活

作者: しぐ

初投稿です…!(*゜д゜*)ドキドキ

手始めに短編を書いてみました。

まだまだ若輩者ですが頑張っていこうと思っています。

最後まで読んでいただけると嬉しいです…!!

※私情により感想欄への返信はあまりできないかもしれません。

皆様初めまして、こんにちは。

私の名前はナタリア・ボルヘス。

ボルヘス公爵家の娘で、日本からの転生者です。

優しい父と母、ついでにシスコンの兄に囲まれて穏やかに暮らしている、そこまで変な所はない平凡な貴族だと思います。


…多分だけど。




*****




記憶が蘇ったのは4歳の頃。

情報量が多すぎて、知恵熱で倒れたけれど、案外すぐに転生したという事実を受け入れることができた。


それよりも驚いたのは、侍女のアンナが日本からの転生者だったことだ。

何故か朝起きたら物凄い形相で「ナタリア様、私も転生者です!!」って言ってくるんだから、もうびっくりよ。


何でそれを私に伝えたんだろう、私アンナになにか言ったっけ?と頭にはてなマークを浮かべまくっていたら、「お嬢様が日本語で寝言を呟いていたから分かったんですよ」と教えてくれた。



それからはアンナとよく日本の話をするようになった。アンナは前世21歳で死んでしまったらしい。


アンナは栄養失調で亡くなったそうだ。

当時一人暮らしをしていたアンナは、料理を作るのが面倒だとカッ〇ラーメンばかり食べていたのだとか。


カッ〇ラーメン美味しいもんね…あれは罪な食べ物だわ…。

にしても栄養バランス崩れすぎてるな。

ちなみに私は享年28歳だったからアンナより長生きしてるわね。どや。


まあそんな風にお互いの黒歴史とか、どうでも良い事ばかり話していたのだが、ある日突然アンナが「お嬢様、ヤバいです!!」と叫んで部屋に押し入ってきた。


「んー。何よアンナ。まだ早朝よ?もうちょっと寝かせて………」


「駄目です駄目です!私思い出しちゃったんです。だから起きてください!」


なんだなんだ、と重い体を起こしてアンナに向き合って耳を傾けている内に、私の顔はどんどんと青褪めていった。


「え、ここが乙女ゲームの世界?それで私は悪役令嬢?しかも悪役令嬢は断罪されて良くて国外追放、悪くて死刑、ルートによっては変態貴族へ嫁がされる…?」


「お嬢様、綺麗に纏めて下さりありがとうございます…。そうなんです、今日頭をぶつけて目を覚ましたら前世やり込んでいた乙女ゲームの記憶が頭の中に入ってきて…。」


ああ、神よ…私に何の恨みがあるのですか?私に二度も死ねと?

てかテンプレ入ってない??神様絶対遊んでるでしょ。


嫌だ…。現実逃避したい…。でもそうしたら確実に冤罪でバッドエンド…。

変態貴族とか無理…。死刑より酷くない?


私は、はあーーーーーーーっと溜息をつきながらアンナへの確認を続ける。


「で、乙女ゲームの舞台は王立アスナール学園なの?」


「そうです。主人公はアリシアちゃんっていう、茶色の髪に桃色の瞳の、そりゃもう超絶可愛い女の子です。一年生から転入生として入って来るんですよ…。」


え、茶色に桃色??派手過ぎなくていいわね。しかも超絶可愛いだって??少し、いや、めっちゃ会ってみたくなってきた。


「ああ、もっと私が早く頭をぶつけていればこんなことにはー!」


アンナ、悩む所そこじゃないでしょ…。


王立アスナール学園とは、我がアスナール王国の貴族が15歳になると必ず通うことになる超名門校だ。


まずは、ああああ〜、と叫んでいるアンナに乙女ゲームについて聞き出さなくてはならない。


乙女ゲームの世界に転生するという小説は割と読んでいたのでその記憶を頼りにすれば断罪も免れるだろうか。


「アンナ、その乙女ゲームについて詳しく教えて!」


*****


アンナが教えてくれた乙女ゲームのタイトルは「秘密の箱庭」。学園の立ち入り禁止区域にある箱庭で、元平民の男爵令嬢であるヒロインと超絶イケメンな攻略対象が愛を育むというストーリーだ。


個人的に言わせてもらうと、何が楽しいのか理解に苦しむ内容だ。

そもそも立ち入り禁止区域に入っちゃっていいの?


ふう。アンナよ、どんだけベタな乙女ゲームをやっていたんだ…。秘密の箱庭とか…このゲームの作者、ネーミングセンス無さすぎだろ。


そしてヒロインの邪魔をするのが第二王子の婚約者であるナタリア・ボルヘス。つまりこの私なのだそう。銀髪碧眼の美しい公爵家の令嬢。その容姿と性格からついたあだ名が「吹雪姫」。


あー、背景にブリザード出ちゃってる感じ?



悪役令嬢だからこんなに目立つ色彩をしているのね。納得だわ。


「でもお嬢様はお優しいです!吹雪姫なんかじゃないですよ!見た目は、ちょっと怖いかもしれないですけど…!」


アンナ…。フォローになってない…。


兎に角、断罪から逃れるために、今の内から下準備しておくか。


*****


現在私は13歳。幸い、いまだ王子の婚約者ではないものの、容姿は段々とゲームの悪役令嬢に近づいている、らしい。アンナがそう言っていた。


私は今まで、領の農地の視察に行ったり、貧しい人々の為に教会で寄付をしたり、孤児院に行って同年代の子の面倒を見てあげたりした。


孤児院の子、可愛い子ばかりだったから、思いっきり抱きしめちゃった。流石乙女ゲームの世界。顔面偏差値の高さに圧倒された。


茶髪の男の子が怪我してたから、手当てしてあげた。うふふ。下心なんて持ってないわ。純粋な親切心よ。


そういえばあの子はとびぬけてイケメンだった。将来に期待大ね。


まあそんな感じで色々頑張った結果、私は結構領民に好かれることができ、信頼を勝ち取ることができた。

いや、確定じゃないけどね。


そうであることを願おう。



ところで明日は私の社交界デビュー。

貴族の子女は王立学園に入学する前に社交界デビューすることが多い。

というか普通は13歳か14歳でデビューする。


正直言うと人が集まる所に行くのは憂鬱だ。

私の髪と目の色、珍しいからガン見されるんだよね。

目立つの苦手だからとーっても嫌だ。



しばらくベッドの上で転がっていると、アンナが「旦那様がお呼びです」と扉を開けて声を掛けてきた。


私を目に入れても痛くないと言わんばかりに溺愛しているお父様のことだ。

きっと明日のことで私が緊張していないかとか、そういうことを確認するんだろう。


どちらかというと、甘やかされるのは好きな方だ。

「はーい」と二つ返事でお父様の元へと向かった。




「お父様、ナタリアです。お呼びでしょうか?」


「………。」


いつもなら間髪入れずに返事をするのに、どうしたのだろう。

ハッ、もしや、難聴に…!?


「お父様?聞こえていますかあああああーーー!?」


「うわっ!ナ、ナタリア!来ていたのか。すまん、少し考え事をしていた。」


あ、難聴ではなかったみたい。良かったー。


「それで?ご用件はなんですか?」


「ナタリア、その、言いづらいのだが…。実は…お前の婚約が決まった。」


………………うん?こんや…?こんにゃく…?



え、もしかして…。

婚約ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?



「お父様?ちょ、ちょっと待ってください?婚約って、私がですか?そんな、突然なんで…」


「私も反対したのだが、相手が第二王子なんだ…。今は婚約者候補ということになっているが、その、断るのは、難しい…。」



ヤバいわ。混乱して目眩が…。



バターーーーーン。


明日は、欠席ね…。


*****


ああ、春の日差しが温かい…。

今日はパーティー当日。

今年デビューする貴族の家はあわただしく準備をしている所だろう。

しかし私は今、ベットの上でぼーっと窓の外を見ている。

理由はお察しの通り、突然の縁談にショックで意識を飛ばしてしまったからだ。


社交界デビュー。今年は残念だったけれど、来年がある。来年デビューする同年齢の貴族も相当数いるし、特に気にする必要はないだろう。


しかし…ふむ。社交界デビューするとしたらお茶会などで多くの時間が消費されると思っていたけれど、これから1年間はそれがない。

つまり…自由だーーーーーー!!!



まあ学園入学前の公爵令嬢だし、勉強量が増えるから時間もあんまりないんだけどね。



でも勉強が終わったら孤児院に行ってもいいっていう許可をもらってきました!


私、みんなと会えないだなんて無理っ!可愛い成分を補充しないと倒れちゃうわ。




そうして私は孤児院の子たちと仲良くなっていった。

勉強も進んだので一石二鳥だ。


私としては友達が増えた感覚でよかったんだけど、私以外がねぇ…。


…男の子に姉貴って言われる。

姉貴はやめてって言ったんだけど、掛け合ってもらえなかった。しかもなんか尊敬の眼差しを向けてくるんだが??

え、上目遣い…?


くっ、かわっ…!?


許すか。



一人、茶髪の男の子がナタリア、ナタリア、ってついて来るので、可愛くて仕方ない。

聞いたところ同じ年齢なのだそうで、私が昔怪我していた所を手当してあげた子なんだとか。孤児院の子によると、その子は「ナタリアさまが来るたびに来る」らしい。

今でも恩義を感じているのか…。なんて情に厚いんだ!お姉ちゃん感動!

あ、同い年か。


あ、そうそう、私が公爵令嬢っていうことは伏せてある。

そんな事万が一言ってしまったら、みんな遠慮して仲良くできなくなっちゃうもんね。


まあ、姉貴だし?お姉ちゃんだから?それくらい考えないとね??



文句は言っているものの、姉貴呼びを結構気に入ってる私なのでした。



*****


一年後。社交界デビューの日。

今年は私と同じ年の第二王子もデビューなのだそうで、それに合わせてデビューする貴族が多く、城へ続く道はかなり混雑していた。


「アンナ、王城はまだなの?」


「そうですね~、あと30分程はかかるかと。」


王城が見えているのに、まだ30分も待たなくてはならないのか。

前世の高速道路での渋滞を思い出す光景だ。


「それなら歩いて行った方が早いわね。お父様は今日執務で会場に到着するのが遅れるといっていたし、のんびり庭でも散策しましょうか。」


「お嬢様、ナイスアイディアです!!ちょっと御者に説明してきますね。」


アンナが出ていくと、一気に馬車の中が静かになる。

私のお母様はお兄様と留守番。だからこの馬車には私とアンナしか乗っていない。


シスコンのお兄様が泣いて私との別れを惜しんでいた。

なんでこうもお父様とお兄様は似てしまったのかしら。

もっと役に立つところを引き継いでほしかった。


え?今日はカツラかぶっているのかって?もちろん。かぶってるわ!

しかも今日は黒。孤児院に行っている時は茶色のカツラを着けているのだけど、もしもあの孤児院に寄付をしに行った貴族がいたとしたら、この会場で出会ってしまう可能性がある。

だからもしもの場合を考えて目の色が若草色に見える眼鏡までかけてきたの!


準備万端でしょ。

お父様達には内緒でやったけど。


アンナが戻ってきたので、私は徒歩で城へ向かった。


「それにしても、王城って豪勢よねぇ…圧巻だわ」


私の家は公爵家で、貴族の中でも相当色々な面で力は強いはずだけど、レベルが違う。段違いだ。王族の足元にも及ばない。


「全くです…。日本から転生した人が最初にこれを見たら時の流れも忘れて目玉を飛び出して驚くでしょうね。ディ〇ニーのお城も目じゃないですもん。」


「本当よね…。でも王都から離れたところに住んでいる貴族とかでも驚くんじゃないかしら?」


そんな他愛のない会話を続けていた所、あっという間に門に到着した。

これまた壮大な門だ。


無事に王城には入ったわけだが、無駄に広い。

なんでこんなだだっ広いんだ…。金の使い場所、間違ってるよね絶対。


わ、綺麗な花!これ、なんていう花なのかしら。


「それ、アマリリスっていうんだよ。」


知らない声にバッ、と後ろを振り向くと、そこには金髪の美男子がいた。


「で、殿下…!?」


第二王子といえば、輝かんばかりの金髪に透き通ったエメラルド色の瞳を持つイケメンだ。私も一応婚約者候補なのでそこはしっかり知っている。


「あ、バレちゃった。ま、いっか。」


いや王子、てへぺろじゃないですよ。一国の王子ともあろう方が何をしているんですか。


「うーん、見たことない顔だね?」


あ、そういや私まだ自己紹介してなかった。


「申し訳ありません。私の事はリアとでもお呼びください。」


本名を教えると破滅ルートに前進しちゃうかもしれないからねぇ…。第二王子も攻略対象だったはず。髪と目の色変えててよかった。アンナ、どこへ行った。


「そう、リア、ね。良ければ一緒に庭を散策しないかい?」


無理無理無理無理無理無理無理無理


「お誘いいただき光栄ですわ。でも私には恐れ多く…。し、失礼しますっ!!」


こんな感じで予想外の出来事があったけれど、特に目立つことなくパーティーを終えることができたのでした。


*****


またまた皆様にはタイムスリップしてもらいました。すみません。


今私は15歳。今日は入学式である。


学園の制服はセーラー服のようで、なんでこの中世ヨーロッパにあるんだという疑問はあるけれど、懐かしさを覚える素敵なデザインなので気に入っている。


学園は3年間。準備はしてきた。性格に歪みはない…はず。


果たして私は無事に断罪から逃れられるのか。実際前にしてみると不安だが、できるだけ頑張るとしよう。



*****



無事に入学式を終え、学園生活がスタートした。学園には寮があるため、生徒達はそこで寝起きする。


私の部屋は二階。右隣はビビアナ・バレーラ伯爵令嬢。公爵家も懇意にしている家の子だ。左の部屋は使われていない。


部屋を見渡す。

結構良い部屋だ。流石名門校。


学園では公爵令嬢として同級生をまとめているので、とても疲れる。疲労を癒すにはもってこいの素敵な所だと感じる。


まとめ役なだけあって近づいてくるやつらも多いわけなのだけど、ナタリア様、と名前を呼ぶ許可すらしていないのにすり寄ってくる狐共は無視してやったわ。


私に必要なのは本当に信頼できるビビアナ様のような方だもんね。



仲のいい友達もでき、充実した学園生活を送っていた最中、ヒロインが、やってきた。


またアンナが早朝に叩き起こすから何事だと思ったらそのことを伝えられて本当に失神するかと思った。

ヒロインは私とクラスメイトなのだとか。

ヒロインちゃんに早く会ってみたい。アンナによると超かわいいってことだもんね。



…可愛かったです。やっぱヒロインは格が違うわ。こんな見た目だけど小さい子&可愛い子大好きな私は童顔ヒロインに一瞬でK.Oされてしまった。



以後私はヒロインをいじめる奴らを物理的に排除してそばで見守った。

決してストーカーではない。




*****




さて、もう一生分の運を使い果たしたんじゃないかと思ってしまうほど学園を満喫した私は、卒業パーティーに臨む準備をしている。


ヒロインは不特定多数の男性に近づくことなく、穏便に学園生活を終えようとしており、断罪の心配はない。私も、攻略対象達も疚しいことはない。


今までゲームの強制力だとかは働かなかったし安心してパーティーを楽しんでいいだろう。



おお…。鏡に写った私、我ながら美しいわ…!アンナ、良いメイクしてくれたわね。

これは後でなにかご褒美をあげないとだわ!


今日は流石にカツラは着けない。

なんたって卒業だから。


それじゃあ行ってきまーす!



*****



うわぁ〜!

すっごいわ……!

なんていい匂い!

綺麗な飾りや美しい音楽が完璧に今日のパーティーを引き立てているわね…!


ヒロイン…アリシア・エスキベルはもう来てる。は〜、可愛すぎかよ。

そうだ、面倒くさいけれど殿下に挨拶しないとだわ。


「殿下。お久しぶりでございます。ナタリア・ボルヘスですわ。」


「…君とは前に話した事があっただろうか?」


「?はい、社交界デビューの時…」


あ、そうだわ!私、社交界デビューの時カツラと眼鏡をつけていたんだった。そりゃ分かんないわよね。


「…何でもありませんわ殿下。どうかお忘れください。それでは失礼致します。」


「ああ…?」


ちょっと変なやつだと思われたかもしれない。




「ナタリア様ーーー!!」


こ、この声は!

隣部屋のビビアナ様だわ!!


「ビビアナ様!今日は本当におめでとう。」


「そんな、もったいないお言葉ですわ。はあ〜、美しすぎです、ナタリア様…!」


「あ、ありがとう。」


若干引き気味に私はビビアナ様に感謝の言葉を伝える。


仲良くなれたのは良かったのだけれど、ビビアナ様がちょっとおかしくなっちゃったのよね。

なんていうかその…前世の推しに貢いでる女の子っぽい感じになったっていうか?

まっ、まあ私美人だから?

推されちゃっても仕方ないんだけど??


「ところで、ナタリア様、私殿下への挨拶がまだなのですけれど、一緒に来ていただけませんか?」


「…い、いいわよ、行きましょう。」


王子に会うとか滅茶苦茶嫌だけど可愛いビビアナ様の為なら!


「やっぱり持つべきものはナタリア様ですね!」


*****


「殿下、ビビアナ・バレーラでございます。本日は誠におめでとうございます。」


「…あぁ。」


うん?さっきよりも王子愛想悪くない?

どういうことだ、私の友人を無碍に扱うだなんて!


「殿下、いかがなさいましたか。」


「いや、少し調子が悪くてね。」


大丈夫なのかよ。大事なパーティーなのに、主役といっても過言ではない一国の王子の調子が悪いとか。

まあいいや、殿下の事なんて私には関係ない!

美味しいお菓子が私を待っているんだから早くいかなきゃっ!!


そう思って美味しそうなお菓子が並ぶテーブルへ向かっていた手前。


「ボルヘス公爵令嬢様、第二王子殿下がお呼びです。」


なんか突然厳つい騎士に呼び止められてしまった。


「…分かりました。すぐに参ります。」


何それ怠い。私のお菓子がー!!



そうして騎士に案内されて着いたのは、パーティー会場の幕裏だ。

なんだか嫌な予感がする。確かゲームの断罪場所もここだとアンナが言っていたような…?


「よく来たな、ナタリア・ボルヘス。」


「ええ、殿下のお呼びとあらば私、どんな遠くにいてもすぐに馳せ参じますのよ?」


あれ。何か口が勝手に動く。え、なにこれ…?


王子の隣にはヒロインことアリシアが座っている。


「ナタリア様…何故こんなことを…!」


いやいや、こんなことって何よ。(笑)

っていうかこの二人、そんなに仲良かったっけ?

まさかこの短時間で親密な仲に…?

…これは…乙女ゲームの強制力が働いてるわね。


「アリシア…すまないが耐えてくれ。」


うわあ…。王子、気持ち悪ッ…。吐きそう…。



そうして悪口を言いながらも私は断罪されていった。やってもいない罪を暴かれて。


いや、なんで?理解が追い付かないわ。

私何もやってないでしょうが。

というか私ヒロインを助けてたしー!

なんで私がヒロインをいじめる必要があると思うの?

理由がないじゃんか。


私は冤罪で国外追放、ヒロインと王子さまは仲良しこよし~だって?

都合のいい話もあるもんだよね本ッ当!

会って二回目の王子に断罪されるのも腹立つけど、この思い通りに動かない口もうっざいわ!!

っていうか、もう本当に、本当に…


「可愛い大好きなヒロインに断罪されるとか最悪だわ!」


「なんで推しカプ破壊しなきゃいけないのよ、だっる!!」


「断罪するとか俺最低…しかも相手がよりによって…最悪だああああ!」





「………ん?」

「………え?」

「………は?」




私とアリシアちゃんと王子の声が重なる。


あれ、口が思い通りに動く?


あれ…?

推しカプって、ヒロイン転生者!?

てか王子、断罪がアウトって分かってたんですね。まともな人で良かったわー。


三人揃って動揺したまま動かない。


そういやアリシア、「推しカプ」って言ってたわ。それって…もしや…私と…王子ぃ…?


顔が赤くなる。

王子とカップルだなんて、色々無理でしょォ…。


そうして私達は気まずい沈黙の中パーティーを終えたのだった。 


*****


後日。

ボルヘス家に、一通の紙が届いた。

差出人は王家。

何事かと手紙を見ると、そこには第二王子と私の婚約を正式に持ちかける内容が書いてあった。


私は二日ほど寝込んだ。


両家の希望で、私と王子は二人きりで話すことになった。


第二王子が、気まずげに口を開き、事の経緯を話す。


王子は小さい頃、民のことを知るため変装して孤児院の子に紛れていたら、怪我をしてしまったんだと。

そこで手当をしてあげたのがこの私なのだという。


あれ?もしや茶髪の子?

王子に聞くと両手で顔を覆って肯定された。


何故変装していることに気づいたのかと聞いたら、「そもそも似ていると思っていたのだけれど、卒業パーティーの日に私が『社交界デビューの時に会った』的な事を言った後に確信した」らしい。


てことは。パーティーでようやく再会できたと思って喜んでいたと。

ほおー?何それ悶えていい?


なのに口が勝手に動いて私を断罪してしまい、相当落ち込んでいたのだとか。


「つまり…君は僕の初恋の女の子だってことだよッ!」


ヤバい王子可愛い。神。尊い。



こうして私達は婚約した。

アリシアちゃんとも仲良くなり、アンナと一緒に転生者の会を設立したりもした。

あまりにも私がアンナやアリシアと仲良しなので、王子が嫉妬していた。


*****


「ナタリア様、どうぞ私の隣にお座りになってください。」


「いいえ、私の隣ですっ!」


「二人共?ナタリアは僕の婚約者だよ?ナタリア、僕の膝の上においで??」


「ちょっと、私、物じゃないんだけど…。」


「「「知ってますけど?」」」


とある暖かな日差しが降り注ぐ日。

王子の膝に強制的に乗せられた一人の少女は疲れたように叫ぶ。



「なんかちょっと騒がしすぎない…?」


最後まで読んでいただきありがとうございました...!!

今後とも皆さんによりよい作品をお届けできるよう励んでいこうと思います!


誤字報告ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

感想、ブクマ、☆☆☆☆☆評価よろしくお願いします!!

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