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第六回 5月9日はロシアが敗北する日に

◎緊急の国際討論会ですので、司会はカズが担当します。

 一部の方から意見が寄せられました。心より感謝します。今の時点では、日本海での潜水艦からのミサイル発射等を含めて、予想された進展を見せています。ただ、ロシア国内の冷静を装う状況は、既に戒厳令が出されたように感じているが、それがお祝いムードの戦勝記念日と戦況を悪いイメージに見せるため、表に出してきていないのだと思う。

 これまでは、ロシアの第二次世界大戦でのドイツからの戦勝記念日(5月9日)というアニバサリーで、形としてはこれで区切りを付けて終息に向かう見方もありました。しかし、今の時点でロシア軍があまりにも非道な行為をやってしまったため、ロシア政権内でもウクライナが恒久的にロシアを赦すことはないという見方が出ています。世界からも見放されたロシアは、戦争を止める理由探しに苦しみ、ロシア軍の意味なき攻勢はさらに継続されて、双方の犠牲者は増えるという見方が一般的だと言われています。


○メンバー紹介

 今回は、急きょの呼びかけにも関わらず、事態の急変が極めて危険に満ちているとして、11人に参加いただくことになりました。国籍別では9カ国です。同じ国籍のメンバーはAとBで分けて表記します。

アメリカA、B イギリス、フランス、ドイツA、B、韓国、中国、トルコ、ジョージア、ポーランド 計9カ国、11人


 アメリカのAさんは、ロシアの金融市場に詳しい方、そしてドイツのBさんはロシアの核兵器関係のスペシャリストです。

 メインテーマに行く前に、二人のスペシャリストから、最新の情報を教えていただきます。


▷ロシア金融事情

カズ「モスクワの証券取引所が停止されたが、ロシアには本当に金融市場があったのかと思うくらい、平穏で波風がたたないように感じるけど、今はどうなんだろう?」

アメリカA「ロシアとの国際取り引きが中断されて2ヶ月です。この影響は、ロシア以外の国の方がダメージが大きいですね。ロシア側は都合よく市場閉鎖を理由に、支払い拒否や契約解除を仕掛けています。その収益の多くはいわゆるヤミ市場に流れていると言われています。そして、ロシア国内からの輸出品は、中継国を経て国名を変えて西側に出回っています。例えば原油や天然ガスは、船籍がロシア以外の船がロシア国内から別の国の貯蔵プラントに一旦運んで、そこで荷を下ろし、そこからまた西側に運んでいきます。それでもう一つは、ロシアは武器の国内生産が追い付いていません。そのため以前輸出した武器を買い戻して補充していると言われています。現状は完全にロシアに対する経済制裁は機能していません。何度も経済制裁を行えば抜け道を指南する組織を作るのは当然です。制裁効果が出ていれば、既に戦争は終息に向かっているはずです」

カズ「ロシア国内の経済状況はどうですか?」

アメリカA「もともと、国営色の強い金融市場だったのが幸いして、国内の混乱は少ないです。金融機関の職員は別の仕事でアルバイトしたり、休暇を取っていると言ってました」

カズ「そうすると、国際取引は当面再開できないということで、他国がこれまで行ったロシアへの投資を回収出来る見込みが立たないと言うことですね」

アメリカA「全くそのとおりです」

カズ「皆さん誤解されるといけないので、大統領等の要人の資産凍結のことですが、私のイメージでは敵国に資産があるものは、戦争を仕掛ける際に事前に自国の敵国資産と相殺されるので、あまり意味のない話だと思いますが」

アメリカA「そのとおりです。金持ち同士が相手国にどれだけお金を預けていたかのコマーシャルに過ぎません。要人の資産凍結が戦争によって損害を被った投資家に、自分も大損をしたと言いたいだけです」

カズ「では、ロシアの金融政策で今、一番問題になっているのは何ですか?」

アメリカA「軍の給料の未払や、戦争で亡くなった兵士や怪我をした兵士の保証金、それをあざ笑うかのような物価の上昇です。その財源は今のところ目処がついていませんが、戦争に勝てばお金が入って、豊かになると市民は誤解しています」

カズ「それは、かなり現実離れした話ですね! でも、情報がコントロールされているので、それがまかり通る異常な情勢だと言うことですね! 戦時中の日本の軍札みたいですね! ありがとう。それでは、お待たせしました。いま一般の方が一番気になる話しですが、ロシアの核兵器に関して、ドイツのBさんから、最も今の時点で伝えておきたいと思われることをお願いします!」

ドイツB「それでは! 私が現時点で一番伝えたいことは、ロシアが核兵器を使う可能性が高くなって来たと言うことです。先ず、このままでは核を使うでしょう。コスト的にも、相手国に与えるダメージや心理的なプレッシャーからもね! 逆に使わないと、使わなかった理由が必要になります。今も核兵器が戦争終結の決め手だと思っているのがロシアの国内世論にあり、世界一の核弾頭保有はいったい何のためだという、そもそも論にそれは間違いですとは言えないでしよう」

私「いやな話が現実的になってきたと言うことですね!」

ドイツB「そうです! これまでの見方では、おそらく核兵器をロシアが使っても、戦術核と言われる局所的なものになると予想していたようです。これも、様々な抑止バランスが効いているからという前提があってのことでした。しかし、ロシア内部の核戦略の専門家は、もともと隣国や自国併合を見込んだ地域への核の使用は全く考えてませんので、どの程度の威力で、どういう影響があるのか分かってはいません。従って、原発事故でもかなりの被害が30年以上も続いているのですから、ロシアがウクライナで核兵器を使えば、ダメージが低い戦勝に繋がらないような物は使わないと言うことです。一発ないしは二発同時に一気に片付けるようにする。そうなるとウクライナの農業や水資源、物流等に大きなダメージを与え、国としての機能は麻痺します。逆に核の使用効果が低い場合は、軍や核の専門家が責任を負うことになるからです」

カズ「確かに、中途半端な効果ではロシアに対し核の仕返しもあるし、軍や核の担当も命が繋がらないということ!なるほど。原発事故であれだけの影響があるわけですから、攻撃兵器になれば一度に数千人の死者や、建物破壊があり、放射能汚染で広大な立入禁止区域が生まれるわけですね! ありがとうございました」


 さあ、今回の国際討論会のメインテーマは次の3項目です。さっそく討論に入りたいと思います。

第1 ロシアの核兵器使用のシナリオ

第2 核兵器使用の前に潰されるロシア

第3 和平交渉の行方


○ロシアの核兵器使用のシナリオ

カズ「いま、ドイツBさんの話しでは使用の可能性が高まっていると言う見方でしたが、では、どのタイミングでどんな状況で使うと予想されるか、何方か!?」

ポーランド「もう、この話はロシア周辺国の殆どが、戦勝記念日以後に、プーチンが戦況が悪化すると感じた時点で使うと言われています」

カズ「もっと踏み込んだ具体例は出せますか?!」

ジョージア「これは具体例の話ではなく、既に情報が周辺国に漏らされているという現実の話です。実際の核使用の脅威に加え情報による圧力の二面性があります。もし核兵器を使わなくても、これからその場所で使うと言えば皆が避難するでしょう。相手のダメージを最大にする目的で使う場合には、その時点で説明はないでしょうが、使っても使わなくてもロシアは後で嘘の理由を作ればいいだけですから」

イギリス「今の軍事力で言えば、核を除けばロシアとウクライナは互角に戦っているし、西側諸国が更に手厚い支援をすれば、ロシアの被害は増える一方だ。その被害や今後の国政への影響によって、プーチンは何処かで使用するというのが想定されている。NATOはその前に瞬殺的にロシア軍を叩きに行かないと、今やっているような普通の支援では手におえなくなる」

ドイツA「NATOが参戦する時点で、ロシア軍が核兵器を使っていれば、NATOの地上部隊は核防御した専門部隊になる。その時にロシア軍が爆心地周辺で戦っていることはないだろう。おそらく撤退してから突如として核を使う。これも戦術核兵器としての使い方の一つです」

カズ「ドイツBに尋ねたい! ロシアの局所用核兵器はどういったものか教えてくれないか!」

ドイツB「分かった! 核兵器は核弾頭と言われる部分の偉力と爆発のさせ方で、爆心地からの破壊範囲が異なる。だから空中で爆発させた場合の高さや、地上で爆発させた場合の周辺地形でかなりの差が出る。思った以上に被害が出たり、またその逆もある。わりとさじ加減出来るものなんだが、実際に爆発させてみないとわからない。恐らく、使った後でその地域を平常使用する想定なら、最も偉力の小さなタイプで、広島、長崎の約半分以下のものにしないと、ロシア国内にも放射能汚染の影響が出る。あとは、ミサイルで使うのか、航空機で落とすかだが、実は戦術核のもう一つの使い道があって、それは非人道的な攻撃で、見えなない攻撃と言われる高レベル放射性物質の拡散なんだ。これをやられると、数日後に分けも判らずバタバタ人が倒れていく。そして汚染が広がる。何年か後に癌や奇形が生まれたりもする。最悪の使い方だ」

カズ「ほんとに最悪だね! これを知らないで核の話をしている政治家もいるし、僕は仮にロシアが使ったら、周辺国がその脅威に対してプロテクト出来なくなって、自国防衛用の小型核兵器の拡散が始まるような気がする。使わないから核抑止だが、使ったら同じ物で対抗するのが、敵対国のバランスになると思うが、これについて意見がほしい」

ポーランド「そういう見方もあるが、NATOの傘下に入る流れを加速するだろが、それに対してロシアがまた攻撃するので、非公開の議会でNATO加盟を議決する話も出ているくらいだ」

フランス「実際は、国連の仲介といった形で、非加盟国の支援をしているが、対ロシアについては少しでもNATO寄りに動けば、その国が脅されるといった異常な状態だ。仮にロシアが核を使ってもNATOが核の対抗措置を取るには、加盟が前提条件だと言える。それだけのリスクがあるからだ」

中国「どうしても、プーチンが核を使いたがったら、どうやって使わせないことができるんだろ!」

カズ「そうだね! 次のテーマがまさにそれなんだ。核が使われたらかなりの被害が予想され、リスク拡大の負のスパイラルの落ち込む。それを止めさせられるか、止めさせられないか! どうだろ」


○核兵器使用前に潰されるロシア

カズ「核兵器の実態、特にダメージの脅威が解り、ロシアがその使用をカードの一番切りやすい所に持ってきたら、反ロシア勢力はどう動くだろうか?! 誰かこの件で話せる人は?」

韓国「もし、使われたら被害は大変なものになる。だから誰もが使わないだろうと思いたい。だが、どうやって使わないと言い切れるか誰も判らずロシアの動きに振り回される。だったら、核を使ったらロシアにどういう制裁をするか、具体例に釘をさせるかだね!」

ドイツA「既にNATOでは、ロシアが核兵器を使用したら、どうするか幾つかシナリオを用意している。核が使われたと判ったら、先ず、周辺は緊急避難だ。それを軍が最優先に支援する。一番いやなシナリオは、その対応中に更にロシアが別の所に核を使った場合だ。広島と長崎のようにね。そうなるとNATO軍や周辺国の支援は機能しなくなる。あくまで、ロシアが第三次世界大戦は弱腰のNATOやアメリカが回避するだろうと考えたシナリオだ」

アメリカB「既に、準備はされているよ! ロシアにとってはチェックメイトだが、最終的な犠牲者や損害額が核の場合ははるかに増える。ロシアの戦争責任は莫大なものになって、国の機能は成り立たなくなる。今はプーチンの説得に時間がかかっていて、ロシアが核のスイッチを入れたと同時に、プーチンが亡くなり、ロシア軍も3割が機能しなくなる。ロシアを潰したらこの悲劇の責任を取る者がいなくなるから、ある程度の機能は残して核兵器使用後の態勢を維持するというシナリオを提示したと聞いた」

トルコ「ロシア内部が分裂しだしたので、戦争推進派が新たな敵を探し始めた。イスラエルとトルコの反ロシア勢力を標的にしだした。いわゆる戦争責任の首謀的な連中だ。あと、ロシア政権から離反者が出て、国外に出国する動きも出ている」

イギリス「国連からの打診で、戦勝記念日の5月9日に平和宣言をして、ロシア軍を全て撤退し、国連軍に停戦管理と治安維持をさせろと言ったら、戦争犯罪を追求しなければと言ったらしい。それで、国連はロシアは戦争犯罪を否定しているだろうと言ったら、誰もそんなことは言っていないと言ったので、軍の責任者は何故野放しにするのかと言うと、ロシア軍のやり方だと言い放ったと言っていたよ!」

カズ「ボトルネックが戦争犯罪になっているということは、それだけ重罪であり、他の戦闘でもやっていたと認めているのと同じだね!」

アメリカB「恐らく、今の西側の把握している状況は間違いないと思う。そうなるとロシア軍の内部の腐敗が露呈し、魔女狩りのような状態になる。本来は自国の軍が検察権を行使すれば処罰できるが、ロシア軍は兵士のワガママを認めて繋ぎ止めている。だから機能していないだろう。調査にも協力しないだろうから誰がその権限を行使するかだな!」

中国「今の状況は、プーチン離れの流れに対して中国も含めて、ロシアをどこまで潰したらいいのかという判断に苦しんでいる。思った以上に国としての自浄力がなくて、腐り方が激しい。どこまで悪くなった部分を切除するかが見えないという状況なんだ!」

カズ「この戦争責任と戦争犯罪がまかり通るようであれば、テロや海賊も犯罪ではなくなる。そんな異常なレベルの是非を国際社会がやらないといけない危機的な状況なんだね! 分かった。では、最後のテーマだ!」


○平和交渉の行方について

カズ「僕は、2通りに絞られていると思う。この9日の戦勝記念日のタイミングと、それ以外は長期化の末に核使用や、どちらかが敗戦に追い込まれた場合の二つだと見ている! 意見がほしい」

ポーランド「9日の終結はロシアの中に対しても効果がある。全面撤退と停戦合意はロシア国民も大賛成だ。それに国際的評価も高くなる。だが、やはりボトルネックは戦争犯罪を追求されて、その事実が明らかになれば、停戦、撤退のイメージが悪くなることだ」

アメリカB「ロシアの国のメリットで考えれば、早期集結が当たり前で、経済的にも軍事的にも、国内の治安や政治安定にも繋がる。たが、長引くとその分だけ回復は大変なものになる。それをロシアの弱体化にしておとなしくさせても、内戦や犯罪が横行すれば、国際協調は難しい。一刻も早く戦争は止めさせられるべきなんだ」

カズ「では、このボトルネックの戦争犯罪の扱いはどういうことになるかだが、この点はどうかな」

韓国「韓国軍はやはり現地で問題を起こし、国内で懲罰に掛けられ、それで軍内部も納得した。仮にロシア国内で戦争犯罪を扱うとしても、問題はロシアが何処まで遡及して戦争犯罪を明るみに出せるかで、犯罪の裾野はかなりのものだと言われている。もともとが、自浄作用もないから野放しだし、隠蔽もするだろう。誰が、どういう枠組みでやるかだが、実施段階でロシアの抵抗にあうのは間違いない」

カズ「私もロシアに任せることは、嘘つきに、嘘を重ねさせるだけだと思う。これがウクライナや隣国の不満や脅威として残ってきたという今の現実に、何とか打開策がないか! ポイントはそこなんだということが良く解った!」

アメリカA「打開策があるとすれば、ロシアの国民の暮らしをロシア政治や一部の富豪から切り離す。お金と情報を庶民の手に返してやることくらいしか、今のロシアには打開策はないと思う」

カズ「そうだな! みんな、難しい課題だがまたそれぞれの方面で活躍を期待するよ! ありがとう」


〜〜つづく〜〜


            文責(作者)カズ ナガサワ

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