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村の日常

 普段なら寝つきの悪い朱里だったが、あまりの混乱で頭がシャットダウンしたのか、はたまた、残業の疲れからか、食事を終えるとまた睡魔に襲われ眠りに落ちる。

 翌日目が覚めると、心配そうに見つめるエリックさんの奥さんに甲斐甲斐しくお世話をされ、服も何着か貸してもらう。どうやら言葉は自動的に翻訳されているようで、会話には困らなかった。

「ズボンなんて履いてるから、少年が倒れてると思ったのよー。王都ではそんなに人手が足りないのかしら…。あなたに男の仕事をさせていたなんて……さぞかし、大変だったことでしょう…… ぐすっ。」

どのような想像をしたのか、奥さんのリリックさんは綺麗な茶色の瞳を潤ませる。 

「だ、大丈夫ですよ。室内で書類を作ったりしていただけで、力仕事はしてませんよ。」

 慌てて、奥さんを宥める。

「ろくにご飯も食べれず、そんなに細くなって。眠らせずにずっと室内で仕事をさせるのもどうかしています!王都は一体どうなってるの!」

 涙から怒りモードへ、心配する様子に親心が感じられ、田舎の親戚の家に来たような気持ちになる。

 王都に行った息子さんも、病気による欠員補充でいろいろな部署に駆り出され、なかなか帰省できないらしい。いろんな想いが重なっているのだろう。

 リリックさんから、消化に良いおかゆ、栄養のある鶏スープなど、次々美味しい料理が振舞われる。きっと息子さんにもしてあげたいのだろうなと思い、ありがたく優しさに甘えることにする。

 しばらくは絶対安静だと言われ、手伝いを申し出ても許可されることはなかったが、久しぶりにきっちり三食食べてぐっすり眠ると体力はだいぶ回復してきた。

 暮らしながらわかったのは、言葉や文字はなぜか通じており、中世ヨーロッパのような世界だということである。

 異世界に行けるなら、王宮と貴族とかの堅苦しいところじゃなくて、ゲームに出てくるような長閑のどかな村でのんびり過ごしたいなぁなんて妄想していたが、理想に近い場所に来ているため、路地裏で出会った(転移させたであろう)人物に密かに感謝する。


 エリックさんはとても器用な人で昼間は修理業を営んでいる。

 大型家具から小物の金具取付、多種多彩な依頼品に対応し、とても正直者で故障の原因から修繕の方法、修理費も丁寧に説明してくれ、村人からの信頼も厚い。

 修理依頼のない空いた時間は何やら物づくりに没頭している。

 先ほど甲斐甲斐しくお世話をしてくれたリリックさんは赤毛の綺麗な女性で、レストランを経営している。どうりで料理が美味しいわけである。

 レストランは4人掛けのテーブルが8つに、カウンター席のある広めのお店でなかなか繁盛している。美味しい料理も評判の一つではあるが、少し天然な可愛いリリックさんのファンが半分以上占めているのは間違いない。

 レストランの一角には長方形の台があり、どうやら夜は出し物なども披露されており、喜劇場としての一面もあるようだ。

 従業員に若い男性が二人いるらしいが、タイミングが合わずに、まだ会えずいる。


 三日ほど安静にしたら、外出許可も出たので街の様子も覗いてみた。

 中世では上から汚物が降ってきて道路が異臭にまみれていたり、スリなどの犯罪も多いと聞いたことがあり、カルチャーショックを覚悟していたが、衛生法や刑法が厳しく布かれて潔全な街だったことに逆に驚いた。

 どちらかというと、異世界ならではのカルチャーショックがあった。

 やはりこの世界には魔法が存在する。

 一部の動力には魔石が使われているということだった。簡易的ではあるものの、室内照明の魔石、井戸水を魔石でくみ上げた水道など、生活に必要なものは揃っている。

 田舎であるこの村では、魔石は最小限で、昔ながらの方法がとられているものも多くあるがほとんど生活に支障はない。

 通常異世界転生ものならば、料理を改善したり、機器を発明したりと能力を発揮するものだが、ごく平凡な私には一体なにができるのだろうか…。


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