神託
真っ白な大理石の床の荘厳な大広間に人影が二つ。
ここはストイック王国。500年以上の長きに渡った魔族との争いも一人の王の活躍で乱世に幕を下ろすことができた。当時10代だった王は復興に全力を注ぎ50年余りが経過した。
スパルタクス・ド・ストイック王が統治するこの王国は勤労勤勉をすべての国民の義務とし、王制でありながら議会制度を取り入れた法治国家の側面も持つ。
また、実技筆記の両試験結果により能力の秀でた者は身分差なく評価し召し上げ、不正に厳しい罰則が科せられるなど、公平公正で非常に規律を重んじる平和な国となった。
しかし、王国では新たな問題が発生していた……
「して、なんという神託がおりたのじゃ。言うてみぃ。」
目じりと眉間に深い皺が刻まれた青い瞳の老王はゆっくりと白いローブを纏った司祭に尋ねた。
大理石の床に膝をつき下を向いていた司祭は顔を上げ、落ち着かない様子で王座に腰をかけている王を見上げ青ざめた顔で話し始める。
「王よ。厳しい神託がでております……。『王国は聖なる癒しの力が消え始めており、……このままでは滅びる』と。」
「くっ……この国のためにこんなにも尽くしてきたというのに。滅びるじゃと……。なんとかならぬものか」
「はっ、予言を解釈すれば、滅びを止めるには聖なる癒しの力を取り戻す必要があると思われます。」
「聖なる癒しの力とはどのようなものか?どうすれば取り戻せるのじゃ?何をすればよい?」
「畏れながら、王よ。わが王国からは急速に失われているため、外から取り入れる必要があるようです。」
「なるほど……。召喚魔法が必要か……。仕方がない、あれに頼むしかないか。東の森に使いを出せ。」
深いため息とともに王は命じた。