なんか異世界転移したしいろんなことやってみようかな
_夕方5時。
今日は部活が早上がりだったので、この物語の主人公_小澄 南凪は現在下校中。
隣で歩いているのは燈月 星来。
南凪は高い位置で三つ編みツインをして、前髪はセンター分けにしている。
星来はこれまた高い位置でサイドテールをしている。髪の毛痛そう。
「う"あ"あ"あ"あ"あ"リュック重っ!!!!!」
「まあもうすぐで三学期終わるし、仕方ないね」
「でも星来ちゃんは家もう近いっしょ??」
「まーね」
「中一と言えど、最初数か月は家にいたから何したって記憶とかないなぁ」
「確かに。まあ南凪ちゃんは大体何してたか予想はつくけどね」
1日10時間ゲームかましてきました、とドヤ顔をキメながら、南凪はふざけて排水溝のふちを歩いていた。
「だから南凪ちゃんはゲームし過ぎだっての、しかもそこドヤるとこじゃない」
えへへーと棒読みしながら足を踏み出した途端、
「いだああああ」
排水溝に足を突っ込んでしまった。
「えっ、だいじょうぶ??」
星来が慌てて声をかけた。
「うん、大丈夫だいじょ…???」
南凪が大丈夫、と言おうと思ったとたん、足元_排水溝が光りだした。
「え、なにこれなんで光ってんの?」
一瞬のすきに謎の煙が南凪の視界を遮った。
__________
「???????」
南凪は固まった。頭がイマイチ働かなかった。
南凪は高い崖の上にすわり込んでいた。
そして眼下には赤い夕焼けに照らされた、見覚えのない街が広がっていたからだ。
「んー???」
数分考えて南凪が出した結果は
「これもしかして異世界転移ってやつじゃね!?!?」
である。
「だって足元が光ったとき若干魔法陣ぽいの見えたし…!」
どうやら本当に異世界転生したようである。
行きかう人々を観察すると大人から小学生くらいの子供まで、目や髪がいろいろな色をしていたのだ。
しかも若干肌が青がかった人や緑がかった人までいる。
南凪は「なぜか」冷静だった。
南凪は異世界転移ものが大好きで、そういう類のものは全部読み漁っていたから、この先どうするか、などは若干見当がついていたからだ。
「…さて、まずは衣食住から考えるか」
まずは衣、服だ。
と言っても、服に関しては学校のセーラー服のままなので大丈夫そうだ。
セーラーを着ている人がいないから浮くかもしれないが。
そういえば、背負っていたはずのリュックがなくなっている。まあ重いし教科書しか入ってないからいいけど。
次に食、食べ物だ。
もう日が暮れかかっていて、流石にお腹がすいてきた。
お金も何もないのでお金を稼ぐべきだと考え、とりあえず冒険者ギルドなるところに行ってみた。
「こんばんは。冒険者登録をしたいのですが。」
「わかりました。こちらに各事項記入いただいてもよろしいですか?」
「あ、はい」
日本語でも通じるようだ。
周りを見渡してみると、制服のようなジャケットを着た数人が、物珍しそうな目でこっちを見ていた。
(そういえば異世界だし、ステータス確認とかってできんのかな?)
そう考えた瞬間、目の前に半透明の謎の画面が広がった。
―――――――
【ステータス】
ナナ=フォートーヴィル
ランク:1 所持ポイント:0
[能力]
_対物:0
_魔力:0
_創造:0
―――――――
「…うへえ」
見事なほどに0の羅列だ。
というか、名前欄に少し違和感を感じた。
「ナナ=フォートーヴィル????」
南凪の苗字は小澄である。
なのに苗字欄がフォートーヴィルになっていたのだ。
ううん、とうなってから目の前の画面を閉じ、受付に渡された紙に記入していった。
【ギルドカード発行にあたっての詳細確認票】
名前
名:[ナナ]位:[ ]出身国:[ ]
年齢:[13] 生月日[5]月[28]日
得意科(丸を付けてください・変更可)
◦ 対物
◦ 魔法
◎創造
※セーズヘルミナ聖学院生の場合はランクDから、その他の方はランクFからのスタートとなります※
_フォートーヴィル冒険者ギルド_
この紙に記入した時点で、わりといろいろな事がわかった。
まず、フォートーヴィルはこの国の名前だということ。
先ほどのステータスを確認した時の「ナナ=フォートーヴィル」というのは多分、
南凪_ナナがここフォートーヴィルに"リスポーン"したからフォートーヴィル出身判定になっていたのだろう。
そして"得意科"が存在すること。
ここらはよくわからなかったがとりあえず工作が好きなので創造に丸をつけることにした。
「…まあこんなもんか」
そう呟いて受付に向かった。
「_okです。ではギルドカードを発行いたします。改めまして冒険者ギルド受付担当のフローラです。これからよろしくお願いしますね。」
「お世話になります」
発行されたギルドカードは名前とランクがかかれた、図書館のカードみたいだった。
ナナの好きなワインみたいな赤色がモチーフで、黒と白のラインがひかれたカードだった。
「で、あの、フローラさん。唐突ですけどランクF用の依頼ってありますか…?」
「ええ、もちろんありますよ」
といって見せてくれたのは、ランクF用依頼を集めたボードだった。
ナナが選んだのは報酬が500ルーン(ルーンはお金の単位らしい)の三十分だけ居酒屋の裏方バイトをする、というものだった。
とりあえず即決で居酒屋に向かい、30分を過ごした。
居酒屋のメニューを少し分けてもらったのと、コンビニらしき建物で買った弁当でお腹を満たした。
「…んでラスト。住むところがない。ってか今日寝るところがない。」
これもフローラに相談したところ、冒険者ギルドの数部屋ある仮泊室のうち一部屋を貸してくれるとのことだった。
「ナナさん、これ」といってフローラが手渡してくれたものは、数冊の分厚い本だった。
スマホとかも無いようなので寝るまでどう過ごすか悩んでいたナナにとってはとてもありがたかった。
「マジでフローラさんありがたいわ」
と、風呂を終えたナナはつぶやいた。
フローラから借りた本のうち一冊を手に取ってみる。
軽く厚さ五センチはありそうな本だった。
表題は【フォートーヴィル周辺区域 歴史辞典】、
文字が金色で刺しゅうされた表紙だった。
三時間ほどかけて読み終えた内容をまとめると、
・フォートーヴィルを含めて五つの連合国がある。
・フォートーヴィルは比較的平和である。
・連合国のなかでは各国民は国境を越え自由に移動している。
・暖かいところは暖色、寒いところは寒色と国の全体的な気温によって目、髪の色が変わっている。
・ちなみにフォートーヴィルは暖色がほとんどを占めて居る。
・寒色の国は、極稀にいる黒髪黒目(こげ茶、茶なども含む)の人種を嫌う。
だそうだ。
「黒髪黒目の人種を嫌う…?」
ナナは自分の三つ編みにした、こげ茶がかった髪を見つめた。
「まあ対策は今度考えよ」
本をテーブルに置き、明かりを消した。
これで、異世界転移してから一日目が終わった。
【今日の収支】
+500ルーン -350ルーン 残高150ルーン
【あとがき】
初めての異世界転移ものです。
フローラは優しすぎる。
星来ちゃんが出てくるのはもうだいぶ後です
先にこの世界での相棒ができm(ry