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アニオタが異世界転生しようとして普通に死んだ件  作者: オタックスF2型
第1章 Avant-title
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第1話 夢

第1話 夢


それはよく晴れた夏の空に、一筋のくもの糸が垂れ下がった昼時のこと。


僕は吹き上げる熱風に顔を歪めながら、ギラギラとその様子を嘲笑うお天道様を睨みつけた。


ケラケラ笑う声が聞こえる。

声の主は幼なじみの凛奈だ。


何事かと訝しげな態度をとる僕を尻目に、彼女は唐突に話しかけてきた。


「ねぇ!あんた、オタワールドに行きたくない?」


それが僕の冒険の場所、オタワールドへの切符だった。


「オタワールド?なんだよ、それ。」


「てか、あなた誰ですか?」


僕は聴き慣れない言葉に戸惑い、思わず知らない女に話しかけていた。


僕に話しかけてきた女の名前は「凛奈」。


と言っても、それは僕が勝手に付けた名前であって、本当の彼女の名前を僕は知らない。


僕の趣味は知らない人に名前をつけること。


そう、僕は社会的に少しヤバめのやつである。


事実、凛奈とは今日が初対面だし、もちろん彼女も僕のことを知るはずがない。


だけど、そんな見ず知らずの凛奈が僕に話しかけてきたのだ。


戸惑わずにはいられない。


ちなみに幼なじみと言うのも僕が作った架空の設定だ。


だからこの女は赤の他人。


そんな人に話しかけられれば、誰だって恐怖で小便ぐらい漏らすだろう。


いや、実際に漏らしたわけではない。


これはただの汗だ。


「あんた、オタクのくせにオタワールドも知らないなんて、正気!?」


そう言いながら凛奈は人差し指を立てて、マンホールの縁を沿って歩くように、くるくると周りながら話を続けた。


「オタワールドっていうのは全ての世界のオタクが集う、オタクのためだけに存在する、オタクによる、オタクの世界よ!」


「全ての世界?全世界じゃなくてか?」


不思議な言い回しに僕は引っ掛かった。


「そう、全世界じゃないわ。全ての世界。」


「この宇宙には無数の平行世界が存在するのは、知ってるわよね?」


「ちょっと何を言ってるのかわからない。」


そう僕が頭を触りながら困ったように言うと、彼女は間髪入れずに言い直した。


「オタクにはこう言った方がいいわね。」


「この宇宙には無数の異世界が存在するのは知ってるわよね?」


「ああ、知ってる。」


オタクは無数の異世界を知っているし、だからこそ異世界への順応も早い。


そういう異世界への理解がある人類(オタク)は割と転生しやすい体質らしく、僕もそれに当てはまると凛奈は言う。


とすると、俺にも転生のチャンスが!?


そして、凛奈は猛暑日のせいか、心なしか顔を赤らめながら言う。


「その転生の方法は簡単…」


「おっ、教えてくれ!」


僕が前のめりになって転生の方法を聞き出そうと催促すると、凛奈は少し照れ臭そうに答えた。


「そ、それは…」


「私と…」




「賭け麻雀をすること!」


「カケマージャン??」


なんだか急にキナ臭い。


全く話の筋が通ってないようにも思える凛奈の回答に僕が混乱していると、強烈な青い稲妻が僕を責める。


はっと意識が戻った時、その眼前には一面に広がる2次元美少女ハーレムが!!…



あるはずも無く、

汚い部屋に鳴り響くは、目覚まし時計。


そして、付けっぱなしのテレビからは目覚ましテレビが取り上げる政治家やらの汚職問題。


そう、僕は今日もやっぱり、「オタク」だ。


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