薬草採取1
この世界の魔物のご紹介!
[小鬼]…亜人属:魔族科目 分類:低級
緑の体表をした小型の亜人族。非常に獰猛な性格で、生活圏が人間に近く、度々周囲の村々を襲撃する。人から盗んだ剣や防具等を使いこなし、徒党を組んで人間を襲撃するなど、ある程度の知能は持ち合わせている。単体では、あまり強くないが冒険者から多数の被害報告を受けている。国はそれほど危険視しておらず、低級魔族として分類された。
[大鬼]…亜人族:魔族科目 分類:上級
大鬼が観測された地区には、ギルド主導の元、速やかに住民を退避させ、赤金等級以上の冒険者を5名選別して派遣してください。大鬼は、図体のでかい剛腕の持ち主で、魔術を行使で切る個体も観測されている。また、人語を理解できる個体も存在し、極めて高い知性を持つ上級魔族である。
「あの子と一緒に依頼を受けてくれない?初めての依頼で、もしものことがあってはいけないわ」
少年のことを気にかけているらしくどこか落ち着かない様子でベロニカはいった。
「それに、近辺で小鬼の活動が活発になってきているの。あの子が勢いよく出ていくものだから伝え損なってしまったわ…。」
「小鬼かあ、新米にとっては一つの山場だなー。わかった、ここはひとつ、ひと肌脱ぎますか!」
そう言って彼女の願いを引き受ける。申し訳なさそうにこちらをみる彼女に大丈夫任せておいてと伝えると先に駆けて行った少年を追って、ギルド会館を後にした。
駆け出していった少年を探すとすぐに見つかった。どうやら、依頼を受けたもののどこに行けばいいのか分からない様子だ。とんだ新米冒険者だ。すぐに声をかける。
「おう!こんな所でどうした?」
「えっ、あ、こんにちわ」
少しこちらのことを警戒しているようで様子を窺っているようだ。
「それ薬草採取の依頼だろ?手伝おうか?」
「いいですよ。俺ひとりでできますから」
先程のギルド会館での一軒でヘソを曲げているようだ。しかし、このままのこのこ帰ったらベロニカに合せる顔がない。ここは先輩風を吹かしてでも強引に手伝おうか策を練る。
「でも、その薬草がどこで取れるか目星は付けてあるのか?ここは大船に乗ったつもりで任せなさい!」
「そこまで言うならお願いします。ところで貴方は...」
「あぁ、紹介が遅れてすまない。俺は、今年で赤金等級になる冒険者のシクラだ。よろしくな!」
「ってことは、低級冒険者なんですね。まだっ」
「っハハ、そう、そうだよ?まだ黒金等級の冒険者さ...。」
ーーカチンっときた。でも、こちらも見栄を張ったのが悪い抑えろ抑えろ。
一瞬顔が引きつってしまったのが分かったらしく物怖じして答える。
「すみません、昔から思った事が口から出てしまうみたいで。俺はシュウっていいます。よろしくお願いします!」
ーー反、反省してるのか?
くるんと向きをかえ、顔を見られないように先を歩く。今度は顔が引きつるだけでなく、眉間にまでシワがよった。それを知らずに付いてくるシュウが一言。
「道案内してくれるんですか?さすがセンパイ!」
自称勇者と低級冒険者の採取依頼が遂に始まる!ーーかに思えたのだが...。
「いやぁ、シクラが友達連れてくるなんていつぶりかねぇ、爺さん」
「前の子は、いつも本を読んどった子じゃなかったかのぉ、婆さん」
「時が経つのは、早いねぇ」
「そうだのぉー」
ーー捕まった。
今朝方、村に来る途中に挨拶を交わした老夫婦と約束をしていたのを忘れていた。農場を通り過ぎようとすると声をかけられ、2人は朝食をいただくことになった。
「はーい、ばぁば特性野菜スープだよ。お上がり!」
「うわっ、朝からこんなにいいの?!ナエ婆ちゃん、ありがとう!」
「シクラが久々にお友達を連れてきたから、朝から張り切っちゃって」
「婆さんはいつも沢山作るから食いきれんわい。お前さんも遠慮せず食べればいいからの?」
ミキ爺さんはニッコリとシュウに微笑み掛けた。シュウの目は、机に運ばれるご馳走に向けられていた。
パンと一緒に野菜がゴロゴロ入った温かいスープが机に運ばれた。野菜スープは、各種類の野菜が乳牛の乳で煮込まれており、ほんのり甘く香味料によってパンチの効いた味付けがされており、朝から食欲を唆られた。シュウは、ガツガツとスープを口に運ぶ。
「おやまぁ、そんなに急いで食べなくても逃げやしないよ。そういえばあんた見かけない顔だねぇ?どこから来たんだい?」
一旦、口の中のものを飲み込むと口を開く。
「日本ってとこ」
「ニホン?聞いた事ないねぇ、シクラはどうだい?」
こちらに向いて手を顎にあてるとナエ婆さんはどこの地名なのか意見を求める。
「いや、聞いたことないな。どこか違う大陸なのかな?」
「まぁ、そんなとこかな」
シュウは、素っ気ない態度を取ると再びお皿に向き直り、スープを啜った。
食事を終えると席を立つ。シクラは、朝食をご馳走になった2人にお礼を言った。
「朝からこんなに美味しいご飯をありがとう!それじゃあ、そろそろ行くね!」
そういうと2人は先程まで笑っていた顔が浮かない面持ちに変わった。
「...また、来てくれるかい?」
「気を付けるんじゃよ」
「そんなに心配しなくても大丈夫。ちょっと薬草取りに行くだけだから」
2人を諭すと森の方へとシクラとシュウは歩きだす。そんなやりとりをシュウは、不思議そうに見つめていた。
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