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第一章 プロローグ

 初めて投稿させていただきます。誤字脱字、句読点など色々とツッコミ抱くことがあるかもしれませんが何卒よろしくお願いいたします。

 陽が高く登り、空高くそびえ立つ木々から眩い木漏れ日が差すころ、低級冒険者のシクラは剣を片手に獲物を見つけ森の中を追い回していた。


 ギルドから捕獲依頼があったその獲物は、体色が灰色で大きな牙を持ち、頭部中央のみに黒い毛を生やした四足魔獣ワイルドボアである。


 小太りした成人2人分の大きさはあり、気性が荒そうな見た目ではあるが、臆病な性格で人の気配に気づくと一目散に逃げるのが常である。


 ワイルドボアの肉は美味であるとされ、祝事の際の出物として広く慣れ親しまれてきた。


 ギルド生誕祭の祝いの品として献上されるはずが未だに依頼未達成であったため、兼ねてより陽が昇るよりも早くに森に駆り出し、ようやく見つけることができた。


「っクソ、相変わらずなんて速さだ!」


 巨体に似合わない俊敏な動きで木々を縫うように逃げ惑う。

 枝葉をかき分けるように追い回していたために顔のあちこちに切り傷が増えていく。


ーーこのままだと逃げられる。あと少しで開けた場所にたどり着く。広い土地に出たらこっちのもんだ!


 心にいい聞かせながら付かず離れず追い続ける。しばらくして、森に終わりが見えてきた。森から出るとその先は崖になっている。とうとう追い詰める事ができたのだ。


 ワイルドボアが方向転換するよりも先に逃げる方向に剣先を向けて呪文を唱える。


 剣先から火球が現れ、轟音と共にワイルドボア目掛けて飛んで行く。

 目前に着弾すると爆音とともに火柱が上がり驚いたワイルドボアは一瞬脚を止めた。


 この隙に剣を突き立てワイルドボアの脇腹目掛けて刺突する。皮が薄くなっている脇腹の先、体の中央部分に魔獣は格が備わっており、それを貫くことで生き絶える。

 ワイルドボアは、呻き声をあげるとその場に崩れ落ちて動かなくなった。


「ふぅ、ようやく捕まえたぞ!」


 額に流れる汗を手で拭うとシクラは呟いた。


ーーこれで、今年は間違いなく低級から中級に昇級だ!


 ギルド生誕祭は、各村民にとっては一種の祭りごとの一つに過ぎないが冒険者にとっては違った意味を持つ。それは、年に一度の昇級機会である。


 シクラは、毎年低級冒険者に留まっていたが難易度の高い依頼を数多くこなし、今年は昇級候補者の1人として名簿入りを果たしていた。

 

 ワイルドボアの肉が痛まない内に内臓を取り出すと血抜きをするために河辺へと運ぶ。陽が傾き始め、川の水に光が反射して眩い光が目に入る。


 川は緩やかに流れ、小鳥がさえずり近くに魔物の気配もない。川の水にワイルドボアを浸すとふぅと一息吐くと近くの岩に腰掛ける。

ーーここなら、一晩休んでも問題なさそうだ。


 早朝より獲物を探して森に入っていたため腹がグゥと鳴り、少し早いが夕食を兼ねて野宿することにした。


 ギルド生誕祭は2週間先のことであるため、肉は燻製にして鮮度の傷みやすい内臓はここで食べることにする。 


 父親の形見であるナイフを取り出し肝臓を一口ほどの大きさに切り分けると落ちていたいくつかの木の枝を串がわりにし、串肉に火を通す。  


 パチパチと焚き火が鳴り響くとともに周囲は薄暗くなり、焼けた肉の香りが立ち込める。肉汁がヒタヒタと垂れ出来上がるのを今か今かと待っていると森はいつしか静まりかえり闇に包まれ、満点の星空が辺りを照らしていた。


「明日には、ギルドに報告して久々に休暇をとろうかな」


 シクラは呟くと出来上がった串肉一つを頬張った。ここ最近は、昇級機会のために根を詰めて依頼をこなしていた為にこの依頼を済ませたら休暇を取ることに決めていた。食事を済ませると辺りの草を集めて寝床にし、持って来ていたマントに包まるとそそくさと眠りについた。


 陽が昇るとともに起床してぐーんと背伸びをする。河辺に生茂る草木を寝床がわりにしたために体の節々が痛む。

 焚き火の跡を埋めると山道に置いて来た荷車にワイルドボアを積んで出発する。

ーー向かうは、辺境の村[サルエール]だ。


 中央都市[リアトリス]から東に進んだ先に広い農地に囲まれた村がある。そこが[サルエール]だ。


 シクラにとって[サルエール]は、生まれ故郷であり冒険者家業の拠点でもある。幼い時に両親を亡くしてから、村の人々にお世話になったため、冒険者になってからもこの村を拠点として活動し続けている。


 しばらくの間、整備された道を荷車を引きながら歩いていると見知った風景と顔ぶれが見えてきた。


「ようシクラ!大物仕留めたな!」


「あらあら、シクラ。そんなに汚れて大丈夫だったかい?後でいいから、家で水浴びとご飯食べていきな!」


 村の付近で農家を営む年配の夫婦が笑顔で出迎える。


「ありがとう、婆ちゃん!帰りに寄って行くよ!」


 いつもどおりの挨拶を交わし、荷車を村の中央にあるギルド会館まで運ぶ。


 辺境の場所に位置するサルエール村ではあるが、それなりに栄えている。   

 なぜなら、村のから少し離れた位置にある深い森には、ポーションの材料となる木々や薬草が取れ、また現れる魔物も比較的危険度の低いものばかりであるため初心者から中級者までもがこぞって小銭稼ぎにやって来るからだ。

 サルエールは、祭りごとの準備でいつも以上に賑わっているように見えた。


 ギルド会館のスイングドアをガシャンと開けると早朝にもかかわらず、何人かの冒険者たちがいた。


 依頼書の掲示板を眺めるもの、これから依頼をこなすために仲間と待ち合わせしているもの、テーブルに腰掛けて談笑しているもの。


 入り口の扉の開く音が聞こえたのか何人かの冒険者がこちらに顔を向けると笑顔で声を発した。


「おう、シクラ!野宿明けか?」


「おはよう!シクラ。今日も早いね」


 シクラは、このギルドに所属になってから随分と立ち、周りの冒険者から古株として慕われつつあった。

 冒険者はその仕事上、魔物との戦闘が多く、魔物との戦いに敗れたものの多くは命を落としている。

 そのため、ギルド内の入れ替わりが頻繁にある中で、シクラは低級冒険者でありながら、他の新人冒険者の先輩として地位を確立しつつあった。


 顔見知りの冒険者たちと軽く挨拶をしつつ受付カウンターに依頼達成の報告へと向かう。

 

 受付には、眠いのか口元を手で隠して欠伸をしている幼なじみのベロニカがいた。


「ふぁ〜っ、あら朝早いのに御苦労様!ワイルドボアの依頼達成の報告?」


 眠そうな目を片手で擦り、こちらに淡い瞳を向けてベロニカは訪ねた。


「ああ、そうさ。ワイルドボアは燻製にして外の荷車に載せてあるよ」


「さすがね、シクラ。今年はあなたがこの村の昇級者として選ばれそうよ?」


ーーと親しげに話す彼女は、幼なじみのベロニカ。緋色に染まった髪と淡く青い瞳、胸に膨らみがあり、普段はシュッとしてるのに、偶に抜けているところが可愛らしい村1番の受付嬢だ。


「それはいい知らせだ。昇級祝いに明日にでもどこかに行かない?」


「あら、シクラ。私こう見えても結構忙しいのよ?昨日も夜明けまで貴方達の依頼報告書を纏めてたんだから!前祝いはまた今度ね♪」


 さりげなく誘いを断れられたが、話によるとギルド生誕祭に必要な経費の見積もりと昇級候補者の実績の詳細報告書の作成に追われているらしく遊んでいる暇はなさそうだ。


 彼女を意識するようになったのは、ここ最近の事であるが、幼い時はよく彼女の方から誘われてきたのにそれがいつの間にか逆の立場になってしまった。こちらの想いを知ってか知らずか揶揄うように誘いを断られるようになった。


ーーシクラの想いが彼女に届くのはいつになるのやら...。


 彼女と談笑していると突如、スイングドアが勢いよく開かれると入り口から威勢の良い声色がギルド会館に木霊した。


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