142話 師弟 15/15
「名前がそんなに名前が珍しいの?」
あまりに二人が空中ではしゃぐものだから、予想外過ぎてあっけらとられてしまう。
『うん、ウッジいいな!』
『ウッジ、良いなまえだな!』
「じゃ、ウチが二人に名前を付けてあげよう……か?」
『えーーー!いいの?』
『ほしいほしい!』
なんとなく口をついて出た提案だったのだが、思った以上の喜びように少したじろぎながらも、二人をじっくりと観察する。
「じゃぁ……、太陽なんでしょ? よし。こっちの色の少し濃いキミが夕陽で、ちょっと色の薄い君が朝陽にしよう。」
ウッジの言葉を聞くと2人がより一層キラキラと瞬いた。
『やったーー!オレ、夕陽だー!オレ夕陽だぞーーー!』
『朝陽ーーーー!ぐふふ!朝陽ーーーーー!』
夕陽と朝陽は、かなりうれしかったようで、ウッジの廻りをぐるぐると飛び回った。
「そ、そんなにうれしいんだ……、良かったけど……」
『なぁ、ウッジはどうしてここに居る?神さまと一緒じゃないのか?』
『なんで追いかけない?仲間じゃない?』
「うん、仲間なんだけど、ウチにはウチの仕事があって……、ほら、あっちからヤバいのが来るでしょ?」
ウッジは向こうの海上を指さした。
山原と呼ばれる方向から黒い雲がやってくるを感じるられるだけではなく、目が確認する事も出来た。
『あーー、あっちから黒い闇が来る。』
『夜じゃないのにやって来る。』
「それを食い止めるのがウチの仕事。でも、どうしたらいいのかわからないんだよねぇ。……なんか知ってる?」
『いつもは青い光が、いっぱいなのに、今日は全然ない』
『朝陽も夕陽とおかしいって言ってた』
また夕陽と朝陽は顔を合わせて「ねー」とした。
「そう、それ。その青い光があの闇を近づけないようにしていたんだよね? 」
夕陽と朝陽が頷いた。
「今、御嶽で青い光をどうにか復活できるように頑張っているんだけど、その間、ウチがその闇がこっちに来ないようにしないといけないの。」
『それが仕事?』
『置いてけぼりの理由?』
「置いてけぼり……まぁ。チャルカはチャルカで、あっちの島に行って青い光を復活させる仕事があるんだよ。」
『ふーん』
『ウッジ、困ってる?』
「うん。相当困ってる……」
『みんな手伝ってくれるかなぁ?』
『どうかなぁ?』
「ん? みんなって? 」
『ウッジ、見えない?』
『ここにいるよ、おーい!』
「ん? どこ? 」
『何で見えない? 』
『目開いてるのになんでかな? 』
夕朝コンビは首をかしげて考えた。
うーんと、少し悩んだのち、夕陽が何か閃いたのか、古典的に手のひらをポンっ!と叩いた。
『わかった。オレたちの目、貸してやる』
『それがいい! そうしよう! 』
そういうと、太陽の子はウッジの体に向かってきた。
ずいっと、いきなり距離を詰められてたじろいでしまう。
「え! ちょ、ちょっとまって! 」
腕で顔をガードしたのだけれど、そんなのお構いなしで太陽の光がウッジにぶつかった……、と同時に、ウッジの腕をすり抜け、太陽の子たちがウッジの体の中にスルリと入ってしまった。
衝撃が全くないことにびっくりする。
「ん?なになに?どうしたの?」
『ほら、見えるだろ』
『ほらほら、ちゃんと見て』
太陽の光がそういうと、どうして今まで気が付かなかったのか、海の波に煌めく一つ一つの光、風の一つ一つ、海からフワフワと立ち昇る水滴や波がぶつかってできた水しぶき、太陽から注がれる光、陸から風で運ばれてきたと思われる土埃の一粒。
全てが太陽の光の同様、命が宿ったように振舞っていた。
「え!なにこれ!」
『みんな友達だよ、』
『みんなにお願いしたらいい』
「えーーーーーーーーーーーー!」
ウッジの叫び声が辺りに響き渡った。




