139話 師弟 12/15
「アレハンドラさまが、結界をお張りになれるのは、太陽が昇っている間だけなのですよね。……あぁ、失礼な事を申していたら、ご容赦ください。その……、」
『そうですね。なので、早く現地へ行き、何か手を講じねばなりませんね。』
「やはりそうですよね……。私たちの力がどうにか使えればいいのですが……。」
『……少し、伺いましょうか。確か、ウタキという場所が壊れたと、カマディさまはおっしゃってしましたね。その【壊れた】とは、一体どういった状態なのですか? 』
「御嶽は清明の力を鏡の様に凝縮・反射させる働きがあります。その作用の源は香炉です。香炉とは、神聖な彫石なのですが、その石が穢れによって……もしくは物理的に破損し、力を失ったのだと考えられます。」
『では、その香炉を復活させることができれば、清明たちの力で結界を張れるという事ですね。』
「はい。おそらくは。…………。」
『どうかしましたか? 』
「……はい。その香炉の件、何とかなるかもしれません。……もしかしたら、もう神降の清明たちは動いてくれているかもしれないです。」
急にマタラの声が明るくなった。
『? 』
「あぁ、申し訳ありません。私ばかり納得してしまっていて。実は、香炉の石は神降の石でなければならないのです。神降島はこの十六夜をお作りになられた神が、初めてお降りになられた神聖な島なのです。ですので、とても霊力の高い島である神降の石で作った香炉を、各地の御嶽に安置してあります。
魚釣島の御嶽が高位であったのは、確かに場所的に霊力が高い事もありますが、香炉の数が多かったことも理由の一つです。
そして、国防の要になる魚釣と神降のうち、祝女さまが魚釣にいらっしゃったのは、最前線の山原が近いという事もありますが、神降は祝女さまがいらっしゃらなくても、十分に力がある場所だったからに他なりません。」
『なるほど。分かりました。では到着次第、その香炉の力を立て直せるように尽力してください。』
「そうですね! それが最重要ですね! 」
『マタラさん、本当にあなたがこちらにやって来てくれて、良かったです。』
「いえいえ、私は清明としてはまだまだなのです。」
『しかし今現在、わたくしは大変助かっています。ありがとう、マタラさん。』
「……勿体ないお言葉です、ありがとうございます、」
マタラが、恥ずかしいような、誇らしいような、くすぐったい気持ちになった。
「マーちゃん、いちばん! マーちゃん、えらいっ! 」
チャルカが、はしゃぎ出した。
『これ、チャルカさま。また、さっきのような事になりますよ。お静かに。』
「ふぁーい。」
「ふふふ。」
『では、するべきことも見えてきました。急ぎましょう。先ほどから、東の空も様子が変わったように思います。何やら嫌な感じがいたします。』
「……そうですね! 急がないと。太陽が沈むまでにやり遂げなければ! 」
「メリーちゃん、急いでーーー! 」
チャルカの声にメリーが、獣の咆哮を上げた。
翼をブンと、大きく羽ばたかせると、明るい昼間でも分かるほどの青い火の粉舞い上がった。
チャルカ一向は、神降島を目指して速度を上げ先を急いだ。




