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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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133話 師弟 6/15

まさかの、ダークホース・マタラ登場。

くして、チャルカとメリーの初めてのお使い with マタラ。という事に相成った。



賛成しきらないウッジをごり押しで首を縦に振らせ、火急でこれからの予定を相談をした。

結果、一行はひとまず残った清明シーミーたちに御嶽ウタキを任せ、朝清ちょうしんの船のある浜へ急いだ。


浜に着くと船は何も変わらず浜に打ち上げられており、惨状さながら疲れ果て、体で息をしながら倒れ込んでいるメリーと朝清が転がっていた。

どんなに力をこめたり、体当たりしたところで、船は揺れる程度で、絶望から虚脱状態になっているのだ。

仕方がない。水分を十分に吸った木材は非常に重いのだから。


見かねたユウナが、起き上がる力も残されていないほど疲労困憊しているメリーと朝清を、清明の力で回復をさせた。

そして、人の力では簡単に動かすことは不可能である重い船を、カマディの力によってどうにか、海にかえすことに成功した。

その方法とは、カマディが海水に呼びかけ、海面がもっと陸側まで来るように頼んでくれたのだ。

みるみるうちに、満ち潮時よりも海面が上がり穏やかな波が浜へと押し寄せ、少しの浮力を得た船を何とか全員の力で沖へと押し、安全な辺りまで移動させる事に成功した。

そして全員が汗だくになって浮かべた船を一旦、朝清が船着き場へと移した。



メリーには、先ほどメリー抜きで決定されたあれやこれやの事情と任務を話し、船を海に戻すという任務は遂行できなかったが、神降カミウリまでチャルカとマタラを無事に届けたら、ゴーヤとノニは無しにするという取引を何とか飲み込ませ、働きたがらない聖獣を言いくるめた。


そうこうしているうちに、ウッジとチャルカのお別れはすぐに来てしまった。


チャルカは泣き叫ぶかと思われたものの、別れ際に「自分で決めた事でしょ」とウッジに一蹴されると、ぐっと涙をこらえた。

予想外だったのか、逆にウッジがシュン、となっていた。

幸運だったのは、チャルカと一緒に神降に行くと言ったマタラは、ストロベリーフィールズで懐いていたシダーに雰囲気が似ていたのだ。

チャルカはマタラの優しい人柄を嗅ぎ取ると、すぐに懐いてしまった。


そして二人と一頭を見送り、チャルカが見えなくなると、グズグスと泣き出してしまったウッジをユウナに預け、メイシアたちは朝清が待っている船着き場から、海へと漕ぎ出したのだった。




海風が船上を休みなく通り過ぎてゆく。

メイシアは、ぐんぐんと遠くなる魚釣島ユイチャーから赤星島アカブシジマへと視線を移した。


「あれ?メイシアの髪、そんなに黒かったっけ? 」

ナギィが、メイシアに声をかけた。

「? 」

「本当だ。メイシアの髪は栗色だったと思うんだけど。」

ストローも話に加わった。


メイシアは、何を言っているんだろう?と、風でなびく髪を一つかみ手に取り見てみた。

確かに、黒いような気がする。

だが、髪色が変わるなんてこと、ありえないから光の加減か何かなのかな?と思った。

「そう? 私にはいつもと同じに見えるけど……? 」


「んーー、気のせいかな。なんか、変な事言ってごめんね。あはは。」

ナギィがいつもの明るい声で、笑った。

カマディが、それを黙ってじっと見ていた。



風に乗ったサバニは早い。

なんたって、祝女ノロが乗っているのだ。良い風が吹く。

あっという間に、赤星島の船着き場へと到着してしまった。


船から降りながら、メイシアがストローに聞いた。

「ストロー、ここからは何でスイまで移動するの? 歩き? 」

「そんなわけないよ。オラたちが乗ってきた馬があるからそれで…… と思ったけど、馬は全部で三頭だなぁ。……どうしよう。」

「そうですね……、二人ずつ乗るなら何とか行けそうですが、馬の疲労を考えるとあまり好ましくはないですね…… 」

チルーも頭を悩ませた。


「大丈夫さぁ。ワシらの家の馬がある。海榮かいえいの馬を宿に貸し出しているから、それを使うさぁ。」

「それは都合がいいですね! 私たちの馬も宿に預けてあるのです。」

「そうかい。では、急ぎましょうねぇ。」


桟橋で朝清とは別れた。

朝清はこれから、村中にトイフェルの力がここへ及ぶ前に、家に籠る準備をし雨戸を閉めるように触れ回るそうだ。

そうなるまでにメイシアたちが伝令となり、御殿まで戻り都の軍隊を派遣できればいいのだが…… 現実的には、そこまで早く事を運べないだろう。

御殿がこの事態を何らかの方法で気が付いてくれていれば、動きはあるだろうが、御嶽ウタキが壊れたという事実を把握するのは難しい。それも望み薄だ。

今一番の希望は、チャルカがいち早く神降カミウリに到着し、結界が復活する事。

それが叶うと信じているものの、最悪の事態の為に、行動をしなくてはいけない。


カマディは、御嶽でその場にいる皆に話した。

結界の内側へ侵入できたトイフェルは必ず御殿を奪いに来ると。

人には遠い距離だが、トイフェルがその気になれば一瞬なのだ。

目の前にぶら下がった勝利に油断している今、その時間を突くしかない。


メイシアたちも宿へと急いだ。

宿に着くと女将に事情を話した。

あわただしく馬を引き取ると、カマディ・森榮、チルー・メイシア、ストロー、ナギィに分かれ、四頭で出発をした。

メイシアと森榮は乗馬ができないので、相乗りである。途中、相乗りをする馬を交代させることでゴールまで突っ走る事になった。


六人はスイを目指して、成る丈の速さで走り出した。

シダー : 「メイシア1 第一章 はじまり 4話~6話 ラズベリーフィールズ」参照

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