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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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61話 十六夜の島 7/10

三人とも食事が用意されていた部屋まで案内される道中、見慣れない建物にキョロキョロとしてしまう。

ストローは昨日の明るいうちに一度通されてはいるが、こんな奥まで入ってはいないし、あの時は周りをじっくり観察するような余裕もなかった。

昨晩の風呂の時は暗くて見えなかった庭や建物の造り自体、今まで訪れたどの国とも違っていた。

屋根は低く、どっしりとしている。瓦から外壁全てが赤く彩られ、カラフルな模様でところどころに装飾されている。

中庭というのか、建物の中心は大きな広場になっていて、その広場をぐるりと囲むように大小の建物が廊下で繋がって配置されている。

その広場も土や芝生ではなく、白と赤が規則正しくストライプ状に並んだ床になっていて、コントラストが美しい。

色んな国を旅してきたストローだったが、こんな建物を見たことが無く、異国情緒というものを感じ、熱心に見入っていた。

「あぁ、ストローさま。そちらは正殿ですので、立ち入りはご遠慮ください。」

ストローがハッと我に返ると、チルーに連れられた一行は、ストローとは違う方向へ進もうとしていた。

「え? ごめん、オラ建物や景色に見惚れてしまっていて……」

「この辺りは、少しややこしい造りになっていますので、迷わないようにしてくださいね。ちなみに、ストローさまが行こうとれていたのが正殿でございます。その手前から奥に行くと奥の院でございます。そちらには、行かれませんようにお願い申し上げます。お食事は、ここから右手の南殿にてご用意しております。さ、こちらへ。」


「ちょっとストロー、あんまりキョロキョロしないでよ。恥ずかしいじゃない。」

ウッジが小声で話しかけてきた。

「でもさぁ、圧倒されない? こんな不思議な建物見たことないよ! 」

「ほんと、ストローは何にでも興味津々というか……って、チャルカ! ちょっとお行儀よく歩いて! 」

チャルカはチャルカで、磨き上げられたピカピカの板張りの廊下を、初めて履く足袋で滑ることが楽しいらしく遊んでいる。

「チルーさん、ごめんなさい、ごめんなさい! 」

「いえいえ。珍しいんですね。お子様なら仕方がない事ですね。……チャルカさま。ここの床は毎日、使用人が雑巾がけをして、ピカピカにしているんですよ。怪我をしないように気を付けてくださいね。」

「はーーーい」

返事だけは素晴らしい。



通された部屋は、さほど大きくはない部屋ではあったが、開放感がすごい。

大きな窓……と呼ぶのも何か違う気がする。庭が一望できる。つまりほとんど壁がないのだ。

床は寝所と同じ畳。そこから、ほんの一段下がって板張りの縁側になっており、その上を大きな屋根がすっぽりと覆い、日陰を作ってくれていた。


畳の上には庭を臨んで座るように、一人前ずつ朱塗りのお膳と座布団が用意されている。お膳の上には、器がいくつか並び、おいしそうな香りを漂わせていた。

「わぁ! すっごく小さいテーブル! かわいいっ! 」

それを目にするなり、チャルカが目を輝かせた。

「ささ、座ってくださいね。お茶をご用意しますよ。チャルカさまはウッジさまのお隣の席がいいですよね。では、こちらに。」

チルーに促されるまま、ストロー・ウッジ・チャルカの順で一列で座る。

チルーが、どこからともなく、急須などお茶を淹れる一揃えをお盆で持ってくると、ストローの横に座った。

慣れた手つきで、急須に茶葉を入れ、湯桶ゆとうから急須にお湯を注いだ。

すると、お茶と花の香が混じった良い香りがふわっとあたりに漂う。


「良い香り。チルー、そのお茶、昨日の夜に用意してくれていたね。ありがとう、おいしかったよ。」

「気に入っていただけてよかったです。このお茶は、さんぴん茶と言ってジャスミンの花の香りをつけてあるんですよ。」

「へぇ~。確かに花の香りがすると思ったよ。」

「さぁ、みなさん、遠慮なんてしないで食べてくださいね。」

と、チルーはにっこり微笑み促すと、メリーの食事を持ってくると席を外した。


お膳の上に乗っているのは、ごはん、汁物、野菜の炒め物、あと根菜らしいものを半月切りにしたもの。

汁物はアーサーの味噌汁。炒め物はナーベラーと島豆腐。根菜は大根を黒砂糖に漬けた漬物だった。

どれも色は地味なのだが、いい香りでお腹がより一層減ってくる。

しかし三人は微動だにしない。食べ方がわからなくて困惑しているのだ。なんたって、スプーンもフォークもナイフもないのだから。

チャルカが箸を握った。

「ねぇ、ウッジ、これで食べたらいいの? どうやって食べるの? 」

「……ぅ。ウチもこれ初めて見たからわかんない。ストロー、ちょっとこれ使ってみてよ。」

「オラも知らないって。これで、突き刺すのは……ないな。この野菜とか、とろとろで突き刺せないだろうし。二本で挟むのかな? 」

などと言っていたら、チルーが赤く熟した拳くらいの大きさの果物を器に乗せて持ってきた。

「あら、みなさん、お口に合いませんでしたか? 」


「違うんだ、すっごくおいしそう! 食べたいんだけど……チルー、これで食べたらいいのかな? オラたち、これを見るの初めてで。」

三人とも苦笑いをした。

メリーがもう待てないとばかりに飛んでチルーの肩に乗った。

「きゃりっ! 」

「メリーちゃん、じっとしていないとダメだよ! 」

慌ててチャルカが立ち上がり、チルーのもとへ駆け寄った。

「あら。まぁまぁ。チャルカさま、大丈夫ですよ。メリーさんはもう待てないんですね。今置きますからね、もうちょっとだけ、待ってくださいね。」

そういうと、チャルカを席に付かせて、その横に持ってきた果物を置いた。

「さぁ、召し上がれ。マンゴーという果物ですよ。」

メリーが急いで飛び降り、躊躇もなしにマンゴーにかぶりつき、一心不乱に食べ始めた。

見ているだけで、その果物がみずみずしく、甘くおいしいががよくわかった。

「メリーちゃんいいなぁ……」

「チャルカさまにも後でお持ちいたしますよ。」

「やったぁ! 」


「お待たせいたしました。行き届かなくて申し訳ございませんでした。」

そういうと、ストローの横まで戻ると、佇まいを正して座った。

「私どもは、今皆さんがお手にされている箸で、食事をしております。ストローさま、少しお箸をお貸しいただけますか? 」と受けると、使い方の説明を始めた。

説明を一通り聞いても、すぐに使いこなせるはずも無かったが、三人は何とか箸をつかって食事を始めた。

チルーは、この辺りの主食が米である事、アーサーが海藻といって海で採れる事、ナーベラーはウリ科の植物である事、豆腐や味噌が大豆から出来る事、漬物はジージキと言って、この辺りの郷土料理で黒い色をしているのは黒い色の砂糖を使って漬けているからなど、食事の間、興味津々で聞く三人に色々と教えてくれた。



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