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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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132話 師弟 5/15

今まで黙っていたナギィが、ウッジに近づいた。

「ウッジさん、ワーからもお願いしたいです。」

意を決した面持ちで、訴えは続く。


「ワーと森榮しんえいのアンマー…… 母は、トイフェルに殺されているの。だから、どうしてもアイツにこの島を好きにされるなんて我慢できない。お願い、力を貸してください……! 」


ウッジがナギィを見ると、ナギィは瞳に涙をいっぱい貯めて、少し震えているようだった。

それなのに、気丈にウッジの目をまっすぐに見つめてそらさない。


「…………、もー。そんな事情を聞いたら、断れないじゃない。ずるいよーーー! 」

『では、いいんですね、ウッジ! 』

「……はぃ。嫌ですよ? もちろん嫌ですけど…… 仕方ないですね! チャルカも、ちゃんと出来るの? やるって言ったからには、後から出来ないじゃすまないんだからね。」

「うん! チャー、ちゅーけーちてん出来る! 」

チャルカが、飛び跳ねて喜んだ。


「ウッジさん、ありがとう! チャルカちゃんもありがとう! 」

ナギィが、ウッジに抱き付いた。


「しかし、どうやって、チャルカを中継地点にするんですか? 」

疑問に思ったメイシアが、何気なく聞いた。

「そうだよね。って事は、とりあえずチャルカちゃんを神降島カミウリジマまで連れて行かないといけないって事だもんね……。じゃ、急がないとね。」

そういうと、ナギィが今すぐにでも! という感じで立ち上がった。


『いえ、もっと良い方法がございます。』

アレハンドラの揺るぎない声に、ストローが、不安な気持ちを抑えつつ、声をかける。

「もしかして、アレハンドラさん……、メリーに飛んで運ばせるつもりではないでしょうね? 」

『はい、そのつもりですが。メリーさんも、そちらにいらっしゃいますよね? 』


またもやウッジが、話が違う……と顔が青ざめる。

しかし、ナギィのあんな話を聞いた手前、ぐっと堪えて、

「カマディさん、ここから、神降島までは、遠いんですか?」と笑顔で聞く。


「ヤサ。ウマンチュはスイから来たのだったね。神降カミウリはそれよりもっと向こうさぁ。」

「えーーーーー! やっぱり今話しは無し! 無理ですって、そんな遠くまで、あんなチャランポランにチャルカを運ばせるなんて! 」


『しかし、それが最速。わたしくが、チャルカさまについて案内しますから、問題ありませんよ。』

「いや、でもメリーから落ちかかったりしたらどうするのですか? アレハンドラさまは声だけじゃないですか! 」

『では、ウッジがカミウリまで行き、わたくしがこちらをお守りすればよいのではないですか? 」

「……へ? い、いや、それはちょっと……、無理ですよ、ウチにも都合が…… 」

『そうなれば、もうチャルカさまが行くしかないではありませんか。』

と、二人の【ああ言えばこう言う】が始まった。


メイシアがそういえばと言う感じで、思い出したようにキョロキョロとメリーを探した。

「ところでストロー、メリーが見当たらないんだけど、どこにいるの? 」

「あぁ、それは……。たぶん今頃、浜で力仕事をしてるよ…… 」

「? 」


「あのー……少し、お伺いしてもいいですか? 」

マタラが、二人の話に声をかけてきた。

「その、今話題に上がっているメリーさんというのは、一体どなた…… というか、人なのでしょうか? 」

「あー。確かに気になるよね。話の内容からも想像しにくいし。」

ストローが、腕組みをしてうんうんと頷いた。


「メリーっていうのは、頭が鷹で翼を持ってて、身体がライオンの……なんか珍しい動物、かな? 」

メイシアが、雑な説明をした。


「んとねー! モッフモフで、肩に乗って甘えてくるんだよ! んでねー、夜になると、キラキラひかってきれいなの! んでねー、チャーのムスメなんだよ! 」

と、チャルカが追い打ちをかける。


「人を乗せるくらいの大きさのものが、肩に……? モフモフでキラキラ…… 」

メイシアとチャルカの説明にマタラか完全に混乱したようだった。


「ちょっと、メイシアもチャルカも、人を混乱させるような説明ばっかり。」

ストローが二人を一喝すると、二人は反省の色無く、へへへと笑った。


「ごめんね、混乱させて。メリーは…… 常識を逸脱している存在なので、なかなか説明が難しいのだけど、グリフォンという聖獣です。高貴な生き物らしいんですけどね、性格は別として……。その、今ウッジと言い合いをしているアレハンドラさんの術で、体の大きさを変える事が可能になったので、小さい間は、人の服の中とか肩に乗ってグータラしている、そういう動物です。」


「はぁ……、では、大きくなるとどれくらい…… 」

「そうだなぁ…… 例えば、オラとメイシア、それにさっき来てた神さまがいたでしょ。あの女の子の方の三人を背中に乗せて飛んだことがあったよ。それくらいかな。」


「なるほど……。分かりました。」

ストローの説明にマタラなぜか深く納得をした。

そして一歩前に出ると、緊張して上ずった声を張り上げてこう言った。

「わ、私が、チャルカさんと一緒にカミウリまで行きます! 」



今までほとんど発言をしなかったマタラの一言で、空気は一転。

全員の視線がマタラに向けられた。


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