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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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131話 師弟 4/15

ウッジは驚きを超えて、白目で今にも泡を吹きそうだった。


「ちょっと待ってください、アレハンドラさん! そんなこと出来るんですか? 」

耐え切れず、ストローが口を挟んだ。

『その声は、ストローさんですね。出来るかどうかは、ある手順を踏めば…… 可能です。』

「手順? 」


「ちょっと待ってください、アレハンドラさま! もし、それが出来るのであれば、ここをウチの代わりにアレハンドラさまが守ってくださいよ! 」

一瞬あの世に行きかけていたウッジが、泡から復活して懇願した。

なんたって、アレハンドラの力がすごい事は、ウッジはペンタクルで目の当たりにしている。

これ以上確かな事は無い。頼りない自分よりも確かな神官!


『この子は、まだそんな事を……。では、カミウリは誰が守るのですか? 』

「それは予定通り、カマディさんが…… 」

『さっき、仰いましたよ? もしカマディさんがカミウリに拘束されないのであれば、もっと良い状況になると。』

「それはそうですけど…… 」


「まぁ、ウッジ。いいじゃないか。アレハンドラさんが、そう言ってくださっているのだし、甘えよう? 」

そういうストローの顔はどことなく、にやけていた。

「ストロー…… お前、なんか楽しんでいるだろ、」


「そ、そんな事無いよ? えーーっと、……カマディさん、それでかまいませんか? アレハンドラさんの力が確かだって事はオラたちが保証します。それに、仕事をきっちりとこなす方なので、絶対に失敗しません!」


「うむ……。ヤシガ、異国の方にそんな厄介な仕事を任せて…… 」

「カマディさん、そこに引っかかるならウチも! ウチも同じことですよ! 」


カマディはウッジの言葉が耳に届いていないようで、目を瞑り唸り続けた。


『カマディさま。実はわたくしはウッジの力を育てたいと思っております。どうか、わたくしに、そのお役目を頂けないでしょうか? 』

「こちらとしても、願っても無い申し出やっさぁ……、」

そういうと、カマディは覚悟を決めたように、息を吸った。

「わかりました。では、十六夜をよろしくお願いいたします。」

カマディが、こちらの景色が見えていないであろうアレハンドラ対して、深々と頭を下げた。

そしてウッジ頭も首が折れたのかと思うほど下げ、誰にも聞こえないほどの小さな声を吐いた。

「終わった…… 」


「なーに心配しているさぁ! ワーもガクマネーネーに付いているからよ、心配することないよー」

「そうですよ! 私も微力ながら、協力しますよ! 」

ユウナとマタラが、ウッジにエールを送った。


そんな事を言われても、まったくウッジの耳には届いていない。

ウッジの頭の中は不安しかなかった。

この国を救うなんて大それた事を自分が出来るとは到底思えない。なぜなら、つい最近まで仕事も無く、仕方なく身を置かせてもらっていた孤児院で、役立たずの毎日を送っていた。


ペンタクルの日食の時だって、あんなに失敗してはいけないと言われていたし、自分でも細心の注意をしていたのに、チャルカを壇上に上げるのに大失敗をしている。

そんな自分が、もし今回も何か失敗してしまったら、どれだけの人々に迷惑を…… いや、迷惑で済めばまだいい。誰かの命を奪ってしまうような結果になったしまったら、と思うと恐ろしくて、どうしようもなかった。



しかし、そんなウッジをよそに、周りでは話が進む。


「でも、一体どうやって? 」

「さっき言っていた手順ってのは? 」


時間がもったいないとばかりに、メイシアとストローが問いかけた。


『……チャルカさまはいらっしゃいますか?』

「はーい! 」

『いいお返事ですね、チャルカさま。』

「えへへへー 」


『あなたは、ソーラさまの神としての存在を、半分授かっています。なので、あなたがわたしくの力の中継地点となるのです。』

「んーーー? よくわかんないけど、いいよー! 」

チャルカが元気いっぱいに両手をあげて返事をした。


「んぁ? ちょ、ちょっと! アレハンドラさま、チャルカを使う事はもう禁止です! 」

ウッジが慌てた。

あの時だって、チャルカを巻き込みたくなかったのに、巻き込んでしまった結果、半分神さま…… なんて奇妙な状態になってしまっている。

ウッジはチャルカは普通の女の子に育ってほしいのだ。


「えーーー、チャー、ちゅーけーちてんする! 」

「チャルカは何もわかっていないのに、そんな事言って! また変なことに巻き込まれるのが嫌なの!ウチのいう事を聞きなさい! 」

「やー! ちゅーけーちてん! ちゅーけーちてん! 」

チャルカは中継地点という言葉が気に入ってしまったようだった。


『こればっかりは、確かに積極的にチャルカさまを巻き込んでいるという状況なのは否めないでしょう。しかし、これが最善の方法と考えます。これ以上の良策はありません。この思念を飛ばしている状態であっても、北の地より禍々しいものが刻一刻と近づいているのを感じます。チャルカさまは特別です。神なのですから。神は民を守る使命がございます。ですから、どうか、この作戦を遂行させてほしい。頼みます、ウッジ。』


「民を守る使命って言ったって…… そっちが勝手に……。」

ウッジが複雑な心境になるの仕方がない。

あれは事故だった。

チャルカは望んだわけでもないのに、神にされてしまったのだ。


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