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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
71/96

124話 楽園 30/33

「……これ、スポイトじゃないかな? 」

ストローがつぶやいた。

「スポイト? ……って何? 」

聞いたことが無い名称に、メイシアが首を傾げた。


「んと……、液体を取り出すための物だよ。ここの柔らかいところをつまんで液体を吸い上げるの。この大きさだと、本当に少量だよね……。」

ストローが説明しながら、スポイトのゴム球の部分をつまんだ。

「へぇー……。でもなんで? 」

「……さぁ? 」


「チャーも! チャーも触ってみたい! 」

チャルカが、ストローの手のひらに乗ったそれを見たくてジャンプした。


「もー、チャルカはいいの。大人しくしてて。……でもコレ、今、トーラから出てきたんだよね? 」

オズから何も持ってこなかったのだ。

もちろん、このスポイトだって、自分たちの持ち物でないことは確実だった。

トーラから出てきたという考えようが無かった。

という事は、トーラが今、事態を解決するためにはこれが必要だと判断した…… 奇跡だということになる。


「うん……、オラ、スポイトなんて持ち歩いていないから、きっとそうだよね…… 」

「液体を吸い出すものなんだろ? ここにそんな水とか、そーゆーのあるの? 誰か、なんか持っているとか…… 」

ウッジが周りを見渡した。


面々が首を横に振った。

その中にあって、メイシアだけが、とある方向を指さした。

「水ならあそこに…… 」



全員が、メイシアの指さす方に目を移した。

そこには、二本の鍾乳石の下に配置された二個の水瓶があった。


「メイシアさん……、あれはシキヨダユルとアマダユルの壺。あの中に溜まった聖水は、薬にも毒にもなるのです。私たち清明シーミーでも、むやみに触る事、覗き込むことすら禁止されています。触らない方が……、」

「いや、マチュンさぁ。」

マタラの言葉をユウナが遮った。


「メイシアグワァ。……確かにそうさぁ。よーく考えたら、それしか手はないねぇ。ウンジュは、その着物チンの下に、デージ不思議イーフなーお守りを持っているさぁ。さっき、ウンジュのマブイを探していた時に気が付いたさぁ。」

メイシアが、達成の鍵をぎゅっと握った。

どうしてだか、秘密にしていないといけないような気になっていたからだ。

恐る恐る、肯定の返事をする。

「……はい、」


「ワーには、それが一体何かはわからない。ヤシガ、そんなに力のある特別なものを持っているイナグングヮ。そーそー他にはいない。ウンジュなら、きっと、あのミジ使チカユン事が出来る。カマディが特別だとユン イナグングヮ。アンヤクトゥ、確かにアランないさぁ。メイシアグワァはフームチやっさぁ。」


「フームチ……? 」

「運を持っている人って感じかな? ……そうだね、うん。きっとそうだよ、メイシア! メイシアは幸運を持っているんだよ。だから、その力でオバアを助けて! お願い! 」

ナギィが、メイシアの手を握った。


「うん、ナギィ。……私が幸運を持っているかどうかはわからないけど、でも、絶対におばあちゃんを助ける! 待っててね。」

メイシアもナギィの手を握り返した。

「ユウナさん、私、どうしたらいいんですか? どうしたらおばあちゃんを助けられるんですか? 助けられるんだっら、どんなことでもします! 」


ユウナは、じっとメイシアの瞳を見つめた。

「……あの瓶の中の聖水を一滴、額に落とせばいい。」

「え? それだけ? 」

「それだけやさ。ヤシガ、それだけでは無いよ。それからは、誰もウンジュを助けることができない。そこから、自分で切り抜けないといけないよ。」

「…… 何が起こるんですか? 」

ユウナが、強張るメイシアの肩をさすった。


「なぁに、脅かしてワッサイビーン。ワーにも、そこからはわからんさぁ。そこからは、御水ウビを使える者にしかわからない事。残念ながら、ワーはそっち側の役目の者では無かったという事やっさー。」


「ユウナさん、それって危険なん事なんじゃないの? メイシアは大丈夫なの? 」

ナギィが不安げにユウナに問う。

「ナギィ、大丈夫。私、何となくだけど、こういう事に慣れているの。変な言い方だけど…… 自信あるよ。へへへ、」

メイシアがヘラヘラっと笑って見せた。


そんなメイシアを見つめながら、ナギィは決意した。

「ユウナさん、ワーもする! 」

「え! だ、大丈夫だよ、私一人で! 」

「ダメ。ユクシムニー。顔に書いてある! 」

「ゆ、ゆくし……? 」


「ねぇ、いいでしょ、ユウナさん。もしユウナさんがダメって言ってもワーは、絶対そうする! 」

「……仕方ないねぇ。本当は、ナギィにはカマディがするつもりだったのだろうけれど、仕方ないさぁ。ナギィもきっとあっち側の者。二人で行って来るさぁ。」

「そうと決まったら、さぁ、早くしよう! ごめん、貸してね。」

ナギィが、ストローの手からスポイトを取った。

そして、水瓶のあるところにメイシアを引っ張って歩き出す。

「ちょっと、ナギィ……! 」



「あっち側とか、そっち側とか、行って来るとか……、一体なんなんだろうね、ストロー。」

ウッジが、ストローに声をかけるが、ストローは考え事をしているのか聞こえていない様子だった。

「もー、ストロー、聞こえてるの? 」

「あぁ、うん。ごめん。なんか、嫌な予感しかしないんだけど…… 本当に大丈夫なんだろうか? 」

「なんでそう思うんだよ。」

「…… 何かが、引っかかって、」


「あ、行かなきゃ! メイシアたち、寝転んでるよ。始まっちゃう! 早く行こ! 」

「チャーも、行く! 」

ウッジとチャルカが、水瓶のあるところまで駆け出した。

ストローも、モヤモヤする思考を中断させて、走り出した。

デージ / とても

イナグングヮ / 女の子

ウンジュ / あなた

ヤシガ / しかし

アンヤクトゥ / そうだから

アラン / 違う

ワッサイビーン / ごめんなさい

ユクシムニー / 嘘を言っている、それは嘘だろう

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