表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
70/96

123話 楽園 29/33

「チビラーサン! チムドンドンねぇ! ほんと、ネーネーたちには驚かされてばかりやっさぁ! 」

ユウナが目を真ん丸にした。


何が起こったのか、一番混乱しているのはストローだった。

アレハンドラから、初めてトーラを渡されたあの時も、実際には使い方も知らないままで、そして、自分でも何が起こったのか理解できないまま使用していた。今、目の当たりにした、何もない場所から簡単には取りに行けない場所にあるはずのトーラが出現するなんて現象。言い換えれば「奇跡」だ。

ストローは、トーラが生み出す奇跡を目の当たりにしたのは、初めてといってもいい。


なんだかんだと、みんながトーラには不思議な力が宿ると言ってはいたが、信じ切れていない部分も多少はあったのだ。

<大切にすべき本>くらいのカテゴライズだったことは、否めない。


ストローはソーラの言葉を思い出していた。

『肯定的な出来事に対して否定的な感情を持っておると、奇跡は起こらなくなるぞ。』

都合のいいところで、都合よく起こり、都合よく幕引きをする「奇跡」を眉唾物だと思っていた節がどこかにあって、それをきっと見透かされての言葉だった。


しかし今「奇跡」を体験し、ソーラの言葉の温度を感じ取れたような気がした。

(今まで、メリーや、ローニーさんの戦車や、死神や、太陽の神の光の柱だって、ウッジの力だって、メイシアの達成の鍵だって、全部奇跡だったのに、オラは何を見ていたんだろう…… )


「ストロー、すごい! どうやってトーラを呼び寄せたの……? って今は、それはいいわ。早くペンタクルのあの時みたいに、本を開いて何か道具を出してよ! 」

メイシアが、トーラを見ながら物思いにふけるストローの腕を掴んでゆすった。


「あ、ああ、うん。やってみる。」


今、ストローは何かがわかりかけていた。

世界の道理のようなもの。

今なら、何かできそうな気がすると、ストローは思った。


あの時、ペンタクルの神殿の上でトーラを使った時。あの時、どうやって使っただろう? と思い出す。


「……あれ? これってどうやって使うんだっけ? 」


「もー! しっかりしろよ、ストロー! 」

ウッジが不満げにつっこむが、仕方がないのだ。

なんたって、あの時は、ストローの意識して起こした奇跡ではないのだから。

無意識だったのだ。記憶すらない。

ウッジとストローが口げんかになったのを、メイシアが止めに入った時に、達成の鍵が光った。そして、その光がストローを無意識にさせたのだ。

しかしそんな事、誰も、本人すらきちんと覚えてはいない。



「ストロー、とりあえず、パラパラーっとトーラをめくってみたら? この前は、その本が開いて、中から弓と矢が出てきたんだから…… 」

メイシアが、握りこぶしを作って必死に助言をする。

「そ、そうだね、」

ストローが言われとおり、パラパラとトーラをめくってみる。


「………。」


何も起こらない。

本がめくれる乾いた音が、あたりに小さく響くだけだった。


「なんで? なんで、何も起こってくれないの? 」

ストローは焦った。

今、ここにいる全員が、これしか方法はないと思っているのだ。

希望はこれだけだと、期待されているのに、何も起こらない。


「なんで? もしかしたオラが正しい心の持ち主じゃないから? ねぇ、お願いだから、何か出してよ! カマディさんを助けたいんだよ! 」

ストローがたまたま開いていたページに向かって、悲痛に訴えた。


その時。

その開いていたページがふわっと光った。



「ぅわっ! 」


驚いたストローが、トーラを落としそうになった。

ストローの手からバランスを崩したトーラだったが、なんとか落下させることなく手の中にとどまった。

しかし、何かが地面に落ちた。


──コト


軽い、地面との接地音。

地面には柔らかい草が生えていて、音がほとんど鳴らない。


「高サンネーネー、ウトゥシムン。」

森榮がそれを拾い、ストローに渡した。

手のひらにすっぽりと入る大きさのものだ。

細長い形状をしている。


「あ、ありがと。」

ストローが握った手のひらを開いた。

「ストロー見せて。」

メイシアを初め、その場にいた面々が、ストローの手のひらを覗き込んだ。


「……? 」

「なんだ、コレ。」


覗き込んだ面々が首をひねった。


チビラーサン / びっくりした 素晴らしい

チムドンドン / 胸がどきどき

ウトゥシムン / 落とし物

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ