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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
69/96

122話 楽園 28/33

メイシアはゆっくりと、ナギィを離した。

そして、まっすぐにストローを見た。


「ストロー、アレ出して。」


「え? なに? 何だっけ? アレって言われても…… 」

ストローは慌てた。なんたって「アレ」と呼ばれる代物に、思い当たる節が全くないのだ。

ストローが今までメイシアに喜ばれた物といえば、トーヴァに、水に、サンダーサニアに、ジャングルで葉っぱで作った帽子に……と、瞬間的に色々と思い出すが、どれも今の状況では必要がなさそうなものばかりだった。

「もう、アレよ。アレ。アレハンドラさんに貰ってたじゃない。」


それを聞いて、はっと思い出した。

「トーラ! 」


「それ! もうアレしか頼れるものが無いわ。早く出して! 」

「うーん…… ごめん、メイシア。アレ…… 失くして…… んー、違うな、多分、いや、絶対、オズの家に置いてきて…… しまった……? 」


「えーーーーーー!!! 」


確かにストローは、ペンタクルの神殿で、アレハンドラから、誰かにことづかったという話しでトーラと呼ばれる聖書を渡された。

トーラと呼ばれたその聖書は、とても不思議な力を持っていて、あまりストロー本人は覚えてはいないのだが、そのトーラの奇跡により、死神を撃退しと言っても過言ではない。


アレハンドラはストローにこう言っていた。

『正しい者が正しい心で聖書をめくれば、必ず力を貸してくれる』と。

また、ソーラも『トーラとは、不思議な力を込めた聖書で、奇跡を起こす力がある』と。まぁ、同時に簡単に奇跡は起こらないと釘は刺されたのだが。


必要な時に、必要なものを与えてくれる奇跡の聖書。

それがトーラだった。


しかし、そのトーラ。

大切にしていたのは勿論なのだが、十六夜いざよいへ送られる時、誰一人きちんと荷物は持ってこなかったのだ。トーラも然り。


オズの家のリビングで、ゲオルクと話している時、ふらっと雪蘭シュエランが現れて、気が付けば船の中。

いつものリュックを抱える余裕なんて無かった。

全ての荷物は、雪蘭が……いや、オズという土地を支配している大きな力が、今も保管してくれていると思ってはいるが…… 今、手元にないのは事実。逆立ちしたって、出てこない。


メイシアは、落胆でよろめいた。

「そんな…… あれが最後の砦だと思ったのに…… 」

「ご、ごめん…… 」


自分が謝るのもおかしな話だと思いながらも、ストローはしょんぼりと謝った。

謝りながら、今トーラがあればなぁ……。トーラさえあれば、どうにかこの事態を打開できたのに、悔しいなぁ、と心底思った。

目を瞑り、トーラのイメージを思い浮かべていた。


──ここにトーラがあれば……。




その時だった。

ストローの目の前の空間に三日月形の光が現れた。

その三日月が、円になるようにクルンと一回転したかと思うと、三日月の弧が下に来たとき、その光からゴトンと四角いものが落とされた。

光は「何か」を排出し、一回転を終えると、その形を三日月形から垂直に伸び一本のまっすぐな光になると、プツンと消えてしまった。


その一部始終を、ストローをはじめ、その場にいた全員が、あっけにとられて見ているしか出来なかったが、ただ一人だけ森榮しんえいが、ゴトンと落ちた「何か」を無類の瞬発力で、キャッチした。


「高サンネーネー、これ…… 」

森榮が、その「何か」をストローに差し出した。

その「何か」を、放心状態で「何か」を見る事無く受け取る。

「あ、ありがとう…… 」


「ストロー、今の何? どうしたんだ? 」

ウッジが、何度も瞬きをした。

チャルカも、すごいものを見たと嬉しそうにはしゃぎだした。

「すっごーい! 本が出てきたー! 」


「本……? 」

「ちょっと、ストロー、それどうやったの? トーラじゃない? それ…… 」


メイシアが、指さしたその「何か」に視線を落とす。

知っている重みと厚みと大きさ。表紙の皮の手触り。

視界に入れる前から、わかっていた。


「なんで……? 」

ストローの手には、トーラが握られていた。

トーラ / 「35話 伝えられしもの 4/8」以降参照

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