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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
63/96

116話 楽園 22/33

その様子を、ユウナ、マタラ、チルー、そしてソーラとサンは、ほっとした様子で眺めていたが、事は何も変わることなく事態は一分一秒を争うのだ。

こうしている間にも、山原やんばるから黒い何かがスイを侵食しているし、カマディの身柄もどうなっているのかわからない。


「おい、娘たちよ。再会が嬉しいのはわかるが、そうもしていられない状況ではないのか? 」

優しい大人三人が、声をかけづらそうにしているにしているので、気を利かせたソーラが声をかけた。


「そ、そうなんです! 早く祝女ノロさまを助けに行かないと……! 」

「山原から、トイフェルの黒い雲もやってきているのです、どうにか手を打たねば…… 」

マタラとチルーが関を切ったように口々に訴えた。


「え?! マタラさん、おばあちゃんがどうかしたの? 」

メイシアの表情が一瞬にして不安の色に変わった。


「メイシアさん、祝女さまが牢に入れられてしまうのです……もうどうしたらいいのか……、」

「どういう事? なんで? なんでおばあちゃんが捕まえられないといけないの? 何があったの? 」

メイシアが、マタラのもとに駆け寄った。


「それは……、」

マタラがじっと見つめるまっすぐな瞳に耐えられずに、目線をそらしてしまった。心中は複雑なのだ。



ユウナが立ち上がった。

「やることは決まってるばぁよ。」

全員の視線がユウナに集中する。


「まず、メイシアグワァはマタラがムチュン、ニジリーメーとイユ汁をカムン事。アンサーニ、ウヌアトゥからウマンチュでカマディをタシキーンチュンデー! 」


「……え? 」

メイシアの頭の上にハテナが並んだ。ユウナが自分の名前を言ったことは聞き取れたが、それ以外は全く何を言っているのかわからなかった。

「そうですね。メイシアさん、とにかくこれを食べてくださいっ! 命薬ヌチグスイです。 これで、あなたのマブイに、力をつけてもらって体から離れないようにしてもらいましょう! 」


ずいっとマタラが、メイシアの前に小さな一口サイズのおにぎり七個と魚とアーサの入った味噌汁が乗った膳を出してきた。

「……う、うん。じゃぁ、」

マタラの勢いに押され、理解はしていないが素直なメイシアは、とりあえず箸を握りおにぎりを頬張った。




「では、妾たちもそろそろ戻らねばな。」

ソーラはメイシアの様子が安定したことを確認したので、とりあえず役目は達成されたのだ。

「えー、ソーラ。ボク、もうちょっとここに居たいよー。だって、全然みんなとおしゃべりできていないだもん。」

「何を言っている。この柱が消えぬうちに帰らねばならんことは、サンも知っている事だぞ。」

と、光の柱を指さした。


誰も気にする余裕なんて無かったが、そう言われれば、柱は二人が来た時よりも明らかに細くなっていた。

柱の中から、アレハンドラの声が聞こえた。

「そうですよ、サンさま。もう時間切れです。これでもかなりの時間、保ったのですから、諦めてください。」


「えーーー、でもぉ…… 」

サンがどうしようもないことが分かりつつ、食い下がる。

サンは自由奔放な感情に従うのが役目なのだから仕方がない。とりあえず、押し殺すという事は出来ない。頭でわかっていても心に落ちていないというやつだ。


「サンちゃん、またあそぼ。そっちに行ったら、また秘密基地に連れてってね! 」(※)

見かねたのか、はたまた、ただのあいさつか。チャルカがサンの手を取りながらにっこりとした。

「……し、仕方ないなぁ、あそこは誰にも秘密だから、チャルカだけだぞ。また、絶対に遊びに来いよな! 」

「うんっ。」


「ソーラさま……時間があれば色々聞きたい事だらけなのですが……、」

「ストローは、そうじゃろうな。……妾も話してやりたい事は山ほどあるが……言えない事の方が多いのじゃ。すまんな。」

「……そうですか、では仕方ないですね。今回は助かりました。ありがとうございました。……お元気で。」


「ソーラさま、ウチからも……。本当にありがとうございました。」

「ウッジは、もうすぐ妾たちのところに来るからな。前祝みたいなものじゃ。」

「……え! そ、そんな約束は……! 」

いきなり青ざめてオロオロするウッジを見て、ソーラがニヤリとした。

「いひひひ、冗談じゃ。」

「もー! ソーラさま! 」


「ウッジよ、聞こえますか?」

光の柱から、アレハンドラがウッジを呼んだ。

ペンタクルでは色々あり、精神的に上司と部下……いや、先生と生徒?のような関係が染みついてしまったウッジは、アレハンドラの呼びかけに背筋が自然と伸びる。

「はい!」

「そちらの様子は、おぼろげにですが、把握しています。……もし、わたくしの力が必要な場合は呼びなさい。」

「え? 呼ぶと言ってもウチ、呼び方なんて…… 」


「そこは夜の国といえども、太陽が昇る。太陽のあるうちは、ソーラさまとサンさまのお力が少しは届くという事。死神を追い払った時の事を覚えていますか? 」

「……はい……なんとなく……、いや、あの時は必死だったので…… 」

「それを太陽に向かってするのです。いいですか、太陽が隠れてしまっては、わたくしたちはどうすることも出来ません。手遅れになる前に、行動を起こすのですよ。」


と言っている間にも、光の柱は、徐々に細くなっている。

「いけない。サンさま、ソーラさま、お急ぎください。」


その言葉を合図に、ソーラとサンが光の柱へと足を踏み入れた。

光の粒が滝を流れる一滴の様に、ソーラやサンの体に触れると跳ね返り、美しい光景を作り出していた。

「それではな。皆が、健やかでいる事を祈っておるぞ。」

「じゃーねー! また遊びに来てねー、絶対だよ! 」


「ソーラさま、サン、ありがとうございました! 」

一際、メイシアが大きな声で、礼を言った。


うんうんと、ソーラが頷いたが、何かを思い出したように口を開いた。

「そうじゃ! そちらには何故だか、加護がついておるな、サブリ…… 」

と話の途中だったが間に合わず、昼の国からの来訪者は、消えてしまった。


「サブリ……? 」

「寒いって言ったんじゃない? 」

「なんで、急に寒いなんて言うんだよ…… 」

と、ストローとウッジが何でかそこそこと話す。



そこへ、ユウナが気合の入った声で、全員に告げる。

「さぁ、急いで御嶽うたきへ向かうさぁ! 何事もカマディがいないと始まらないばぁよ! 」

ムチュン / 持つ

ニジリーメー / おにぎり

カムン / 食べる

アンサーニ / そして

ウヌ / その

タシキーン / 助けに

イチュンデー / 行くよ


※スピンオフ短編 「セノーテの約束」を参照

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