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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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110話 楽園 16/33

「待って待って! マブイグミって何なんですか? オラたちにも教えてくださいっ 」

ストローが慌てて、会話に割って入った。


「あぁ、ごめんなさい。異国には無い儀式ですものね。マブイグミというのは、体から落ちたり離れたりしてしまった魂を元に戻す儀式なんです。転んだり、びっくりしたり、時にはくしゃみをした時にも、魂は落ちてしまう事があるので、マブイグミをするのですが、それは基本的には親族とか、誰でも出来るんですけど…… 」


「ヤサ。このネーネーは、魂が抜けて時間が経っているし、魂がかなり遠くまで行ってしまっているばぁよ。ワーたち清明シーミーがいて本当に良かったさぁ。」

ユウナが、メイシアの頭を撫でた。


「じゃ、そのマブイグミをしたらメイシアの魂は戻るんですね? 」

ウッジが、目を輝かせた。

しかし、ユウナの返事はの色は少し暗かった。


「出来るだけの事はやってみるばぁよ。ヤシガ、ネーネーの意識もないし、どこで落としたかも、今どこにいるのかもわからないからよ、そんじょそこらのやり方ではダメやっさぁ。」


「そんなぁ……。でも、オラも手伝います! 」

「ウチも! 」

「チャーもお手伝い、する! 」


「ちょっと、準備に時間がかかるかもしれないヤシガ、仕方ないねぇ…… 」

「え、時間がかかるって…… 急がないと、トイフェルとかいう悪魔も、こっちへやってきているんでしょ? 」

「そー。お空真っ黒だった! 」


「そっちも、どうにかしたいし、カマディさんを助けにもいかないと…… 」

ストローが不安のトドメをさす。問題はメイシアの事だけではないのだ。

厄介な問題が山積で、どうしたら全部を解決できるのか、いや、果たして、解決何て出来るのか、考えただけで気が問えくなりそうだ。


しかし、すぐに答えは出た。

ユウナが、先導する。


「……ヤサヤ……。ヤシガ、カマディが、このネーネーのヌチは特別アンスクトゥ……。とりあえず、時間トゥチぬ勿体ないからよ、今すぐ、マブイグミ ウガン、始めるぱぁよ! 」

それに賛同したチルーが声をあげた。

「そうですよ。とにかく、みんなで手分けをしてメイシアさまを、目覚めさせましょう! 」




まず、ユウナが指示したのは、手洗いの掃除だった。

担当したのは、チルーとストロー。元々きれいなので、そんなに時間はかからなかった。


マブイを落としたところで、石を拾ってこないといけなかったが、とは言っても、心当たりは御嶽うたきなのだが、今、御嶽へ近寄ることは、清明たちが集団で押しかけている事もあり、憚られたので家の周りの石を七つ拾った。

これは、チャルカが担当した。


次にユウナが担当して、この家のビンシーを用意した。

ビンシーとは、御願ウガンをする時に必要なものを一揃えを詰め込んだ入れ物の事。

ユウナがビンシーに、酒・水・塩・洗米アライミハナ花米ハナグミを揃えた。


サンというススキを束ねたものと、線香ヒラウコーは、納屋からウッジか持ってきた。

寝間着代わりの、着物も、メイシアが寝ていた部屋のタンスから一枚貸してもらった。


マタラは、一口サイズのおにぎり七個と、魚のお味噌汁を作った。


最後に、用意された石とサンは、ユウナが塩で清めた。




集まったウガンの道具を前にユウナが、誰ともなしに聞いた。

「ネーネーの名前はなんだったさぁ? あと、生年月日を教えてほしいさぁ。」

ストローが答える。

「メイシア・フーリーです。生年月日は……ごめんなさい、知らないんです。ウッジ知ってる? 」

ウッジが首を振った。


「うーん……困ったさぁ……、生年月日が分からないと神さまにこのネーネーのマブイを特定してもらえないかもしれないばぁよ……、」


行き詰ったかと一瞬全員が思ったが、一人、ウッジが閃いたような顔をした。

「あ、ちょっといいですか? あのー……ウチら、神さまに知り合いがいるんですけど、その神さまにお願いしたら、なんとかなりませんか? 」


「ハンマヨー! ……ンチャ、カマディが目を掛けているだけのネーネーやっさぁ。じゃぁ、いつもは便所ヤーフルーの神さまにお願いをするヤシガ、今回は、便所の神さまに、その知り合いの神さまに取り次いでもらう事にするさぁ。」


「そんなことできるんですか? 」


「んーー、ワーもやったことが無いから、やってみないとわからんねぇ。まぁ、ナンクルナイサァ、あはははは。」

あまりの軽いノリに一抹の不安が過ったが、ここはユウナに任せるしかなかった。



「では、ユウナさんに全てお任せしましょう。」

「え? マタラさんは? 」

「私も一応清明ですが、ほとんどの時間をこの島の御嶽で過ごしてきましたので、マブイグミ ウガンのやり方は知っていても、やったことが無いんですよ……お恥ずかしい話ですが。なのでここは、ベテランのユウナさんにお任せをしましょう。」


「ヤサ。大丈夫。ワーに任せるばぁよ。じゃ、まず、ネーネーを便所の前に運んで……。じゃ、タカサンネーネーが、メイシアグワァを運んで、他のウマンチュは東西南北に、線香を立ててくるばぁよ。」


ユウナが指示を出した。

ストローはメイシアを抱きかかえ、ユウナと一緒に手洗いの前まで移動。

ウッジ、チャルカ、チルーで、線香に火を点けて敷地内に線香を置きに回った。

ユウナは、台所へとお味噌汁をよそいに。


手洗いの前は、寝かされたメイシアとビンシーと寝間着。こちらの線香にも火を入れ立てた。

そして、サンを持ったユウナ。


マタラは、いつメイシアが目覚めてもいいように、黒塗りのお膳の上におにぎりとお味噌汁を用意していた。


全員が戻って来たことをユウナが確認すると、ビンシーを前に座った。


「では、始めるばぁよ。」

マブイグミ / 体から離れた魂を呼び戻す儀式

ヤシガ / しかし、だけども

アンスクトゥ / だから

御願ウガン / 神に対してお願いをする儀礼

ハンマヨー / 何て事だ

ンチャ / なるほど

ナンクルナイサ / なんとかなるよ

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