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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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109話 楽園 15/33

マタラの後を追い通された部屋には、確かにメイシアは寝ていた。


「メイシア! 」

ストロー、ウッジ、チャルカが、視界にメイシアが入るなり駆けよった。


髪に寝汗が滲んでいた。

悪夢なのか何処かが痛むのか、そこは分からないが、苦しそうに荒い息をしている。


マタラはメイシアの傍らに腰を下ろすと、額に乗せられた手拭いを取り、桶の水に浸し絞った。

「……メイシアさんも、昨晩からこの調子で……。」

そう言いながらマタラは手拭いをたたみ治して、メイシアの額に乗せた。


「メイシアは、病気なんですか……? 」

恐る恐る、ストローがマタラに聞く。

マタラは困った顔をした。

「わかりません。昨晩は熱中症だと思ってたのですが……。確かに、熱中症なのだと思います。そうだと思い、祝女ノロさまも力を使ってくださったのですが、一向に目覚める気配がいなのです、なので……、」


「マタラ、そりゃー、ワーの出番やっさぁ。どうして、ワーがここに来たと思っているの。カマディに、このネーネーを治す様に言われてきたばぁよ。」

そういうと、ユウナが腕まくりをした。

それを聞いて、マタラが驚いた様子で目を丸くした。

「昨日の今日ですよ? 一体どんな術を使ったのですか? 」

「そ、それは…… まぁその話は置いといて、とりあえず、このネーネーを治すのが先やっさぁ! 」


「ユウナさん、お願いします! 」

ストローとウッジ、チャルカが口々に、ユウナにお願いをした。

昨日の奇跡を体験している面々にとって、起き上がる事も出来なかったウッジの腰をいとも簡単に治したユウナは信頼できる医者なのだ。

そうしている間も、メイシアは、苦しそうに魘されていた。


「あい、マカチョーケ! あらあら、辛い夢でも見ているのかねぇ。可哀想チムグリサン…… 」

ユウナが、メイシアに覆いかぶさる勢いで、傍らについている三人と反対側に胡坐をかいた。

とりあえず、両手を上からメイシアの左右の脇にかざした。

昨日のカマディの様に、小さな青い光の球体を作り、それぞれメイシアの脇のあたりから、メイシアの体にその光をしみこませた。

波の様にその光はメイシアの体を駆け抜けると、スッと消えた。

「わぁ…… すごいきれい…… 」

ウッジが感激の声を漏らした。


しかし、ストローもチャルカもピンと来ていないようで、ウッジは何を言っているんだ? という顔した。

「え? 今の綺麗じゃなかった? 」

「何が? 」

「ウッジ、へん~ 」


「変ってなんだよっ。見えなかったの? 今すごいきれいな青い光が、メイシアの体を……すーーーって、こっちから、こっちに。 」

ウッジが、メイシアの体を指さして自分が見たことを説明するが、やはり、ストローとチャルカにはさっぱり伝わらない。

「チビラーサン!腰が痛いネーネーは、清明シーミーやっさぁ! 」

ユウナが驚いたようだった。

「チビ……、チビ? 」

「ウッジさま、チビラーサンは、驚いたとか、素晴らしいって意味ですね。」

チルーが後ろから助け舟をだした。


「いやぁ…… 素晴らしいって言われても…… ただ光が見えただけで、ウチは何もしていないですから……、」

「ウッジには、さっき光が見えたの? っていうか、他の清明の……マタラさんにも見えていたんですか? 」

ストローが問うと、マタラが「はい。」と答えた。

「わぁ…… オラには全く見えなかったなぁ……。昨日の夜ももしかして、ユウナさんの手から、オラには見えない光が見えていたんだろうか? 」

ストローが少し残念そうに首をひねったが、チルーも少し残念そうだった。

「私も、そんなにきれいな光なら、見て見たかったですね…… 」


「……うーん。なんでウチだけ見えるんだろうね。って、それはいいとして。ユウナさん、メイシアはもう大丈夫なんですか? 」

メイシアを見ると、確かに火照ったような顔の赤みは消えていた。しかし、まだ魘されていて目を覚ましそうにない。

「メイシア! 起きて! 」

チャルカが、メイシアをゆすった。


「それがやっさぁ……、もう大丈夫なはずばぁよ、でも、起きないねぇ…… 」

「そんなぁ……。メイシア! メイシア、目を覚まして! 」

不穏な状況に、ストローの顔が青くなった。

もちろん、ウッジもだ。


「ちょっと見てみるからよ、」

ユウナが三人をメイシアの体が剥がし、目を瞑り頭から足まで手をかざした。まるで、手がレーダーでメイシアの中の状況を探っているように。


「んーーー…… 」

「どうなんですか? ユウナさん、」


「ちょっといけない状況やっさぁ。」

「え?! 」

「いやいや、身体はもう大丈夫ばぁよ? でも、このネーネーのマブイがここにないねぇ。マブイウトシさぁ。」


「マブイ? 」

すかさず、チルーが通訳をする。

「マブイとは、魂の事です。十六夜いざよいの人間は、くしゃみをしても魂が取られてしまうと信じており、おまじないをしたりします。」

「魂?! ちょっと! 大変な事態じゃないか! 」

メイシアの魂がここにないと聞いて、ストローが慌てた。ウッジもより一層顔を青くてして、泡でも噴いて倒れてしまうんじゃないかという状態だ。

チャルカはそんな二人の空気を読んで、今にも泣きだしそうだった。


「マブイグミするしかないねぇ。」

「そうですねぇ、マブイグミしますか。」

そんな三人をしり目に、ユウナとマタラが冷静に話した。


「それなら、私も協力できそうです。マブイグミしましょう。」

と通訳を忘れて、チルーまでマブイグミに賛同した。

マカチョーケ / 任せなさい

チビラーサン / 驚いた、素晴らしい

マブイウトシ / 魂が体から離れる事

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