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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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98話 楽園 4/33

一行は、出発の準備を終えると、馬を宿に預けて徒歩で港へ向かった。

宿のある集落から一番近い海岸は、引き潮になれば磯遊びが出来るような浅瀬なので、少し移動しないといけないのだ。


港と言っても、簡素な木製の桟橋があり、漁船らしい船が何艘か停泊しているだけらしい。

その桟橋の一番奥に停泊している船が、女将に話を通してもらっていた船だということだ。


「そういえば、ウッジ。もう腰は大丈夫なの? 」

普通に歩いているウッジを見て、ストローが声をかけた。


「そう、それ! もうすっかり。全く痛くないの。すごいね、清明の力って! 」

ウッジが、腰に手を当てて上半身をねじって見せた。

昨日は、もしもこんな事をしたなら、きっと痛みで気を失っていただろう。

ウッジが自慢げに、何度も腰をツイストして見せてくる。

「……うん、よかった。ほんと、ユウナさんに感謝だね。」


「ウッジ、良かったねぇ! 」

「きゃりっ! 」

チャルカとメリーが脳天気に、ストローのおめでとう話に便乗した。


ウッジが、昨晩の事は忘れていないとばかりに、二人に視線を落とす。

「……チャルカ、メリー。ウチは昨晩の二人の狼藉、これっぽっちも忘れないからなぁ……」


「ヒィ……、ウッジ、ごめんなさぁいっ! 」

チャルカが謝るが、ウッジにすれば昨日の痛みを覚えてる今、あの行動を許す選択は皆無だ。


「チャルカ……。次、どこかでニンジンかピーマンが出てきたとき、覚えておきなさい。」

「やだーー! 」

チャルカの苦手なものは、ニンジンとピーマンなのだ。


「メリーには……そうだなぁ……、」

メリーの苦手な食べ物なんて知らないウッジが言葉を詰まられた。


意外なところから助け船が出た。


「それなら、ノニという果物はいかがですか? 身体には良いそうなのですが、味が強烈で……。あと、ゴーヤという野菜もありますよ。十六夜いざよいの者は好んで食べるのですが、外国の方には苦くて食べれないと言われますよ。」

チルーが、お仕置に使えそうな十六夜の食材を教えてくれたのだ。


「それだ! メリーには、そのノニとゴーヤを食べさせる! 」

それを聞いたメリーが、チャルカの肩から髪の中に隠れて、グゥグゥと言って抗議をした。


「……チルーって、まぁまぁすごい性格しているよね、わざわざそんな情報を、、」

「え? なんですか、ストローさま? 」

ストローは、にっこりとするチルーに、打ち解けるとこういう人なんだなぁと思いながら笑顔で何でもないよ、と返した。





港に着くと、一番奥に停泊している船の近くの木陰で、男性が寝転がっていた。

男性は、ベージュ地に茶色の縦じまの入った着物。クバ笠を顔に乗せているため、寝ているのか起きているのかはわからなかった。


近寄ってみたものの、気が付かないのか起きない様子なので、声をかけてみる。

「おはようございます……宿の女将さまに紹介をしていただいた、船頭さんでしょうか? 」

チルーが屈んで男にそう言った。


男は、大きく背伸びをすると、のそのそと上体を起こした。

あらかじめ除けなかったクバ笠が、男の膝に落ちた。


「ハイサイ、ウンジュが魚釣ユイチャーに行きたいっていうウチャクさんねー」


目を擦りながら男性はそういうと、ちょっとここに座れ、と言わんばかりに手招きをした。

一行は「? 」となりながらも、男性を少し囲むような感じで近寄った。


「まだフニは出せないからよ。イイン。」

男性がまた木陰に座れと、手で地面をトントンとした。


慌てたのはチルーだった。

「え? 私たちは、急いでいるのですが……どうして、出発できないのですか? 」

珍しくチルーの顔に動揺が見える。


男性は全く動じない。

「アランドー。もう一人チュイウチャクがあるからチュンさぁ。」


そう言った男性が、何かを見つけたようで、ストローたちの後ろに手を振った。


「おーー、来た来た。」


男性の視線の方へ全員が振り返った。

そこには、昨晩のウッジの救世主、ユウナが立っていた。


「ハイタイ! 朝清ちょうしん、ニフェーデービル。」

ユウナが、親し気に男性に挨拶をした。


「ユウナさん!」


「ハイタイ! ウマンチュお揃いで。ワーもアッタ行くことになったばぁよ。向こうまで、ユタシク ウニゲーサビラ。」


ユウナが丁寧にお辞儀をした。


「えぇ! それは構いませんが、急に一体どうして……? 昨晩はまったくそんな様子じゃなかったじゃないですか。」

「いやー、ワーも驚いたさぁ。 夜遅くにカマディーの使いが来てやー、一人熱が出たものがいるから治しに来てほしいって言われたばぁよ。」


「まぁまぁ。その話は、船ん中で。じゃ、そろそろ出発タチュンやっさぁ。」

男性はそういうと、クバ笠を頭に乗せ、船へと歩き出した。

「あぁ、ワンの紹介をしてなかったさぁ。ワンは朝清ちょうしんやっさぁ。まぁ、ユタシク ウニゲーサビラ。」

朝清と名乗った男は、手早く、出航の準備をすると、早く乗れと手招きをした。


あれよあれよという間に、船は沖へと滑り出した。


イイン / 座る

アランドー / 違うよ

ニフェーデービル / ありがとう

ユタシク / 宜しく

ウニゲーサビラ / お願いします

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