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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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65話 魚釣島の清明 1/16

心が弱いとはどういう事だろう。

心が強いとは。

ただの断片。私はこう思う。


魂の大きさ。

自我を持つ生き物は、入れ物に見合った魂が用意されている。

しかし、稀に入れ物に見合わない、とてつもなく大きな魂を持って生まれてしまう者がいる。

窮屈な入れ物の中で、魂は抑圧され押し付けられ苦しみ、行き場を探す。

行き場を探し、暴れ、入れ物を傷つける。

逆も然り。

入れ物よりも小さな魂は、入れ物の中でぶつかり傷つき、何かにすがりたくても、縋るものもなく、ただ魂を傷つけ続ける。


魂の大小が価値ではない。

入れ物……器との調和・不調和が、生きやすさを決めるのだ。


そう。

私の器は魂に合っていなかったのだろう。

そんな事を考え続けてしまう私は……そんな事を考える自由はとっくに失ったのに、考え続けてしまう私は……。


自分の運命を呪い……いや、違う。

諦めたはずの私を諦められていなかった私を呪った。


だから世界に混沌が訪れ、私は「落ちた」。

ただそれだけの事。


私は気が付いていた。

そうだ。

とっくの昔に知っていた。

私は「そうなった」訳ではない。

もともと「そうだった」のだ。




私は「空っぽ」なのだ。





落とされたのに死ねない私は彷徨った。

私は自らを終わらせることも許されず、私を誰かに終わらせてもらう事も……こんなに自分勝手を貫いて落ちた私にも出来かねる。

自分以外の者に、そんなかせめられぬ。


彷徨って彷徨ってどれくらいの年月が経っただろう。

辿り着いたこの南の島で、お前に出会ってしまった私を許しておくれ。

お前は私が何者かも知らず、自分の巣を守るために、生きるための刃を私に向けた。


私は死ねぬ身。

許しておくれ、小さなサソリよ。

私が呪われた身でなければ。

私が彷徨い疲れて、あんなところで倒れていなければ。

いや、私が私の運命を受け入れてさえいれば、お前は死ぬことは無かった。


私に出来ることはお前を忘れぬように、夜空の星にすることだけだった。

今でも、お前は私を責めながら見てくれているのか。


すまない、サソリよ。

星に見下ろされた私に残された道は、この罪を悔いて、身を焦がし人に尽くすことだった。

以前の私には出来なかった事を……自らの周りの世界だけでも正しくしようと。

しかし、今思う。

どうして私は、あの時、私の命をお前にくれてやらなかったのだろう。

あの時、私の魂よりも、お前の魂の方が輝いていたというのに。


すまない、サソリよ。

私はお前の死を、私の最大の罪として受け入れると誓ったのに、

私はまた、間違いを犯してしまっていた。


サソリよ。

お前ならどうするだろう。

守る事も出来なかった私が、守ってもらえるはずもないのに、ただのうのうと愛される事に甘え、私はここまで来てしまっていたのだ。

もう私の為に奪われる命は、欲しくない。


そうだ。サソリよ。

私もお前のように、赤く輝く命になろう。

もう何人なんびとも奪えなくしてしまおう。

こんな私を許してくれるか? サソリよ。


この身をお前に捧げる。

どうか私を、お前の魂の結晶にしてくれ……

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