5チュン目
話を端折ればお使いのお願いだった。
川下った先の沼地をこの森と同じ様に制圧し、水の大精霊に返還。有るべき姿に戻すと言うものだった。
ようやく転生物っぽくなってきた!
今この世界はあちこちから魔物の侵略を受けており、大精霊が管理できておらず歪みが生じ始めているらしい。
何故、急に進攻を始めたかは不明。
そしてその歪みに乗じてあちらこちらの世界から渡ってきた所謂「迷い人」と言う存在がいるらしい。
わたしもその迷い人の1人だ。
迷い人は転生物のテンプレよろしく特別な力や知識を持っている者が多く人間の国は奪い合い時に戦争も起こるのだとか。
有名な話では歌で人の心を魅了する歌姫と呼ばれた迷い人がいたそうだ。
そしてあまりにも魅了し過ぎて大国数国を巻き込んだ大戦争を引き起こした。
この歌姫の話は迷い人の力の強さを示す為、人々の中だけでなく亜人や精霊にも広く語り継がれているとか。
すごい人もいるんだね。って他人事だったら、貴女の具現能力の十分非凡である。と返されてしまった。
「なら、この森と同じ様に魔物狩ってくればいんだね?」
「方法は問いませんが……貴女には交渉は無理でしょうね。武力解決で良いと思います」
それ褒めてる?けなしてる?
「それが無事に終われば貴女も人の街へ行けるでしょう」
「うん?それどういうこと?」
「詳細については私も知りませんが、並大抵の人間は自力で対処できる様になるまでは人間と接触させるなと指示でして」
「ほう?」
「他人が入ってこない様に、また貴女が出られないように結界で覆ってました」
「ちょっとまてぇ!それ拒否権ないやつ!」
「一生この森で過ごすのであれば拒否していただいても。あ、一緒にここ管理します?」
「お断りです。わたしはもう行きます」
いつも髪洗ってくれた妖精さんがちょっと寂しそう。
「バイバイ。また落ち着いたら遊びに来るね」
「まぁ嬉しい」
「お前じゃないよ駄位精霊。報告には来るけど」
「ちなみに貴女が妖精だと思っているのが精霊で、精霊だと思ってるのが妖精です。じゃないと私は人型じゃなくなります」
「え!?そうなの!?ごめんねー。よしよし」
等と茶番をして出発。今回は目的地がハッキリしているのでズンズン進む。
川の上を爆走。
滝を飛び降り。
熊と川魚を奪い合い。
湿地帯のトカゲ人みたいなのとバトって。
目的の沼地に到着。
3日かかりました。思ったより遠かったぞコノヤロウ!
トカゲ人とは時速20kmぐらいで歩きスマホしてたらぶつかって揉めた後、宴会してて丸1日潰れた。何か姫か時期族長にされそうな勢いだった。
歩きスマホは危ないので絶対にやめましょう。
沼地は昼も夜も暗く、ドロリとしたした水面は時々ゴポゴポと気泡が出ていていかにもやばそうだった。
有毒ガスとか出てて気がつけば中毒死なんて無いよね?
毒対策とか出来ないかな?無機物だから吸収したり、魔力でバリアーとか?
フワリと碧い光が右手から出たかと思うと自分を覆うように幕を張った。
何かよく分らんができた!よしいくぞ!
「あわわわわ……」
やってもうた。
沼大炎上。
沼にはワニとか蛇の魔物が中心に生息しており、最初はちまちま撃っていた。
が、奥に進むにつれは小さな虫みたいな撃てない魔物が登場。
燃焼弾を空中起爆して燃やしていたが段々面倒になってきて。
メガトン級の超大爆発弾を使ってしまった。
目の前にはこの世の終わりかと言わんばかりの光景が広がっている。
環境破壊どころか地形が変わっている。
魔力も弾より爆発から身を守るために殆ど使ってしまった。今とてもお腹が空いています。
でも全部吹飛ばしてしまったので食べる物がありません。悲しい。
炎が消えないところを見るとどうやら気泡は可燃性ガスだったのだろうと的外れな事を考えてしまう。
安全そうな場所に座り精霊さんから貰ったよく分らないけど甘い干した実をモゴモゴと口の中で転がす。
保存食っぽい物は鞄にしまっていました。
すごい魔力が回復してるからきっと何か特別な木の実だったのかもしれない。おいしい。
火か消えるのを待ちます。ボスの死を(あわよくば食べたい)確認するまでは帰れません。
それに地上は吹飛ばしたけど地中や水中に居たら倒せていないかもしれない。
勝手に鰻みたいなヤツがボスだと思っているのです。
ゴゴゴゴゴ
いい加減飽きてきた頃、地鳴りがしてきました。どうやらボスの登場らしいです。
爆音と共に水柱が空高く打ちあがる!おぉ!ボス戦前っぽくてテンション上がりますね!
どんなボスかな!?楽しみ!
「私です」
「帰れ!駄位精霊!」
わたしのワクワクを返せ!
少し口論になりましたが目的は達成らしいです。
地形が変わってることは特に問題にならないそうです。
「ちなみにここのボスってなんだったの?」
「確か女王蜂ですね。巨大な蜂です。貴女の5倍位の体躯です」
え、そんなデカイヤツなんて見てないぞ!?
でも蜂かー虫はおいしくないんだよね。よかった。
もしかしてボスって基本的に不味いのかな?
「ベヒモスという巨大な牛の魔物は美味だと人間の貴族間では高額で取引されているそうですよ?」
「マジで!当然ボスなんでしょ?」
「その様です。噂では隣の大陸にいます」
別大陸か・・・遠いなぁ。
「貴女はこの世界を救う旅をグルメツアーと勘違いしてませんか?」
「何で世界救済ツアーに格上げしたし。拒否権行使したいんだけど?」
「もう乗りかかった船ですしこのまま進めませんか?」
「その船がこんな泥舟じゃなかったらね」
「嫌ですね。せめて石の船ぐらいですよ」
どっちにしろ沈むじゃないですかー。
またしばらく揉めたけど世界救済は引き受けなかったが旅のついでで良ければ他の大精霊と協力する事で話はまとまった。
他の大精霊はこんなアホじゃないといいなと思いました。
それと約束どおり結界は解いてくれる事になった。これでやっと人に会える。
「スマホにマップアプリ?が追加されたそうなので、街の方向は分るかと思います」
スマホを確認すると見慣れたマップアプリのアイコンがあった。
現代っ子はこれないがないと直ぐ迷子だよ。
「それとこの子も連れて行ってあげてください」
と、現れたのはいつもお世話してくれた精霊の子だった。
よく見るとメイド服着用だった。え、すごくない?いつも水色のワンピースだったのに。
一緒に水晶で出来た瓶も渡された。この中に魔力を液体にして満たしておけば精霊さんは大丈夫らしい。
切らさないように注意だけすればいいとか。
早速補充。右手からジョバジョバーっと。
あ!
「食らえ!水掌波!」
「きゃっ!?」
折角なのでいつかのお返しに駄位精霊に魔力液をぶっかけておいた。また揉めた。
「戯れはこの辺りにして、私は仕事に取り掛かりますね。」
大精霊が両手を広げるとさっと霧が広がりあっという間に辺りは真っ白になってしまった。
少し気温が下ったが、それがまるで空気が洗われているかの様な清々しさを感じる。
「もう結界は解除していますからお行きなさい」
「うん。何だかんだありがとう」
「いえ、いつでも頼ってくれて良いんですよ?私達の勢力下の水辺でしたらいつでも行けますから。」
「あ、結構です。この子も居るんで」
いつまでも駄位精霊と付き合ってたらわたしまでアホになってしまう。