7・捜索。
召喚が失敗なのはすぐに分かった。
勇者以外の者まで呼んでしまったのだ。
しかも彼女は呼びきれずにコノ場所では無い所に飛ばしてしまったようだ。
そう……彼女……女性にはコノ世界は危険だ。
危険なので保護されるが同時に男性並みの権利は与えられていない。
未亡人ともう出産の望めない年齢の女性が少しだけ認められては居るが……
勇者のレベルが想定より高すぎたのかも知れない。
彼女と勇者の絆が強かったから一緒に引き込まれたのかも……
あの勇者に私では対抗できない。
彼女までコノ世界に呼んでしまったと気付かれたら召喚目的のドラゴン退治など
引き受けてくれないと思う。
召喚で消耗したフリをして勇者の前から逃げ出した。
勇者がドラゴン退治をしている間に彼女を見つけなければならない。
おおよその方向はなんとか掴めたので捜索して欲しいと枢機卿達に願ったが
そんな不確かな相手など探せないとほざいた。
なので召喚で力を使い果たしたから引退して故郷に戻りたいと申し出た。
「力」が無くなったタダの老婆など用済みとばかりにさっさと認められた。
フン! 散々こき使って来たのにたいした慰労の言葉も無かったよ。
枢機卿だとか神殿長だとか威張っててもお前等だってもう大した「力」は
持ってないのは知ってるんだゾ。
故郷の村までは若い神官達が送り届けてくれた。
コイツラが付いてこなければさっさと彼女の捜索に取り掛かれていたのに。
なまじ尊敬のまなざしなんか送られると、「さっさと帰れ!」とも言えなかった。
故郷の者達は歓迎してくれたがもう知っている者はほとんど残っていなかった。
留まることを勧められたが、神殿から出たのは間違って呼んでしまった彼女を
探すためなのだ。
分かっているのはおよその方向と彼女の波動だけだ。
波動は個性があるから人を見分けるのには便利だが近くでないと無理なのだ。
ともかく彼女がいるとおぼしき方向に向かって旅をすることにした。
さすがに歳なので歩くのは無理がある。
乗り合いの馬車で移動するのだけれど魔物やら魔獣やら果ては山賊まで……
ドラゴンが出なくても充分危険なようだ……旅をするというのは。
聖女と認定されてからほとんど神殿から出ていなかったから世間にも疎い。
魔物なんかにはまだ負けないけれど人間の相手は敵であれ味方であれシンドイ。
歳なんぞとるものじゃあないねぇ。
襲撃されれば負傷者がでることもあるが今のところ死者までは出していない。
まあ、元とはいえこれでも聖女と言われていたからね。
回復魔法の腕はまだまだ落ちていない。
確かにアノ召喚で「力」が落ちたとは思う。
でも、彼女を見つけて勇者と共に元の世界に帰さなければ死んでも死にきれない。
彼等にしてみれば勝手な召喚でしかないのだ。
我々がどんなに切羽詰まっていたとしても……
彼女がどうかまだ無事でいますように。
理不尽な目にあって居ませんように。
祈りながら願いながら旅は続く。
もうじきこの辺りだろうと予想した場所に着くハズだ。
……どうか……見つかりますように……