43・ケンタ。
今回で最終回です。
作品の中で短編を除けば一番短いものになってしまいました。
もう少し長めのお話にしたかったですが気分が袋小路に入ってしまいました。
無理に続けるとボロが出そうなのでこの辺りでお暇させることにしました。
最終回でも大きな展開はありません。
その辺りが敗因かもしれませんね。
オレは異世界で産まれた。
所属は父母の世界ということになってる。
でもいくら考えてもあの世界が故郷としか思えない。
ロブの居るあの世界……
時間の流れがあの世界とは違う父母の世界にはなかなか慣れなかった。
それでも勇者達の集う「体育館」のお兄さん達は親切だったよ。
ホントにコレはドラゴンなのか? と思ったチビドラゴンも楽しい遊び相手だった。
学校の勉強は結構大変だったけど勇者の兄さんや神官さんが色々教えてくれた。
まあ、勉強より大変だったのは身体能力がココの子供とはかけ離れていたことだ。
封印具や時々かけられる妙な呪術が欠かせない日々だった。
うっとうしく感じても「普通」でいないといけない。
ココはロブの居るあの世界じゃあないから……
母は優しい人だった。
オレがほんの二年で七歳になっていても受け入れてくれた。
一緒にこの世界に帰れなかったのを何度も何度も謝ってくれたんだ。
事情は老聖女や神官様やロブから聞いてたから怨むとかそんな気は
なかったんだ。
気にしなくても良いよ。と言ったら泣かれてしまった。
夏休みの度に一週間ほどあの世界に行かせて貰えた。
行かせて貰えたけど……
みんなどんどん大人になっていくしロブはどんどん老けて行く。
時間の流れ方が違うと分かっていても置いて行かれるような気分になった。
それでもロブはオレの大事なロブだ。
ロブの所へ来る依頼なんかを手伝ったり大人になっちゃってる友人達と遊んだり
あの世界に行く度に自分が深呼吸していると感じた。
やっぱりあの世界はオレの故郷だと思う。
でも父や母にはソレは言えないことだった。
言うな! と言われた訳じゃあ無い。
でも言ってはイケナイことだと思ったんだよ。
父母の前ではあの世界のことは小さな事でも禁句になっていた。
ココでは魔法も無いことになっているし魔物・魔獣の類も居ない。
人はあきれるほど居るのにな。
そうしてソレを不思議ともなんとも思ってないんだ。
そのことにはいつまで経っても慣れなかったね。
「体育館」の師匠の仕事をお兄さん達は手伝っていた。
中学に入った頃から見習いのようにそういう仕事を手伝わせてもらったんだ。
いろんな世界にお兄さん達に付いて行ったよ。
でもやっぱり一番落ち着くのはあのロブの居る世界だった。
母が妹を産んで二年ほどの療養のあとで死んだ。
ロブに伝えたらリンゴの木の下で泣いていた。
……ロブは……
「リンゴの木」……リンゴ……
ロブの居るこの世界に父母の世界の「リンゴの木」が有るのは……
ロブには聞いてはイケナイことだと思った。
なのでコルナス神官さまにこっそり聞いてみたんだ。
……それは……
この世界のことが父母の前ではタブーな訳だと思った。
ロブには何十年も前のことでも父母にはまだほんの十年ほど前なのだ。
オレはそれをつついてしまわないように気をつけなければいけなかったんだ。
それでもオレはこの世界に年に一度は来てしまう。
ロブが死んでも……
そうしてオレはリンゴの木を見上げる。
ロブは村のこの木のそばによく連れてきてくれた。
リンゴ……母の植えた木の側に……
ココの世界の神様は次の勇者が産まれるまで時々世界を見回って欲しいという。
引き受けたよ、もちろん。
オレの所属が向こうの世界でも故郷はココなんだと思っているからね。 【終】
【エピローグ】
コルナス神官は後年枢機卿となり「リンゴの木」を「聖木」とした。
秘密にされていたロブが勇者だということもキチンと記録として残した。
「リンゴ」も聖木を植えた聖女として老聖女の弟子として記録されている。
老聖女の残した召喚陣とソレにまつわる資料は解析されたが
コルナス枢機卿によって神殿の奥に厳重に封印された。
二度と使われないようにという祈りと共に……
ロブの村は聖地となり巡礼者も来るし若い神官も研修に廻る場所となった。
ロブが整えた訓練施設も残って居るので冒険者達の拠点・ギルドも設置されている。
どうやら村は街へと格上げされたようだ。
リンゴも勇者・ロブも死んじゃうという方向に転がるとはいささか予想外でした。
やっぱりハッピーエンドじゃあないと書くのは大変だと悟りましたよ。
でもまあ、残ってるリンゴも勇者も存在します。
勇都親子とリンゴの木ですね。
リンゴにはほとんどしゃべらせませんでした。
ヒロインはそこに居るだけでもヒロインが勤まるんじゃあないかと思ったので。
目標十万字のつもりでしたがやっと半分でした。
反省してまーす。
ちょっとでも楽しんで頂けたなら嬉しいです。
ではまた!