表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/43

41・次の勇者。

 ロブが死んだと神殿に連絡が来たのは前回ケンタが来てから三年ほど経った

まだ春も浅い頃だった。

もう老人にはなっていたが元気で後進の指導をしていたのだが。


私はわずかながらエルフの血を引いているので皆よりは老け込まずにいる。

それでも私ももう老人と言っていい歳だ。

ロブが死ぬなんて考えもしなかったが年月は等しく皆の上を過ぎて行くのだな。


村に着いたらケンタが来ていた。

どうやらロブの死には間に合ったらしい。

最後の懺悔は彼が聞いたんだそうだ。

でも内容は教えてくれなかった。

まあ、多分……


遺言は自分をリンゴの木の下の母親の墓の隣に埋めてくれるように

ということだった。

財産は全て神殿に……ということになっていた。

そうしてリンゴの木を切らずにおいて欲しいと。


勇都の妻が植えたという「リンゴの木」。

枝から苗木が作られてこの地方中に植えられたのだ。

土地を浄化し皆に冬の食料を与えてくれる貴重な木だ。

ここの地方の者なら誰も切ろうなどとは考えないだろう。


ケンタがどうやったのか勇都にも知らせたようで彼も来ていた。

何も言わずに埋葬されるロブを見つめていた。

コチラでこれだけ時が流れても勇都にはまだほんの十年ほどでしかない。

まだまだ彼には生々しい傷なのかもしれない。


リンゴは二番目の子供を妊娠したのだそうだ。

勇都は産むのを反対したのだという。

それでもリンゴは子供を諦めなかった。

でも、健康というのにはとても言えないほどあちこちが脆くなっていたそうで

子供はなんとか無事に産まれたけれど……

リンゴは普通に生活することができなくなったそうだ。


「それでも二年ほど頑張ってくれたんだ。

娘の世話が出来ないことを悔しがっていた。

娘はきっと母のリンゴのことを忘れてしまうだろう。

ココのあのリンゴの枝を貰って行ってもいいか? 

せめて所縁ゆかりのモノを増やしてやりたいんだ」


リンゴが植えた木なのだ。

枝の一本や二本なんてコトもないと思う


ロブが死んだのだからもうケンタはこの世界に来ることは無いだろうと思った。

それでもケンタはまたやってきた。

なぜ? 


「所属は向こうの世界だけどオレってココで産まれたからね。

毎年ココに来るのが楽しかったし。

それにココの神様から頼まれたんだ。

次の勇者が産まれるまで時々で良いからこの世界を見回って欲しいって」


毎年……ね。

友人達がどんどん大人になって老けて行っても彼は若かった。

向こうの世界とココの世界で時間の流れが違うのだから仕方の無いことだが。

それでもココに愛着を感じてくれていたのか……

ロブだけがココに来る目的なのかと思っていたよ。


ココで次の勇者が産まれるのは何時いつになるのだろう。

なんだかもう少し後でもいいな……と思ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ