41・次の勇者。
ロブが死んだと神殿に連絡が来たのは前回ケンタが来てから三年ほど経った
まだ春も浅い頃だった。
もう老人にはなっていたが元気で後進の指導をしていたのだが。
私はわずかながらエルフの血を引いているので皆よりは老け込まずにいる。
それでも私ももう老人と言っていい歳だ。
ロブが死ぬなんて考えもしなかったが年月は等しく皆の上を過ぎて行くのだな。
村に着いたらケンタが来ていた。
どうやらロブの死には間に合ったらしい。
最後の懺悔は彼が聞いたんだそうだ。
でも内容は教えてくれなかった。
まあ、多分……
遺言は自分をリンゴの木の下の母親の墓の隣に埋めてくれるように
ということだった。
財産は全て神殿に……ということになっていた。
そうしてリンゴの木を切らずにおいて欲しいと。
勇都の妻が植えたという「リンゴの木」。
枝から苗木が作られてこの地方中に植えられたのだ。
土地を浄化し皆に冬の食料を与えてくれる貴重な木だ。
ここの地方の者なら誰も切ろうなどとは考えないだろう。
ケンタがどうやったのか勇都にも知らせたようで彼も来ていた。
何も言わずに埋葬されるロブを見つめていた。
コチラでこれだけ時が流れても勇都にはまだほんの十年ほどでしかない。
まだまだ彼には生々しい傷なのかもしれない。
リンゴは二番目の子供を妊娠したのだそうだ。
勇都は産むのを反対したのだという。
それでもリンゴは子供を諦めなかった。
でも、健康というのにはとても言えないほどあちこちが脆くなっていたそうで
子供はなんとか無事に産まれたけれど……
リンゴは普通に生活することができなくなったそうだ。
「それでも二年ほど頑張ってくれたんだ。
娘の世話が出来ないことを悔しがっていた。
娘はきっと母のリンゴのことを忘れてしまうだろう。
ココのあのリンゴの枝を貰って行ってもいいか?
せめて所縁のモノを増やしてやりたいんだ」
リンゴが植えた木なのだ。
枝の一本や二本なんてコトもないと思う
ロブが死んだのだからもうケンタはこの世界に来ることは無いだろうと思った。
それでもケンタはまたやってきた。
なぜ?
「所属は向こうの世界だけどオレってココで産まれたからね。
毎年ココに来るのが楽しかったし。
それにココの神様から頼まれたんだ。
次の勇者が産まれるまで時々で良いからこの世界を見回って欲しいって」
毎年……ね。
友人達がどんどん大人になって老けて行っても彼は若かった。
向こうの世界とココの世界で時間の流れが違うのだから仕方の無いことだが。
それでもココに愛着を感じてくれていたのか……
ロブだけがココに来る目的なのかと思っていたよ。
ココで次の勇者が産まれるのは何時になるのだろう。
なんだかもう少し後でもいいな……と思ってしまった。