40・涙。
日々が過ぎていく。
俺は農民のはずなのだが村の神官をいつの間にかさせられている。
冒険者たちやが時折立ち寄って修行をつけてくれというので適当にあしらったり
神殿の若い神官達が研修とか言ってやってくるのでその相手をしたりと忙しい。
神殿や王族貴族から依頼が来ることもある。
コルナス神官が適当に選別しているらしく一時よりは数は減ったようだ。
相手によって資金と資材と人材をふっかけたりしているのだが余り文句も来ない。
ふっかけてるって気付いててもいいはずなんだが。
ケンタは時折やってくる。
間が三年だったり六・七年だったりするのだが。
勇都は付いて来たり来なかったりするが来ないときはあの少年が付いてくる。
お目付役なのかもしれない。
孤児院の友人達の間ではケンタはエルフみたいなヤツということになっている。
成長しないわけでは無いがココの者たちとはズレが大きいからな。
それでも友人扱いに変わりは無い。
でもなあ……大人の遊びを仕込もうとするなよ!
お前等はもう大人でもケンタはまだガキなんだから。
ガキなはずのケンタはココの誰よりも強くなっていった。
やってくるとオレの依頼を手伝うと言いながら一人で片付けたりする。
ケンタ達の世界は他の世界に召喚されるヤツの多い所だそうだ
お目付役の少年のような勇者がゾロゾロ居るという。
そういう連中に「遊んで」もらっているらしい。
まあ、そりゃあ強く成るわけだよな。
そうして日々は過ぎて行った。
オレはドラゴンとも戦ったし巨大な魔獣の相手もした。
隣国との戦争が起きたこともある。
後方から魔法を使ったり回復魔法の大サービスをさせられたりした。
軍の連中にいろいろ指導もしたが手柄をとられたくないとでも思ったのか
最前線には出されなかった。
人間相手の戦闘は気が滅入る。
ドラゴンや魔獣の方がマシだと思ったね。
やっぱりオレは勇者も神官戦士も向いてないんだと思う。
のんきな農民が一番だよな。
ケンタが向こうの世界の成人の十八歳に成った頃にはオレはもう老人だった。
そうしてケンタから聞きたくないコトを知らされてしまった。
まだそんな歳ではなかったはずなのに……
向こうの世界には優秀な聖女が居て彼女を治療してくれてたはずだ。
それでも老人になるまで生きていられなかったのか?
リンゴの花の咲き誇る庭で大木となったリンゴの木を見上げた。
もう何十年も前にオレの前から消えた女なのに……
こぼれていく涙をとどめることはどうしてもできなかった。