38・三年後。
今日も私神官・コルナスはロブの所に使いに出された。
私の神殿での位階はもう上位と言って良いのだがなぜかロブへの依頼というと
私に行くようにと枢機卿たちから言ってくる。
新人とかを行かせたこともあったのだがどうもアイツの前に立つと威嚇も
されていないのに何も言えなくなってしまうらしい。
ならば中堅ならと行かせても結果は同じだったそうで困った枢機卿は御自身で
出かけられた。
それでも結果は同じだったそうだ。
「理由が分からんがなぜか踏み込めないんだ。
神官としての位階も高くないのに何故か分からない。
君は普通に話せるようだから君から依頼を話して欲しい。
手間を掛けさせて済まないが……」
まあ、大体理由は分かってるんだ。
アイツは「神官戦士」ということになっているが「勇者」だ。
オマケに神殿にはあまり良い印象を持っていない。
無意識のうちに威圧をかけているのだろう。
私は一緒に旅をしたことも有るし共に戦ったこともある。
一見そう見えなくても少しは気を許しているのだと思う。
ケンタが勇都と彼等の世界に帰ってからロブは故郷の村に帰った。
街の孤児院から子供達が何人も彼に付いて行った。
ロブが断っても付いて来てしまったのでロブは仕方なく村に孤児院を設置して
彼等の面倒をみている。
溜め込んだ魔石を使ったようで神殿には許可申請だけで資金要請は無かった。
街はロブの村のある地方の中心地なのでそれなりに賑やかだ。
村の産品の販売先でもある。
村からの距離もさほどではない。
ロブに付いて村に行くのに子供達はためらった様子も無かった。
まあ、この程度の距離なら戻るのも簡単だと思ったのかも知れない。
ロブは子供達を育て教育し希望者には戦闘も仕込んでいる。
街の冒険者達もロブの所に稽古を付けて貰いに来たりもする。
「神官戦士」でも「神官」なのでいつの間にやら村の教会を任されてもいる。
依頼などなくても充分忙しい毎日のようだ。
以前なら王宮の連中が勇者を召喚したがるような案件がロブの所に廻ってくる。
ロブは資金や人材を依頼主に要請するが今のところ依頼を完遂している。
なので依頼者は途切れない。
でもロブがしたいのは神官でも戦士でも勇者でも無いのだ。
タダののんきな農民。
そう分かっていても今日も私は神殿からの依頼を持ってロブの所にやってきた。
彼でダメなら勇者を召喚するという枢機卿の言葉と共に。
ロブは実家にいた。
リンゴの大木の元に。
一緒に居る子供は誰だろう?
なぜかみたような子だけれど……
「お久しぶりです。コルナス神官さま。
オレ、まだ忘れられてませんよね?」
三年ぶりなのにまるで成長してるようには見えないケンタがそこに立っていた。