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30・残留。

 リンゴが倒れてしまった原因は分からなかった。暫くの間。

勇都は何度も何度もリンゴに回復魔法をかけている。

私もコルナス神官もロブも回復魔法を掛けてみたのだが勇都の魔法が一番効く。

そうして原因が分かったのは赤ん坊のケンタのオカゲだった。

あの子が側に居るとリンゴが持ち直すのだ。


多分……なのだけれどこの世界はリンゴには合わないのだ。

では何故今まで無事に過ごせていたのかというとケンタがお腹に居たからだ。

勇都は勇者でいろんな才能を持っているし、おそらくいろんな状況に対応できる。

違う環境にも対応力が高いのだろう。

召喚に使った魔方陣にも召喚者をこの世界に馴染ませる為の機能が入っていた。

ただソレは勇者用のモノなのだ。

予定外に呼ばれた聖女・リンゴ用では無かった。


ケンタは胎児だったが勇者だった。

魔方陣の機能の影響を受けたのだと思う。

そうして自分と母体のリンゴを意図せず守っていたのだろう。

まだ赤ん坊なケンタは母親との一体感が残って居るのだと思う。

だから側に居ればリンゴにも影響を及ぼすのだ。


「このままほっといたら自分と母親を区別できるようになるだろう。

そうなったら側に置くことの効果も薄れてしまう。

魔力が何処まで成長するかも分からない。

リンゴだけでも元の世界に帰さないと彼女はココでは死んでしまう。

急がないと……」


勇都は三人で帰りたいと言う。

必要な総魔力にはまだ足りないのに……


「こんな状態のリンゴを一人でなんか帰せない。

女性が一人で居ても世界の中では安全な方の国ではあるのだけれど。

かといって子供を置いていくなんてことは……

母親から子供を取り上げるなんてヒドイことも……」


子供を置いていく? 

待って! ソレなら!!! 

計算した! 何度も!! 何度も何度も!!! 


リンゴと勇者だけなら私達の魔力と満杯のドラゴンゾンビの魔石で送れると

結論が出た! 


勇都に盗んできたドラゴンの魔石を持たせた。

この世界に来る為の魔方陣を構築して勇都に伝授した。

ケンタを迎えに来られるように……


赤ん坊のケンタは私が預かることにした。

子供を産んだことも結婚したことも無いけれど子供の世話は得意だ。

孤児院の仕事もしていたからね。


ほとんど意識の無いリンゴを連れて勇都は帰って行った。

無事に元の世界に帰れたかどうか確認するすべは無い。

でも手応えは有ったと思う。


残して行ったのは二人の結婚指輪と二人の髪を一房ずつだった。


「もし転移に失敗して迎えに来られなくなったとしてもコレを

親の形見と思ってくれるように。

必ず迎えに来ると言っていたことを伝えて欲しい」


そうしてケンタの髪を一房切り取って持って行った。

けれど勇都は来なかったのだ。

私の命が尽きるまでには……

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