27・盗賊スキル。
私の魔力量は落ちている。
やっぱり勇都達を召喚した影響だと思う。
まあ、まだ枯渇までは行っていない。
聖女だった頃よりかなり落ちているというだけの話だ。
並みの神官よりは多いからね。
リンゴと勇都とあの赤ん坊の三人を元の世界に戻すのには全盛期の私が
10人居てもギリギリ位だろう。
なので召喚の時はソレを魔石の山で補ったのだ。
国中の魔石をかき集め何日も魔力を練り続けてやっと召喚したのだ。
だが設定は勇者一人だった。
リンゴまで召喚してしまったのは誤算だったし同じ場所には呼べなかった。
元の世界への送還が3人になってしまった。
しかも聖女と勇者がもう一人……
強い魔力を持っているモノを転移させるのは同じ世界の中でさえ難しい。
それなのに……三人。
皆でドラゴンゾンビの空っぽの魔石に魔力を込めている。
でもコレが満杯だったとしてもとても足りないと思う。
王に献上したというドラゴンの魔石があれば少しはマシな気がする。
だが下賜の申請は当然ながら無視された。
勇都は盗み出すことまで考えているようだ。
勇者がそんなコトをしていいのか?
「持ち出すコトが出来たにしても一番最初に疑われるのはお前だ!
下賜申請を出してるんなら尚更だろう。
盗み出すならオレがやる!
オレなら容疑者にも上げられないし勇者だってコトはココに居るお前等しか
知らないハズだからな」
ドラゴンゾンビ戦の時はみんなタダの従者だと思ってたハズだ。
討伐部隊の連中に多少の指導はしていたけれど重要人物だなんて誰も思ってない。
だからこそ気楽に指導を頼んできたのだろう。
魔力が満杯なドラゴンゾンビの魔石・ドラゴンの魔石・私とコルナスとロブの魔力
そうして勇都達が集めた魔石の山……
それだけ使ってやっと出来るかどうかの水準に行けるだろう。
そう言うと勇都はドラゴンの魔石を手に入れることを決めた。
そうして神殿の伝手を使って王に謁見を申し込んだ。
「元の世界に帰ることを諦めたので妻と共にこの国に住むことを
許可して欲しい」と。
盗難の時間にアリバイを造るためとはいえ心にも無いことを王達に対して言うのは
辛くは無いのだろうか……
そんなことをさせてしまう私たちについても。
「自分で盗み出したかったがそうすると帰還の準備に邪魔が入るかも知れない。
いずれバレるとしてもその前に帰還してしまえばいいことだ。
もしコイツが失敗したらあとはもう力尽くで奪いに行く。
それだけのことだ」
王や宰相に対して思うところもあるのだろう。
盗み出せるかどうかはロブ次第ということか……
盗賊のスキルなんか勇者が持ってるハズはないんだけどねぇ。