24・人物鑑定。
勇都は固まって居た。
突然彼女が逃げ出したので混乱したのかもしれない。
なので背中をどついた。
走れ!
捕まえろ!!
逃がすんじゃねぇ!!!
どつかれたコトで呪縛が解けたらしい。
走って行った。
そうして捕まえて抱きしめた。
だが彼女は気を失ってしまった。
オロオロと動転している勇都をともかく屋根の有る場所に誘導した。
老聖女とおぼしき人が部屋へと案内してくれたよ。
「中央神殿に連絡して勇者殿にコチラに来てもらうように頼んだのですが……
その様子だと上手く連絡が繋がっていなかったようですね。
まあ、ともかくお詫びからさせてもらいましょう。
私がアナタをこの世界に召喚した者です。
理不尽な行為だとは分かっていましたが国の意向に逆らえませんでした。
しかもアナタだけではなく彼女まで辛い思いをさせてしまいました。
私で気が済むなら存分になさってください。
遠慮はいりませんよ」
「そんな! 聖女様だけの責任ではありません!
そもそも宰相と国王様が!」
「その先は言ってはいけません。
彼等は俗世の者ですが神殿への影響は多大です。
アナタの立場と将来に影響が出ますよ。
引退したことになってる私なら無視するでしょうけどね」
アンタは彼女が一緒に召喚されてしまったのに気が付いてたのか?
「勇者以外の方が一緒に召喚されたことには最初は分からなかったんです。
完了直前に気が付いて動転してしまいました。
なので彼女だけ別の場所に飛ばされてしまったんです。
でも勇者殿は気付いてませんでした。
なので捜索を神殿の上の連中に申請したのですが……
勇者でもない者の捜索など論外だ!と言われてしまって。
だから魔力の枯渇を理由に引退して自分で探すことにしたんです。
召喚が終わったら用済みだ! とばかりに許可が簡単に出たのにはあきれましたよ。
オカゲで彼女を見つけられましたが……」
彼女は目を覚まさない。
勇都はギリギリと歯を食いしばっているし拳を握りしめたままだ。
奴隷からは解放してくれていると言う。
でもこの国では女性は誰かの保護の元でしか暮らせない。
なので老聖女の保護下にあるそうだ。
問題はまだある。
多分彼女が勇都の顔を見るなり逃げ出してしまった理由だ。
お腹が膨らんでいるのだ。
病的な感じはしないから妊娠しているということになる。
……一体……誰の子なんだ?
神官職なら人物鑑定ができるハズだが……
胎児の鑑定なんてできるんだろうか?
「枢機卿とか教皇様あたりなら出来る方が居られるかも知れません。
平神官の私じゃあ無理です。
老聖女様は?」
「無理だわ。
産まれてくれば簡単に鑑定できるんだけど。
母親と子供の情報が入り交じってしまって正しく現れなくなるのよ。
産まれるまで待つしか無いわね」
母親な彼女には分かるんだろうか?
だが目覚めた彼女は自分でも分からないと言った。
そうして勇都に離婚してくれるようにと頼んだんだ。
もう妻でいる資格が無いから……と。