22・木?草?。
村の周囲はほとんどが森だった。
でも冬枯れでもここまで葉が落ちなかった……と思うほどになっている。
この森はもうダメかも知れない。
なのでダメ元で林檎の苗木を植えていくことにした。
上手く行けば森まで行かなくても林くらいには回復するかも知れない。
ところが葉が落ちまくった木々の間で妙なモノを見つけた。
みたことも無い大きな葉の身の丈よりも大きな植物だった。
「驚いたな……
なんでこんな所にバナナが生えてるんだ?
しかも実まで付いてるなんて。」
そう! 実が成ってたんだ。
何本もの長い実が大きな枝(?)にたくさん付いている。
色が緑色だ……たしか彼女を見つけたときに見たのは黄色だったが?
「熟すと黄色くなるんだ。
もっとも普通は青いうちに収穫して室に入れてガスを使って追熟させる。
コレは林檎の持ってたバナナだろう。
普通は種が無いんだよ。
野生種は別だがな。
種ができるのは本当に低い確率でしかない。
それでも品種改良のために山のように実を潰して探してる研究所もあるそうだ。
同じ性質のモノばかりだと病気に弱くなるからな」
なんだかよく分からない説明だった。
ほとんど無いハズの種が入った実だったのだろうか?
それとも彼女が持ってたせいでココでも育つ木になったんだろうか?
「あー……大きいがコレは木じゃあない。草に分類されている。
まあ、この大きさじゃあ木に見えても不思議じゃあないがな」
木にしか見えない……それでも草なのか。
異世界の植物ってのはどれもこれも変わってるなぁ。
そう思ったら勇都がバナナの実の塊を切り落とした。
そうしてアイテムボックスの魔法を使った。
「いつまでこの世界に居なければならないか分からない。
だからコレはオレがもらっていくぞ。
お前等にはコレに執着なんか湧かないだろうしな」
この木はこのまま放っといていいのか?
周りは瘴気が浄化されてるみたいだが。
「ソレはバナナの実の収穫が終われば切り倒すんだ。
根元から代わりの新しい芽が生えてくる。
まあ、瘴気の浄化をしてるんなら枯れるまで放置で大丈夫だろう。」
悪影響はなさそうだな。
バナナの実か……味見してみたい気もするが……
アレじゃあ分けてくれる気は無いだろう。
この周辺ではオレの村が一番ひどかった。
もっとも他の村々も無人になっている。
林檎の木で浄化するには領主の許可がいるかもしれない。
他の村まで浄化するとなると……
村々が無人なので当然行商が来る訳もない。
この地方の大きめの街を目指すことになった。
冒険者ギルドや商業ギルドに問い合わせて見よう。
神殿も当然あるからなにか新しい情報があるかもしれない。
行商の男はすぐに居場所が知れた。
だが彼女は売られた後だった。
はぁ? 聖女に転売されてただってぇ?
一体どういうことなんだぁ?