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21・林檎の木。

 ソコはよくある普通の村だった。

ドラゴンゾンビが通って行ったのは明らかだった。

村のほとんどが瘴気で汚染されている。

ロブの住んでいた村だという。


「向こうの森の中で彼女を見つけたんだ。

オークに襲われていた。

持っていたのはなんだか変な材質のペラペラな袋に入った赤い実だ。

あとなんだか黄色い長い果物らしき物も有ったんだがオークが踏んづけたからな。

オカゲで体勢を崩したから一発で仕留められたよ」


「ソレはバナナという果物だ。

ぬめりが有る実なので踏むと皮だけでも転んだりする。

健康に良いモノとして国中に出回っていた。

リンゴ……赤い実もな。」


村の家々は無惨に壊れたり焼かれたりしていた。

村はずれのロブの家も。

だがその場所には驚く物があったんだ。


満開の花を付けた大木だった。

根元に墓石らしき物が転がっていた。


「村中壊れまくってたからオレの家が無事だとは思ってなかったんだがまさか

コレが無事だとは……

お袋の墓石がこんなことになってるってことは望みが果たせたのかもな」


望みって……一体……


「この短い間にこんな大木になるとは思ってなかった。

コレは彼女が埋めた指輪と一緒に埋めた赤い実の木だろう。

指輪はコレの幹に食い込んだ状態で地上に出てきたんだ。

お袋は親父の隣に埋められるのを拒否した。

この木の肥料にでも成れれば満足だと言ってたよ。

だから木の隣に埋めたんだ。

墓石はずらして側にでも立てておくさ」


ロブの母は彼女に同情的で奴隷扱いをしたロブを叱ったそうだ。

彼女を買い戻すようにと遺言したのだとも。

勇都は無表情なままで黙って聞いていた。

そうして周りを見回した。


「コレだけ瘴気の影響を受けていないのは何故なんだ?。

確かにこの木はオレ達の世界の林檎りんごの木だ。

異世界の物だと瘴気の影響を受けないなんてことがあるのか?」


そう言われて改めて周りを見回した。

リンゴの木を中心にして半径50メルテほどの土地が瘴気の汚染を免れている。

まあ、雑草がはびこりまくってるんだが……


異世界の物でも瘴気の影響を受けないハズはない。

勇都もドラゴンゾンビを攻撃するときには聖魔法の魔力で体を覆っていた。

アレは瘴気に影響されるのを防いでいたのだと思う。

どうも意識してやってた訳ではなさそうだったが。


「汚染を食い止めたのか汚染を浄化したのか分からんな。

ちょっと試してみるか」


勇都は枝を一本切り落とした。

そうして木魔法で根を生やすと苗木に仕立てた。

それから汚染された場所に植えたんだ。

リンゴの苗木はなぜか風も無いのにワサワサとゆれた。


それからはあっという間というかゆっくりというかともかく目に見える速さで

徐々に汚染が清められていった。

何なんだ! コレは! 


「オレの世界の林檎にはこんな力は無かった。

タダの果物の木だったよ。

リンゴが植えたからなのか? 

彼女だって魔力も何も無い普通の女性でしかなかった。

確かにオレは召喚で色々力を得たが……彼女にもそんなことが起きたのか?」



ロブはリンゴの木の枝を苗木に仕立てて村のアチコチに植えた。

植えまくった。

それだけで村中を浄化してしまったんだ。

もっとも苗木はすぐには生長はしなかった。

異常な成長をしたのは彼女が自分で植えたモノだけだったようだ。


「彼女を見つけたら聞いてみよう。

多分本人は意識してやったことじゃあ無いと思うがな」


コレが他の汚染された場所でもできるなら……

勇者の妻・リンゴを見つける理由が増えたと思った。

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