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18・勇者の魔法。

 勇者は怒っていた。

まあ、当然だよなぁ。

だって国の内外を探し回っても勇者が見つからなかったからこそ異世界からの

勇者召喚の儀式をしたのだから。

なのに目の前にこの世界の勇者が居るのだ。


「コイツが見つかってさえいれば自分も妻もこんな世界に召喚されなかった!

妻と離ればなれになることも彼女に辛い思いをさせることもなかった!

コイツが見つかってさえ居れば!」


絞り出すように叫ぶ勇者に返す言葉は持っていなかった。


だけどこの世界の勇者は3代続けて貴族から見つかってたんだ。

その前の勇者も騎士階級だった。

平民で農民で狩人なんて勇者は記録にすら残ってなかったんだ。

当然探すのは貴族や騎士だったし一応ということで冒険者達まで調べたそうだ。

でもロブは元兵士だけど農民に戻っていた。

当然調べられてなんかいない。


「それで……どうしたいんだ? 

オレを殺せば気が済むのか? 

まあ、それでもいいさ。気が済むならな。

だが優先するのは彼女を見つけることなんだろう? 

それが済んでからにして欲しいもんだな」


「……お前は殺さない! 

二度と召喚をしないようにココの勇者の役目を果たせるようにする。

死んだ方がマシだと思うほど相手をしてやるから覚悟しろ! 

彼女が見つかるまでだがな」


二度と召喚をしないように……か。

アレができたのは老聖女様が居られたからだ。

魔石も山のように使ったから今すぐ次が出来るはずも無い。

でも……コレは言えない言えない。

余計なコトは言わないほうがお互いのためだろう。


ロブは自分が勇者だなんてことには納得してないみたいだった。

まあ、無理も無い。

兵士の経験があっても「勇者」なんてのは農民からはかけ離れた立場だろう。

だが召喚された勇者・勇都ゆうとが鍛えてくれるならきっと彼に負けない

勇者に成れると思う。


そういえばロブが魔法を使っているところを見たことが無かったな。

できるんだろうか? 


「あー……オレはやったことは無いな。

周りにも出来るヤツなんて居なかったからな。

習おうにも習えなかったんだ。

タダの兵士なんかじゃあ魔法を使えるヤツなんて居なかったし」


初心者を教えるのは神官の私でも出来るので私が教えることにした。

最初の発動こそ手こずったものの発動に成功してからは順調すぎるほどだった。

コレは勇者補正とでもいうものなのだろうか? 

勇都でさえ驚くほどだった。


魔導師ほどに魔法が使えるようになったら勇都は電撃の魔法を教えると言った。

でっ、電撃の魔法!? 

そっ、それは魔導師達の間じゃあ禁術になってたハズだ! 


「勇者の魔法だからな。

オレ達の所だと勇者のユニーク魔法ってことになっている。

まあ、オレだって発動には苦労したからな。

コイツにも苦労してもらうコトになるだろう」


勇者・勇都はロブのことはコイツとかオマエとかしか言わない。

名前では呼ばないのだ。知っているのに……

いつか名前で呼ぶ日が来るだろうか。

来て欲しいと思っている自分に気が付いてなんだかモヤモヤした気分だった。

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